脱“脂肪肝”の落とし穴、油だけでなく“糖質”に注意!
気づかず摂りがちな糖質、意外な盲点はトマト?
村山真由美=フリーエディター・ライター
肝臓は生命維持に欠かせない非常に重要な臓器。「解毒」「代謝」「胆汁の生成」などの重要な機能を担っている。そして国民病といわれる糖尿病や脂肪肝とも関わりも深い。本特集では、誰もが正しく知っておきたい「肝臓の新常識」を、自治医科大学附属さいたま医療センター消化器内科 准教授の浅部伸一さんに聞いていく。

前回(「本当の意味での肝機能低下とは? “沈黙の臓器”「肝臓」を正しく理解する」)は、脂肪肝は“肝臓病への第一歩”なので、甘く見てはいけないことを述べた。今や国民の3人に1人は脂肪肝という時代。なぜこんなに多くの人が脂肪肝になるのか。その最大の原因は“食べ過ぎ”にある。今回は、食べ過ぎがなぜ脂肪肝を引き起こすのか。そのしくみを解説していく。
糖質の摂り過ぎも脂肪肝の原因に
脂肪肝とは、肝臓の細胞に中性脂肪が30%以上たまった状態をいう。健康な人の肝臓にも中性脂肪は3~5%はあるというが、なぜ過剰にためこむようになるのだろう。
「脂肪肝の原因は、『食の欧米化』『飽食』にあると言われています。摂取するエネルギー(カロリー)が、使うエネルギーよりも多いと、余ったエネルギーは肝臓に運ばれて中性脂肪になります」(浅部さん)
浅部さんが実際に、脂肪肝の患者の方にこの話をすると、「じゃあ、揚げ物は控えます」「そんなに油っこいものは食べてないんだけどな…」と答える患者さんが多いそうだ。多くの人は、「脂肪を食べると脂肪肝になる」と思いがちだが、そこに大きな落とし穴がある。実は、糖質も中性脂肪になることをご存じだろうか?
私たちが食事で摂った脂質は、肝臓で脂肪酸に分解されたあと、中性脂肪やコレステロールに再合成され、血液中に放出されてエネルギー源になる。摂り過ぎた脂肪酸は肝臓にたまる。
一方、糖質は、ブドウ糖に分解されて、一部は肝臓を素通りして血液中に入り血糖となり、エネルギー源になったり、筋肉や肝臓にグリコーゲンとして蓄えられる。しかし、肝臓の貯蔵量を上回るブドウ糖は、中性脂肪となり肝臓や脂肪組織に蓄えられる。
つまり、脂肪も糖も、摂り過ぎれば中性脂肪として肝臓に蓄えられるのだ。