朝食抜き、主食抜き、高血圧、運動不足の人は要注意
「メタボリックシンドロームの基準となる血圧、脂質(中性脂肪やコレステロール)、血糖が基準値を外れている人は、血液力の低下が疑われます。なかでも、食べることは【1】の血液の成分と深く関わっています。とくに、脂質、糖質をとりすぎている人は注意が必要です」(福田さん)
脂質、糖質のとりすぎというと、量をたくさん食べる人を思い浮かべるが、必ずしも、食べすぎばかりが問題になるわけではないという。
「朝食抜き、昼食はコンビニのサンドイッチ、夜はビールとつまみをちょっと食べる程度、という人は案外多いものです。こういった食生活だと、まず、血液をつくるもとになる肉類や血液力を上げるビタミンも、食物繊維もほとんどとれません。また、ダイエット目的で主食を食べない人がいますが、米を食べないと満腹感が得られないため、その他の脂ものやおやつなどのとりすぎにつながりやすく、結果的に脂質、糖質に偏った食事になりがちです」(福田さん)
米は満腹感を得やすく油をほとんど含まないため、適量をとったほうが、食事のバランスがとりやすくなるのだという。
「【2】の血管を若々しく保つためには、高血圧を放置しないことが大切です。また、【3】の血流を促すためには、運動をすることやタバコを吸わないことがポイントになります」(福田さん)
リラックス上手は血液力が高い
「血流を促すポイントは、もう一つあります。それは、リラックス上手になることです」(福田さん)
私たちの血管を拡張・収縮させているものの一つが自律神経だ。自律神経には交感神経と副交感神経の2つがある。緊張しているときは交感神経が優位で、血管は収縮して血圧が上がる。一方、リラックスしているときは副交感神経が優位で、血管は拡張して血圧が下がる。
「この2つのバランスがとれているのが理想的な状態ですが、現代人は慢性的な忙しさやストレスが積み重なり、交感神経が優位になりがちです。すると、血管が収縮した状態が続き、血流が悪くなってしまいます。ゆっくり入浴したり、ゆったりお茶の時間を楽しんだりと、自分なりのリラックス法を持つといいでしょう」(福田さん)
花王・ヘルスビューティ研究所が行った研究でも、血流の調節能力と、ストレスの感じ方には相関関係があることが確認された。
下のグラフは、15℃の冷水に1分間手をつけ、引き上げた直後と10分後の指先の皮膚温度を調べ、皮膚温度の回復率が高い人(=血流の増減の調節能力が高い人)、皮膚温度の回復率が低い人(=血流の増減の調節能力が低い人)に分けて、心身の状態との関連を調べたものだ。
「私たちの体内の血液の流れは、常に一定というわけではありません。研究の結果、外部環境の変化に応じて血流を増減する調節能力の高い人は、ストレスが少なく、肌荒れのほか、冷え、血行不良、疲れやすさなどの体調の悩みも少ないことがわかりました」(花王・開発研究第一セクター・ヘルスビューティ研究所 棚橋昌則さん)
このデータを見ると、血流を調節する力は、美肌や心身の健康と深く結びついているらしいことがよくわかる。次回は、寒くなる季節に悩みが増す「冷え」と、血流を調節してその冷え防止を助ける上手な入浴法について紹介する。
*2 体調悩み意識は、それぞれの体調の悩みについて「そう思う」から「そう思わない」までの4段階と「どちらともいえない」を併せた計5段階で答えてもらった。悩みに該当する割合は「そう思う」「ややそう思う」と答えた人の合計の割合。
*3 鱗屑(りんせつ)とは皮膚表層の角化が不完全な状態で角層がはがれ落ちることで、この状態が悪化すると、肌が白く粉をふいたような状態、あるいは角質がめくれあがったような状態になる。鱗屑スコアとは、鱗屑がないものから極めて進行した状態までを5段階で評価したもの。
医師・医学博士・健康科学アドバイザー

花王・開発研究第一セクター・ヘルスビューティ研究所 上席主任研究員
