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がんになって気付いたこと

治療の発展とともに、患者の力は医療者から期待される存在に

肺がん患者会・ワンステップ!代表 長谷川一男さん「人はみんな、支え合っている」(後編)

 長谷川一男=ワンステップ!代表

患者力のアップが重要

患者会の活動は患者にとって心強いと思いますが、一人ひとりの患者ができることはありますか。

長谷川 いま、肺がん患者にとっては、“患者力のアップ”が重要になってきています。肺がん医療はものすごく進歩して、そのために、これまでなかった問題が浮かび上がってきています。例えば、いままでは薬の選択肢がほとんどなかったのが、薬の種類が増えて、患者が選択できるようになってきました。これまでは「副作用で毛が抜けるのは嫌です」とは言えませんでした。言えば、使える薬がなくなってしまうからです。でも、最近は「私はどうしても脱毛を避けたい」と言いたい人は言えるようになってきました。

 自分の人生で何を重視するかは、一人ひとり違うと思います。自分にとって髪の毛が何より大事だと思う人は、他の副作用が大きくなったとしても、できるだけ脱毛しない薬を選択したらいい。逆に髪の毛なんて別に抜けてもいいと思う人は、他の副作用が少ない薬を選べばいい。個人の価値観や生き方によって、その人にとっての最善の選択は違ってきます。

 でも、自分にとって最善の選択をするには、患者力が必要です。薬の効果、投与方法、副作用などをよく理解しないと、本当に良い選択はできません。特に治験の情報は、自分から取りにいかなくてはわからないので、選択肢に入れることすらできません。

 就労の問題もあります。いまは治療をしながら仕事を続けられるようになってきました。でも、医療者は仕事のことがわからないし、会社は治療のことはわかりません。仕事と治療を両立するには、患者が自分で両者に働きかけて、調整しなくてはなりません。そのためにも患者力が必要です。

 患者力を磨いて、治療や生活の満足度をあげる。患者会では、患者力をアップするためのお手伝いもしていきたいと思っています。

周りの人たちに、支えられている

最後に、読者に伝えたいことを何かひとことお願いします。

長谷川 僕はがんになって、周りの人たちに支えられていることに気が付きました

 肺がんになってすぐの頃、抗がん剤治療をやっているときに、家族でお弁当を持って公園に遊びに行ったんです。

 小学生の息子と娘、それに妻と僕の4人で行って、息子とキャッチボールを始めました。その当時、息子は小3でしたからコントロールがいまひとつだし、僕は病気で機敏に動けないので、息子が投げた球が僕から離れたところに落ちてしまいます。それを僕がおぼつかない足取りで取りに行こうとすると、息子が全速力で駆けてきて、僕より先に球を取ってきてくれるんです。そんな感じだったので、息子は息を切らしながら投げるようになりました。それを見ていた妻と娘は僕の後ろに立って、こぼれた球を取ってくれるようになりました。

 そのときに、僕は「あっ」と気が付きました。余命10カ月と宣告されてから、僕はずっと自分が家族のためにできることは何だろうと考えていました。それまで「子どもにせいいっぱい『愛している』と伝えよう。自分を愛してくれる人(父親)がいたという思いは、子どもたちを強くするだろう」とか、一生懸命考えていたんです。ところがキャッチボールをすると、いつの間にか息子は僕の代わりに球を取りに行ってくれるし、後ろには妻と娘がいて、フォローしてくれる。それまでは、自分が家族に何かしてあげなくてはとばかり考えていたけれど、実は自分が家族に支えてもらっていたことに気付いたんです。

 肺がんとわかった直後から、妻がずっと支えてくれたことは、非常に感謝しています。そばについていてくれただけでなく、いろいろ情報を探してきてくれました。一緒に落ち込んたり悲しんだりしてくれる人がいるのは、とても心強いものですね。自分はひとりぼっちじゃない、「自分と一緒に走ってくれる人がいる」とわかると、人間は強くなれるのだと思います。

 振り返ってみると、支えてくれている人は家族だけではありませんでした。医師は親身になって僕の話を聞いて、一生懸命答えてくれます。入院すれば、プロフェッショナルな看護師さんにとても助けられました。友達は、とても心配してくれたり、静かに見守ってくれたりします。

 それまでも、仕事などで、チームで動いたことは何度もありました。でも、特にチームを組もうと意識していなくても、私たちは大勢の人に支えられているチームなんですね。病気と闘うときも、生活するときも、さまざまな人とお互いに支え合って生きているのだと実感しました。この気付きを大切にしていきたいと思っています。

(写真:清水真帆呂/文:梅方久仁子)

聞き手:山岡鉄也
日経BP 広告局プロデューサー
2010年、肺がん(ステージIV)と診断される。入院や通院での治療の後、復職。2012年4月から2016年3月まで国立がん研究センターの患者・市民パネルメンバー。自らの経験を生かして、がんと就労が両立できる社会を目指して、「がんと共に生きる」「がんと共に働く」をスローガンにその環境整備をライフワークにしている。

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