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がんになって気付いたこと

自分が納得してがん治療を受けることが後悔を減らす

肺がん患者会・ワンステップ!代表 長谷川一男さん「自分は、ひとりではない」(前編)

 長谷川一男=ワンステップ!代表

大勢の先輩たちの知見が消えてしまう現状…

ところで、長谷川さんは、肺がん患者の会ワンステップ!を立ちあげられましたね。その経緯を教えていただけますか。

長谷川 僕が肺がんと診断された当時は、日本には肺がんの患者会は、ほとんどありませんでした。でも、ブログやホームページで情報発信をしてくれる先輩たちがいて、僕はその人たちの発言に勇気づけられたり、投稿して話を聞いてもらったりしていたんです。

 ところが、そういうサイトは、中心になっている方が亡くなると、半年後くらいにサイトが全部消えるんです。おそらく、料金が支払われなくなるからでしょう。無料のブログは残りますが、「卒業されました」という文章がいつまでもあると、入る気が起こらなくなってしまいます。すると、せっかく積み上げられていた患者の経験談とか工夫とか、本当に貴重なものが全部消えるんですよ。集まっていた患者のコミュニティもなくなります。それがすごくショックでした。

 これは肺がん患者の宿命かもしれませんが、先人の知見が継承されないのは、非常にもったいないことです。そのために、新たに肺がんになった人は情報を得られずに、すべて初めての体験として、右往左往していかなくてはなりません。先人の知見を継承していきたい。そのためには、患者会を作ったらどうだろう。そう考えて、2015年の4月に肺がん患者の会ワンステップ!を立ちあげました。

ワンステップ!として、どんな活動をされていますか。

長谷川 ワンステップ!には、3つのテーマというか目標があります。

 まずは「分かち合い」。患者同士が集まって、共感を得られる場を作ります。たとえ何も解決しなくても、わかり合える者同士で話をするだけで、心が落ち着きます。そのために、2カ月に1回くらいの割合で、実際に集まって話をするおしゃべり会を開いています。

 2つめは、「知って考える」。先にお話したように、自分で納得して治療を受けることが大切なのですが、そのためにはさまざまな情報を勉強しなくてはなりません。そこで、週に1回くらいブログを更新して情報提供などをしています。

 3つめは、「発展・継承する」。この4月に昨年末に申請していたNPO法人の認証が下りました。法人化すれば活動の幅が広がるし、継承されていく基盤が整うと思います。

将来的に、どんなことをしていこうと思われますか。

山岡鉄也(日経BP 広告局プロデューサー)

長谷川 最初はひとりで始めた患者会ですが、だんだん志を同じくする仲間が増えてきました。そこで、例えばブログで情報発信するだけではなく人を集めて講演会をするとか、いろいろな企画を立てて実行していくつもりです。

 例えば、2016年7月29日の日本臨床腫瘍学会の患者プログラムで「患者が変えるがん医療」について講演しました。

 僕は、そこでは治験についてお話してきました。治験は臨床試験であって治療ではないとされていますが、使える薬が残り少なくなってきた患者にとっては、貴重な選択肢のひとつです。でも、治験の情報は患者にはなかなか入ってこないなど、治療と考えたときには、たくさんの問題があります。そこで、まずは現状を明らかにした上で、これからどうすればいいのか考えていこうと思います。

ワンステップ!の活動を通して気付いたことはありますか。

長谷川 「自分はひとりじゃない」と思えるようになりました。肺がん患者といっても、一人ひとり病状は違うし、性格や生活環境も違います。だから、治療に対する向き合い方とか考え方は、人それぞれでいいんです。でも、同じ方向を向いている人がいて、「自分はひとりじゃない」と思えることは、とても大切だと思います。

 ワンステップ!は会員が現在400人になっています。予想外に多くて、みんなが患者会を必要としていたことを実感しています。会員の方からは、「情報ありがとうございます」と感謝されますが、ワンステップ!をやっていくことで仲間ができて、僕自身がとても助けられています。

 肺がん患者の生存率が延び、患者同士のつながりが大切になってきたと話す長谷川さん。患者会の設立によって、医療者からも一目置かれるようになったそうです。 次回は、患者会の役割のほか、長谷川さんががんになって気付いたことについて伺います。

(写真:清水真帆呂/文:梅方久仁子)

聞き手:山岡鉄也
日経BP 広告局プロデューサー
2010年、肺がん(ステージIV)と診断される。入院や通院での治療の後、復職。2012年4月から2016年3月まで国立がん研究センターの患者・市民パネルメンバー。自らの経験を生かして、がんと就労が両立できる社会を目指して、「がんと共に生きる」「がんと共に働く」をスローガンにその環境整備をライフワークにしている。

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