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メタボ・肥満解消に効果!「代謝アップ」大作戦

新陳代謝を担う「血液力」の差で、見た目はここまで変わる!

「この秋冬こそ、肌の乾燥や冷えを何とかしたい」という人は必見!

 村山真由美=フリーエディタ―・ライター

 本シリーズでは、代謝アップのコツをお届けしている。代謝というとダイエットの話だと思いがちだが、実は美容やアンチエイジングにも大きく関わっていることをご存じだろうか? ダイエットに関係するのは食べたものをエネルギーに変換する「エネルギー代謝」だが、今回は主に、細胞を新しく作り替える「新陳代謝」について考えたい。
 医師で医学博士の福田千晶さんらよると、新陳代謝を活発にするカギは「血液」にあるそうだが、血液を理想的な状態にするには、日ごろからどんなことを心がければいいのだろうか? 血液力とは何かや、そのパワーを高めるコツを今月、来月と2回に分けて紹介する。「この秋冬こそ、肌の乾燥や冷えをはじめとする体調不良をどうにかしたい」という人は必見だ。

スムーズな新陳代謝のカギは血液

秋冬になると目立ってくる肌荒れなどの悩みも、新陳代謝が関係している(©Katarzyna Bialasiewicz 123-rf)
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 「新陳代謝」を辞書でひくと、“新しいものが古いものにとってかわること”と出ている。私たちの体の新陳代謝は具体的には、どんなふうに行われているのだろうか。

 「私たちの体の細胞は、常に新しいものに作り替えられています。その際、頬の皮膚なら頬の皮膚、ふくらはぎの筋肉組織ならふくらはぎの筋肉組織と、部位ごとに同じものが作られるようにプログラミングされています。しかし、材料が悪かったり足りなかったりすると、質の悪いものができてしまいます。皮膚の場合、カサカサの肌、シワが多い肌、弾力性がない肌などになってしまいます」(医師・医学博士・健康科学アドバイザーの福田千晶さん)

 福田さんによると、細胞の新陳代謝の際、材料となる血液の中に活性酸素や毒素が混じっていたり、皮膚の場合は紫外線を浴びるなど、さらに悪い条件が重なると、これまでと違う細胞が作られてしまうこともあるという。このコピーミスが繰り返されたものが、がん細胞だ。

 つまり、老化やがんを防ぐためには、細胞にいかにいい材料を届けるかがポイントとなる。そこで注目したいのが「血液」だ。なぜなら、細胞に新陳代謝の材料である酸素や栄養を運んでいるのは、血液だからだ。

 「すべての細胞は、血液によって酸素や栄養が運ばれることで活動できます。また、血液は細胞が排出した二酸化炭素や老廃物を回収します。つまり、血液の働きがよくなければ、新陳代謝は滞り、いい細胞を作り出すことはできなくなってしまうのです」(福田さん)

 福田さんは、私たちの体を都市に、血液をライフラインに例えて説明してくれた。

 都市が機能するには電気、ガス、水道などが必要だ。また、電話やインターネットが通じ、道路や鉄道が機能していれば、情報や人、物の出入りがスムーズで都市は活性化する。こうしたライフラインが断たれてしまうと都市の機能は破綻してしまう。

 「ライフラインが断たれるということは、人体でいえば、血管が詰まる、あるいは破裂して、細胞に酸素や栄養を運ぶ血流が断たれることを意味します。こうなると、そこから先の細胞は死んでしまい、活動のための機能を維持できなくなってしまいます。そこまでいかなくても、血流が悪くなれば、そこから先はうまく機能しなくなります」(福田さん)

 すると、見えるところでは、肌、髪、爪のトラブルや肥満、見えないところでは、冷え、肩こり、腰痛、イライラなどの不調が現れると、福田さんは話す。「これらを放置していると、老化が進んだり、生活習慣病を呼びよせることになります」。

若く見える人は“血液力”が高い

 福田さんは、この「血流」に、「血液」「血管」を合わせた“血液のトータルな力”のことを「血液力」と呼び、それが私たちの健康や見た目に大きく影響していると話す。

■「血液力」を決める3つの要素
 【1】血液~血液の濃度と質のバランスがいいかどうか
 【2】血管~血管に弾力性があり、血管壁が丈夫で詰まりがないかどうか
 【3】血流~血流が正常でスムーズかどうか
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 【1】の血液の濃度・質には、血液中の成分が関わる。

 血液を構成しているのは、赤血球、白血球、血小板のほか、血中脂質(コレステロールや中性脂肪など)、たんぱく質、血糖(ブドウ糖)、ミネラル、水分が主なものだが、このうち、とくに血中脂質と血糖の量が血液の濃度と質を左右するという。

 「血液中にLDLコレステロール、中性脂肪、ブドウ糖が増えすぎると、血液の濃度が増してネバネバ、ドロドロになってしまいます。すると、血流が滞ったり、血管の壁に傷をつけたり、過剰になったLDLコレステロールが血管壁に入り込んで詰まったりして、血流と血管にも悪影響が出ます。一方、血液が薄くてサラサラしすぎてもよくありません。血液中の赤血球やヘモグロビン量などが不足すると貧血の原因になります」(福田さん)

 【2】の「血管」は血管の弾力性や、血管壁の状態に関すること。血管はよくゴムホースに例えられる。新しいホースは弾力性と柔軟性に富み、外側も内側もツルツルで水を勢いよく通すが、古くなると硬くなり、内側は水垢などがたまってデコボコになり、水の通りが悪くなる。それが進むと、穴があいたり破れたりする。

 「血管も老化すると弾力性が失われ、血管壁に血液中の余分なLDLコレステロールなどが入り込んで詰まります。すると、その部分の血管の内側が狭くなり、血流が悪くなります。血管の老化がさらに進むと、一部が詰まったり破裂したりして、脳卒中や心筋梗塞を引き起こします。血管の老化を進ませる主な原因は、血管に必要以上の圧力がかかり続ける高血圧です」(福田さん)

 【3】の「血流」については、この記事の前半で解説した通り。「全身に張り巡らされた血管内を血液が勢いよく流れていれば、各細胞への酸素と栄養の運搬や、二酸化炭素や老廃物の回収がスムーズになるので、新陳代謝が活発になり、細胞の活動も盛んになります。逆に、血流が滞っていると、新陳代謝や細胞の活動が低下するため、冷えが現れたり、免疫力が落ちて病気になりやすくなったりします」(福田さん)。

 「血液」「血管」「血流」――この3つは相互に関わり合っていて、どれか1つが悪くてもトータルの血液力は落ちてしまうという。

 血液力も、下記のように、都市とライフラインの関係で例えると分かりやすい。

【1】 血液 : 車にのせている人や荷物
【2】 血管 : 道路
【3】 血流 : 車のスピード

 「中央から地方都市に人材や荷物を届けようとするとき、どんなに素晴らしい人材や荷物(血液)を車にのせていたとしても、道路(血管)が狭かったり、車のスピード(血流)が出なかったりすれば、届くまでに時間がかかります。また、たとえ広くて立派な道路(血管)が整備されていたとしても、車にのせている人や荷物(血液)の量や質に問題があれば、地方の活性化はスムーズにいかないでしょう」(福田さん)

 このように、3つは相互に関わり合いながら、トータルな血液力を作りだしているのだという。この3つに問題がない状態だと、細胞の新陳代謝や活動がスムーズなので、外見的には若く見え、肌荒れ、冷えなどの不快症状も少なく、もちろん、病気にもなりにくいのだそうだ。

※福田千晶さんのアドバイスをもとに作成
(イラスト:平井さくら)
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【血液力が高い人】
  • 肌にツヤがあり、シミ、シワなどの肌トラブルが少ない
  • 髪や爪のトラブルが少ない
  • 体に柔軟性があり、肩こり、腰痛などが少ない
  • 20代のときとさほど変わらない体重と体型を保っている
  • 1年中、冷えをあまり感じない
  • 穏やかな気持ちで何事にも対処できる
【血液力が低い人】
  • 肌荒れしやすい
  • 肌にツヤがない
  • 唇の色が黒ずんでいる
  • 髪や爪のトラブルがよく起こる
  • 肩こりや腰痛になりやすい
  • 胃腸の不調がよくある
  • 肥満
  • 手足が冷える
  • イライラすることが多い
  • 関節痛が起こりやすい
  • 足がつりやすい

 血液力が健康や見た目に大きく影響することは分かった。では、血液力を高く維持するにはどうすればいいのだろうか?

朝食抜き、主食抜き、高血圧、運動不足の人は要注意

 「メタボリックシンドロームの基準となる血圧、脂質(中性脂肪やコレステロール)、血糖が基準値を外れている人は、血液力の低下が疑われます。なかでも、食べることは【1】の血液の成分と深く関わっています。とくに、脂質、糖質をとりすぎている人は注意が必要です」(福田さん)

 脂質、糖質のとりすぎというと、量をたくさん食べる人を思い浮かべるが、必ずしも、食べすぎばかりが問題になるわけではないという。

 「朝食抜き、昼食はコンビニのサンドイッチ、夜はビールとつまみをちょっと食べる程度、という人は案外多いものです。こういった食生活だと、まず、血液をつくるもとになる肉類や血液力を上げるビタミンも、食物繊維もほとんどとれません。また、ダイエット目的で主食を食べない人がいますが、米を食べないと満腹感が得られないため、その他の脂ものやおやつなどのとりすぎにつながりやすく、結果的に脂質、糖質に偏った食事になりがちです」(福田さん)

 米は満腹感を得やすく油をほとんど含まないため、適量をとったほうが、食事のバランスがとりやすくなるのだという。

 「【2】の血管を若々しく保つためには、高血圧を放置しないことが大切です。また、【3】の血流を促すためには、運動をすることやタバコを吸わないことがポイントになります」(福田さん)

リラックス上手は血液力が高い

 「血流を促すポイントは、もう一つあります。それは、リラックス上手になることです」(福田さん)

 私たちの血管を拡張・収縮させているものの一つが自律神経だ。自律神経には交感神経と副交感神経の2つがある。緊張しているときは交感神経が優位で、血管は収縮して血圧が上がる。一方、リラックスしているときは副交感神経が優位で、血管は拡張して血圧が下がる。

 「この2つのバランスがとれているのが理想的な状態ですが、現代人は慢性的な忙しさやストレスが積み重なり、交感神経が優位になりがちです。すると、血管が収縮した状態が続き、血流が悪くなってしまいます。ゆっくり入浴したり、ゆったりお茶の時間を楽しんだりと、自分なりのリラックス法を持つといいでしょう」(福田さん)

 花王・ヘルスビューティ研究所が行った研究でも、血流の調節能力と、ストレスの感じ方には相関関係があることが確認された。

 下のグラフは、15℃の冷水に1分間手をつけ、引き上げた直後と10分後の指先の皮膚温度を調べ、皮膚温度の回復率が高い人(=血流の増減の調節能力が高い人)、皮膚温度の回復率が低い人(=血流の増減の調節能力が低い人)に分けて、心身の状態との関連を調べたものだ。

 「私たちの体内の血液の流れは、常に一定というわけではありません。研究の結果、外部環境の変化に応じて血流を増減する調節能力の高い人は、ストレスが少なく、肌荒れのほか、冷え、血行不良、疲れやすさなどの体調の悩みも少ないことがわかりました」(花王・開発研究第一セクター・ヘルスビューティ研究所 棚橋昌則さん)

女性37人(30代18人、50代19人)を血流調節力の高い人(N=14人)、低い人(N=23人)で2群に分け、ストレス度(*1)と体調の悩み(冷え症、血行不良、睡眠の質、疲れやすさなど)の意識(*2)を調査。血流調節力が高い人はストレス度も体調の悩み意識も低いことがわかった。※花王調べ
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上と同じ女性37人に対し、夏季、冬季の各1回ずつ皮膚性状(頬、前腕、すねの鱗屑〔りんせつ、*3〕の状態)を測定。血流調節力の高い人、低い人で2群に分け、皮膚性状の季節変化を比較検討した結果、血流調節力が高い人は冬季に鱗屑ができにくかったのに対し、血流調節力が低い人は冬季に鱗屑が悪化しやすことがわかった。※International Journal of Dermatology (accepted)
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 このデータを見ると、血流を調節する力は、美肌や心身の健康と深く結びついているらしいことがよくわかる。次回は、寒くなる季節に悩みが増す「冷え」と、血流を調節してその冷え防止を助ける上手な入浴法について紹介する。

*1 ストレス度は、1980年に日本大学の村上氏と桂氏が開発したストレスチェックリスト(SCL)で判定。得点が高いほどストレス度が高い。
*2 体調悩み意識は、それぞれの体調の悩みについて「そう思う」から「そう思わない」までの4段階と「どちらともいえない」を併せた計5段階で答えてもらった。悩みに該当する割合は「そう思う」「ややそう思う」と答えた人の合計の割合。
*3 鱗屑(りんせつ)とは皮膚表層の角化が不完全な状態で角層がはがれ落ちることで、この状態が悪化すると、肌が白く粉をふいたような状態、あるいは角質がめくれあがったような状態になる。鱗屑スコアとは、鱗屑がないものから極めて進行した状態までを5段階で評価したもの。
福田千晶(ふくだ ちあき)さん
医師・医学博士・健康科学アドバイザー
福田千晶(ふくだ ちあき)さん 慶応義塾大学医学部卒業。医師として東京慈恵会医科大学病院勤務を経て、1996年より健康科学アドバイザーとして執筆、講演、テレビ・ラジオ番組などで活躍している。日本リハビリテーション医学会専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本医師会認定健康スポーツ医、日本医師会認定健康産業医、日本体力医学会健康科学アドバイザー、ウーマンウエルネス研究会研究員を務める。著書に『サラサラきれいな血液になるために―いつまでも若くある秘訣』(光文社)など。
棚橋昌則(たなはし まさのり)さん
花王・開発研究第一セクター・ヘルスビューティ研究所 上席主任研究員
棚橋昌則(たなはし まさのり)さん 1986年岐阜大学農学研究科農芸化学専攻修士課程修了、同年花王入社。約20年間のスキンケア商品開発研究(主にソフィーナ、エスト)の後、約10年間にわたり、肌の実態調査研究や、美容施術、血流改善の美容価値研究などを担当。入社以来、女性の美肌の実現に向けた業務に携わっている。
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