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がんになって気付いたこと

自分が納得してがん治療を受けることが後悔を減らす

肺がん患者会・ワンステップ!代表 長谷川一男さん「自分は、ひとりではない」(前編)

 長谷川一男=ワンステップ!代表

「1日1日を大切に生きてください」と医師から言われて

冷静さを取り戻したのはどのくらい経ってからですか。

長谷川 いつから冷静さを取り戻したという感覚は、あまりないんです。

 眠れなかったのは姿勢の問題もあったようです。肺がんでは、横たわると呼吸が苦しくて眠りにくいんですよ。病理検査で確定診断がつくと、「斜めに背を起こして寝るといいですよ」と看護師に教えてもらい、おかげで少し眠りやすくなりました

 でも、確定診断がつくと、また大きなショックが待ち受けていました。僕のがんはEGFR遺伝子(*1)に変異がなくて、分子標的薬のゲフィチニブ(商品名イレッサ)が効かないことがわかりました。それはまた大変なショックでした。余命10カ月と言われて、自分は一体、このままどうなってしまうのだろうと落ち込みました。

 多少気持ちが落ち着いていったのは、国立がん研究センターでセカンドオピニオンを受けたのがきっかけです。医師が僕の顔をじっと見て、目に涙をためながら「長谷川さん、1日1日を大切に生きてください。これはそういう病気です」と言ったんです。それまでの緊張状態に、医師の言葉はすっと入ってきて、「ああ、そうか。そういう生き方をするしかないんだな」と思ったら、覚悟が生まれたように思います。

*1 EGFR遺伝子 EGFRはがん細胞の表面にある受容体で、この遺伝子に変異があると、がん細胞が際限なく増殖してしまう。ゲフィチニブは、この受容体に結合して活動を抑え込む。

自分で納得することが大切

治療を受けていく上で、気が付いたことはありますか。

長谷川 自分自身が納得して治療に臨むことが、何より大切だと思います。

 僕は最初の診断はステージIIIbで、その後に骨転移がわかってステージIVになりました。骨転移が見つかったときに、CTでは映っているのにPET(*2)では反応しなくて、本当に骨転移なのか疑問がありました。

 主治医がいろいろ調べてくれたのですが、よくわからなくて、「医療の限界でしょう。これが骨転移であるかどうかで、今の治療は変りませんから、当面、このままにしておきましょう」と言われました。あいまいなままにして治療を続けていくことに、強烈な拒否反応がありました。骨転移のあり・なしで将来の展望がかわってきますからね(*3)。

 それで、自分でネットを調べたり、セカンドオピニオンを受けたりするうちに、ある放射線診断医がPETには反応しないタイプのがんもあると報告していることがわかりました。そこで、その人にセカンドオピニオンを受けに行ったら、なぜPETには反応しないのか、僕は今どういう状態なのかということを丁寧に説明してくれました。その結果、ステージIVが確定して希望は打ち砕かれたのですが、僕の心はむしろ晴れ晴れとしました

 その体験から、自分が納得して治療することが、とても大切だと気付きました。自分がしっかり納得した上で治療をしていけば、例え結果が悪くなっても、最善を尽くしたのだから、後悔はしない。そう考えられるようになりました。

*2 PET 陽電子放射断層撮影(Positron Emission Tomography)の略で、がんの検査法のひとつ。がん細胞がブドウ糖を取り込みやすい性質を利用して、小さながんでも発見できる。
*3 肺がんの治療ガイドラインでは、ステージIII以下ならステージ(病期)が下がり、抗がん剤の後に放射線や手術という治療法が選択できるようになる場合もある。ステージIVでは、治療法は抗がん剤しか選べない。

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