「スモールチェンジ」は侮れない
それぞれの「生活習慣見直しのヒント」を読んで、「えっ、それだけでいいの?」と思った方もいるだろう。
「定着したライフスタイルを変えるのは大変なことです。健康リスクが高い人ほど早く成果を出したいと焦り、ライフスタイルを大きく変えようとします。しかし、残念ながら、長年培ってきた習慣には形状記憶合金のような復元性があり、大きく変えようとするほど元に戻りやすいものです」(古井さん)
やせたいという目標があったとする。しかし、豚骨ラーメンが大好きで毎日食べていた人がラーメン断ちをするのは難しい。また、全く運動していなかった人が、毎日5km走るという計画を立てても、挫折することは目に見えている。
「ビッグチェンジよりスモールチェンジを」と古井さん。
スモールチェンジとは、いつも甘い缶コーヒーを飲んでいる人が微糖のコーヒーに替える、いつもあんパンを買う人が時にはおにぎりを選ぶ。といった小さな変化だ。
「スモールチェンジをしても、すぐに大きな成果は得られません。しかし、ビッグチェンジよりも習慣化しやすく、チリもつもれば山となり、最終的には大きな変化につながります。減量が成功する人はスモールチェンジから始める人です」(古井さん)
- 仕事の合間、ついでにできる行動計画を選ぶ
- 行動計画のチョイスは自分で行う
- 小さな成功を楽しむ
この3つがライフスタイルを変えるコツだという。
「例えば、菓子パンをおにぎりに替えられた人は、次は、野菜サラダも付けてみようかなと思うものです。また、ジュースをお茶に替えられた人は、次は、エレベーターには乗らないようにしようかな、となっていきます」(古井さん)
成功体験があると、人はますますやる気になり、「体にいいこと」が連鎖していくのだという。
企業にとっても個人にとっても「健康づくり」は、大きな課題だ。「これから生産年齢人口が減っていくので、今の50歳は、昔の50歳よりも元気でいることが求められます。生きがい、やりがいをもって生活するためにも、病気で倒れないことは大切ですね」(古井さん)
そのためには、職業的に陥りやすい罠を知り、健康リスクの低いうちに手を打つことが大切だ。まずは、スモールチェンジで、代謝のいい体を作ることから始めてみてはいかがだろうか。
■代謝アップに関する人気記事
・体脂肪を落とすカギは“代謝”!なかでも意識すべき「ニート」って何?
東京大学政策ビジョン研究センター特任助教/内閣府経済財政諮問会議専門委員

東京大学大学院医学系研究科修了、医学博士。2004年、東京大学医学部附属病院22世紀医療センター助教就任。同時期に健康委員会(ヘルスケア・コミッティー)を株式会社化し同社代表取締役就任し、産官学連携で予防医学研究を進める。2012年からは健康経営を普及する研究拠点を同大学政策ビジョン研究センター内に創設、同特任助教就任。国、自治体、保険者団体などで委員を務める。専門は予防医学、保健医療政策。著書に『早死にする仕事長生きする仕事』など。