「褐色脂肪細胞」が元気だと脂肪がどんどん燃やされる
脂肪消費のプロセスを活性化させることも“代謝”を高めることの一つだ。
「体脂肪は脂肪細胞という特殊な細胞の集まりですが、脂肪細胞には『白色脂肪細胞』と『褐色脂肪細胞』の2種類があります。『白色脂肪細胞』には消費されずに余ったエネルギーをため込む働きがあり、『褐色脂肪細胞』には脂肪を燃やして熱に変え、エネルギーを消費する働きがあります」(宮崎教授)
脂肪消費には、この2つの脂肪細胞が関与する。プロセスをかいつまんで説明すると以下のようになる。
↓
脳が「脂肪を分解してエネルギーを生成しろ」と命令
↓
アドレナリンなどの脂肪動員ホルモンが分泌
↓
「白色脂肪細胞」に蓄えられたトリグリセリド(中性脂肪)が放出され、脂肪分解酵素であるホルモン感受性リパーゼが活性化
↓
脂肪が分解されて、グリセロールと遊離脂肪酸となり血液中に放出
↓
遊離脂肪酸が肝臓・筋肉や「褐色脂肪細胞」の「ミトコンドリア」に取り込まれ、エネルギーとして消費される
白色脂肪細胞に蓄えられたトリグリセリドが放出され、リパーゼにより遊離脂肪酸となり、褐色脂肪細胞で熱に変換される。つまり、褐色細胞が多く、その働きがいいほど、脂肪がどんどん分解されて消費されやすくなり、食べても太りにくくなるというわけだ。
「褐色脂肪細胞は、かつては赤ちゃんに多く、大人になると消えてしまうと考えられていました。しかし、最近の研究により、大人になっても存在し、徐々に消えていくことが分かってきました。個人差がありますが、肩甲骨のあたりや、首のまわり、胸などに少量存在します」(宮崎教授)
実は、日本人は「褐色脂肪細胞」の働きが世界ワースト2位
ただ、残念なことに、日本人は遺伝的に褐色脂肪細胞の働きが悪い人が多いという。「日本人は3~4人に1人の割合で褐色脂肪細胞の働きが悪く、その割合は、残念ながら世界ワースト2位。ワースト1位はアメリカの先住民のピマ族です」(宮崎教授)
だが、太りやすいという遺伝的な素因を持っているとしても、がっかりすることはないと宮崎教授。
「食べすぎず、こまめに体を動かしてNEATを増やせば太ることはありません。ピマ族も、生活を保護されて暮らしている人は、食べ過ぎと運動不足により太っていますが、伝統的な農業や林業に従事している人は太っていません。これは、肥満には遺伝的素因よりも生活習慣が大きく関係していることの表れです」(宮崎教授)。
ちなみに、唐辛子の辛みの成分であるカプサイシンには、アドレナリンの効果を高めて褐色脂肪細胞を活性化させる働きがあるといわれている。
また、最近になって、お茶に含まれるカテキンにも、褐色脂肪細胞を活性化させる働きがあることが分かったという。
- 次ページ
- ミトコンドリアが元気だと脂肪が燃える