朝食抜きは基礎代謝の低下と血管系の病気を招く

夕食を食べる時間が遅いため、朝は食欲がない、という人は多い。「食べ過ぎはメタボの原因になるので、朝食は抜いたほうがいいだろう」と考える人も意外に多いかもしれない。
しかし、「朝食を抜いたり、不規則な時間に食事をする人の場合、そんなに量を食べなくても内臓脂肪がたまってしまうことがあります。それは、私たちの体の仕組みと関わっています」と古井さんは言う。量を食べないのに内臓脂肪がたまるとは、一体どういうことなのだろうか。
体脂肪は脂肪細胞の集まりだ。脂肪細胞には、脂肪をため込む「白色脂肪細胞」と、脂肪を燃やして減らす「褐色脂肪細胞」がある(第1回「体脂肪を落とすカギは“代謝”!なかでも意識すべき『ニート』って何?」参照)。白色脂肪細胞には内部に脂肪をストックする袋があり、中性脂肪を蓄えて膨らむ。白色脂肪細胞は食べ過ぎによりエネルギーを取りすぎると、分裂して増えることも分かっている。この白色脂肪細胞は、食べ過ぎのときだけでなく、「食べなさ過ぎ」のときにも脂肪をため込もうとするのだ。
「そもそもなぜ白色脂肪細胞が脂肪をため込むかというと、それは、かつて人類が飢餓を乗り切るために必要な機能だったからです。狩猟時代は、次にいつ食べられるか分かりません。食べられるときに食べて、体内にエネルギー源として脂肪を蓄える必要があったのです。つまり、食事を抜いたり、不規則な時間に食べると、体は、次はいつ食べられるか分からないと判断し、脂肪をため込もうとするのです」(古井さん)。
また、内臓脂肪が増えるとおなかが出てくるだけではない。アディポネクチンという、体にとってよい働きをするホルモンの分泌も低下してしまう。
「アディポネクチンには血管の汚れをきれいしにて傷を修復したり、インスリンの効きを良くして糖の代謝を助ける働きがあります。内臓脂肪が増えてアディポネクチンの働きが低下すると、血管の老化が進みます」(古井さん)
つまり、朝食を抜くと、体が“脂肪ため込みモード”になり、基礎代謝が低下するだけでなく、血管の病気を招きやすくなるのだ。
「毎日、旅館の朝食のようなメニューでなくてもいいんです。忙しい時は牛乳1杯、バナナ1本でも口にすること。内臓脂肪を増やさないようにするには、食べたものを脂肪としてため込まず、安心してエネルギーにしていいよ、と体とコミュニケーションをとり、代謝を上げることが大切です」(古井さん)
代謝アップは仕事のパフォーマンスアップにもつながる
ちなみに、朝食を食べて基礎代謝を高めることは、仕事のパフォーマンスアップにもつながる、と古井さんは強調する。代謝アップ=ダイエットというイメージだが、それだけではないのだ。
「代謝には主に2つの意味があります。簡単に言うと、1つは体にエネルギーを供給すること。もうひとつは細胞を作り替えることです。仕事においては、特に、前者が重要です」(古井さん)
なぜなら…。
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