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メタボ・肥満解消に効果!「代謝アップ」大作戦

若くても要注意のロコモ 合計30秒であなたの「動き年齢」をチェック

「動き年齢」が実年齢を上回る人は、今すぐ運動を始めよう

 村山真由美=フリーエディタ―・ライター

 「運動しなきゃ…」と思っている人は多い。その理由は、体脂肪を減らすためだったり、血糖値、血圧、コレステロール値を下げるためだったりと、さまざまだろう。しかし、「ロコモティブシンドローム(ロコモ)を防ぐため」と答える人はおそらく少数派だ。ロコモとは日本整形外科学会によると「運動器の障害のために移動機能が低下した状態」を指す。それって高齢者の問題でしょ? と思った人は甘い。実は30代、40代でもロコモは人ごとではないという。そこで、介護予防のための体力維持に詳しい京都学園大学健康医療学部の木村みさか教授らに話を聞いた。

若くても人ごとではないロコモ

段差でつまずいたり、歩いていて足をぶつけたりしたことが何度かあるようなら、若くてもすでに「ロコモ」が始まっている可能性がある(©Konstantin Kamenetskiy-123rf)

 ロコモティブシンドローム(略称:ロコモ、和名:運動器症候群)は2007年に日本整形外科学会が発表した概念で、運動器(骨、関節、軟骨、椎間板、筋肉、神経)に障害が起こり、立つ、歩くといった機能が低下している状態をさす。これが進行すると、自立した生活ができなくなり、要介護のリスクが高くなるというものだ。

 足元がおぼつかなくなった高齢者がちょっとした段差でつまずいて骨折し、入院したらそのまま寝たきりになってしまった…。という話を身近で聞いたことはないだろうか。このように、寝たきりの原因が、実はロコモだったという例は非常に多いのだ。

 「高齢者にとって、転倒による骨折は命に関わります。まず、“転ばない”ということが大事ですが、そのためには、若いころから体をよく動かすことが大切です」(京都学園大学健康医療学部の木村みさか教授)。

 足の筋力は加齢によって衰えやすく、足を持ち上げる力が弱まると、ちょっとした段差につまずきやすくなる。だから、足の筋肉を鍛えることが重要だ、という話は以前もしたが(「『プラス10cm歩行』で、ウォーキング効果は格段に上がる」参照)、加齢による筋肉の衰え方には特徴があると木村教授。

 「筋肉には大きく分けると速筋繊維と遅筋繊維の2種類がありますが、高齢になると選択的に萎縮するのが速筋繊維です。速筋繊維は瞬発的な運動をするときに使う筋肉なので、萎縮すると速く動くことができなくなります。高齢者の動きがゆっくりしているのはこのため」(木村教授)。

 高齢者がつまずきやすい原因の1つは筋力低下だが、思ったように体が動かせなくなるのには、“筋肉と脳のつながり”も関係しているという。

 私たちが体を動かすとき、脳からの指令が神経を介して筋肉に伝わる。筋肉は筋繊維の束でできていて、一定の単位で1本の神経の支配を受けている。この1単位をモーターユニットというが、1つの指令でモーターユニットの筋繊維が多く動くほどよく動けるという。

 「筋肉を動かすと、筋肉が太くなるだけでなく、筋肉と神経とのつながりがよくなります。高齢者が転びやすいのは、筋肉が萎縮していることに加え、筋肉と神経のつながりが悪くなっているから。アッと思ったときに体勢を立て直したり、とっさに手足を出したりすることができなくなるのは、これが関係しています」(木村教授)

 ちょっとした段差でつまずくのはロコモの典型的な例だが、そこまでいかなくても、「家の中を歩いていてテーブルに足をよくぶつける」とか、「子どもの運動会で走ったら、気持ちだけが先走って前のめりに転んだ」など、“自分の思ったように体が動かせていない”と実感したことがある人は多いだろう。

 この状態、すでにロコモが始まっているのだそうだ。

「動き年齢」をチェックしてみよう

 学生時代、握力、前屈、反復横跳びなどの体力テストをやったのを覚えているだろうか。ああいったテストがあれば、自分の体力が同世代の他の人と比較してどうなのか、また、去年と比較してどうなのかなどが分かる。しかし、大人になると指標がない。「まだまだ自分は大丈夫」と思っているうちに、いつの間にか動けない体になっている場合が多いのだという。

 そこで花王は、木村教授の監修のもと、なるべく早い段階で自分のロコモ度をチェックできる「動き年齢」測定テストを開発した。「10秒足踏みテスト」と「20秒開閉テスト」という非常に簡単なものだ。

 どちらも椅子に座って行うので、まずは図1の(1)(2)のような準備をする。次に、(3)(4)のように体勢を整えてからスタートしよう(各テストのやり方はその下の動画をご覧ください)。

【図1】テストを実施するにあたっての準備について
(1)キャスターの付いていない、床にしっかり固定して置ける椅子を用意する
(2)足元にテープなどを使って30cm幅のラインを引き、目印をつける
(3)背筋を伸ばして浅く腰掛ける。膝は90度に曲げ、足の裏をぴったりと床につける
(4)両手で座面の横をつかみ、両足をラインの内側に置く
■「10秒足踏みテスト」
スタートと同時に足踏みを開始。10秒間「できるだけ速く」行い、片足がついたのを1回として、何回ついたか数える。
■「20秒開閉テスト」
床面にある2本のラインの内側に両足を置いた状態からスタート。スタートと同時にラインの外側に両足を動かし、すぐにラインの内側に戻す(このときラインは踏まないように)。この動作を20秒間「できるだけ速く」行い、内側に両足が何回ついたかを数える。やっているうちに足がもつれることもあるが、ちゃんとできた分だけを数えること

 どちらのテストも、「できるだけ速く」行うのがコツだ。時間を計測しながら回数を数えるのは難しいので、誰かに時間を計測してもらうとよい。また、スマートフォンのカメラ機能でスロー録画してから再生すると数えやすい。

 各テストにおける年代別の平均値を示したのが次の表(図2、図3)だ。あなたの「動き年齢」は何歳だろう。ぜひ測定して、自分の動き年齢が実年齢に比べてどうであるかをチェックしてほしい。

【図2】「10秒足踏みテスト」の結果早見表
※早見表の見方は図4をご参照ください
[画像のクリックで拡大表示]
【図3】「20秒開閉テスト」の結果早見表
※早見表の見方は図4をご参照ください
[画像のクリックで拡大表示]

40代後半の記者の「動き年齢」は60~70代!

 記者も実際にチャレンジしてみたところ、「10秒足踏みテスト」は65回、「20秒開閉テスト」は32回という結果だった。実年齢は40代後半なのに、結果はそれぞれ70代、60代と散々なものだった(図4)。

【図4】40代後半の記者の測定結果(10秒足踏みテスト=65回)は……
「10秒足踏みテスト」の記者(40代後半)の結果は65回。早見表と照らし合わせてみると「動き年齢」は実年齢よりずっと高い「70代」だと分かった。40代後半の場合、78~99回できないと、実年齢と動き年齢が一致しない
[画像のクリックで拡大表示]

 「特に、20秒開閉テストが難しかったのではないですか?」と花王開発研究第2セクター ヘルスケア食品研究所の柳沢佳子さん。

 確かに、「10秒足踏みテスト」は、できた数は少なかったものの難しいとは思わなかった。しかし、「20秒開閉テスト」はすぐに足がもつれてしまい、できない自分に衝撃を受けた。

 「10秒足踏みテストは歩く動作に似ていますが、20秒開閉テストは日常生活でやらない動きなので、普段使わない筋肉を使います。しかも、ラインを踏んではいけないなどの制約もあるため焦りますよね。実は、20秒開閉テストは若い世代でもできない人が多く、30代後半くらいになると“もっとできると思ったんだけど…”という人が増えます」(柳沢さん)

 実は、20秒開閉テストは、筋肉の衰えをみるだけでなく、筋肉と脳のつながりをみるテストでもあるのだという。「思うように体が動かせない=筋肉と脳のつながりが悪い」と考えられるのだそうだ。

「動き年齢」が実年齢より高い人はどうすればいい?

 記者のように、テストの結果が実年齢よりも上だった人はどうすればいいのだろうか。そう木村教授にたずねてみたところ、次のような答えが返ってきた。

 「生活の中に、スクワットのような筋トレ的動作を入れたり、ときどきは速く動く。これがおすすめです」

 環境の変化への適応力や、病気への抵抗力といった「防御体力」に対して、人間が能動的に動くために必要な体力を「行動体力」というが、これには、筋力、敏しょう性、瞬発力、持久力、平衡感覚、柔軟性などが関わっているという。

 「多くの場合、筋力はその他の身体機能と関連しています。つまり、筋肉がしっかり付いて力を発揮できる人はその他の機能も維持されています。いくつになっても動ける体でいるためには、まず、年相応の筋力を維持することが大切です。また、素速い動きによって筋肉と脳のつながりがよくなります」(木村教授)

 京都府亀岡市や京都府などが進めている亀岡市の全高齢者を対象にした研究により、運動と介護予防には密接な関係があることが分かってきたと木村教授は言う。

 「運動を中心に、口腔ケア、食事を組み合わせた総合プログラムを約500名の対象者に3カ月間行い、その後1年間継続的に支援したところ、それらを行わなかった高齢者と比較して、その後の介護認定率や介護サービス利用額が大幅に下がったのです」(木村教授)

 この場合の運動は、今よりも1日当たり2000歩多く歩くことと、自分の体重を利用する簡単な筋トレ(レッグレイズ〔*1〕やスクワット)だったという。

 運動は何でもよく、先ほどの「10秒足踏みテスト」や「20秒開閉テスト」をやるのもいいそうだ。「2つとも体力としては敏しょう性を評価するテストです。毎日続けると動きに慣れてきますが、無意識に上手に動かせるようになるということは、筋肉と脳がよくつながったということです。家でテレビを見ているときや仕事の合間に机の下などでやってみてはいかがでしょうか」(柳沢さん)。こうした「スモールチェンジ」が、積み重なると後で大きく効いてくるというわけだ。

*1 レッグレイズは次のように行う。(1)椅子にやや浅く座って背もたれによりかかり、片足を伸ばしてかかとを少し浮かす。(2)3秒かけてひざを胸に引きつけ、3秒かけて伸ばし、伸ばしたまま1秒キープ。これを片足ずつ6~10回を2セット行う。(3)神経系の改善を図るため、可能な限り素速く行うパターンも10回・1セット行う

メタボが気になる人はロコモにも目を向けて

 代謝アップがテーマのこの連載では、主にメタボの予防・改善について解説してきた。メタボ撲滅のためには筋力アップがカギであることは、もう“耳にタコ”だろうが、筋力アップが重要な理由は、体脂肪が燃焼する主な場所が筋肉だから、筋肉を増やすと体脂肪が効率よく燃焼するからだ。

 しかし、筋肉を増やすことは、ロコモの改善にもなることを覚えておきたい。

 先ほど、「20秒開閉テスト」ができなくなるのは30代後半ごろからが多いと述べたが、これは、男性ではメタボのリスクが高まる年齢と一致している。つまり、メタボが気になるころにはロコモも気にしたほうがいいということだ。

 「人間は動物です。動物は文字通り“動く物”であり、体を動かすことが全ての機能を健全に保つための前提となっています。メタボもロコモも運動不足が原因。とにかく体を動かしましょう」(木村教授)

 私たちは「脂肪を減らす」ことばかりに目を向けがちだが、そのためにやることは「筋肉を増やすこと」だ。つまり、これらは表裏一体。「同じことなら、脂肪を減らすことを考えるよりも、筋肉を増やすことを考えるほうがポジティブですよね」と木村教授。

 前述の亀岡市の調査によると、高齢になっても運動習慣のある人は、若いころから運動習慣がある人が圧倒的に多かったという。今すぐ運動を始めて、高齢になっても動ける体を目指そう。

木村みさか(きむら・みさか)さん
京都学園大学 健康医療学部 健康スポーツ学科 教授、医学博士
木村みさか(きむら・みさか)さん 1972年京都教育大学教育専攻科修了。大阪体育大学、京都府立医科大学教授を経て、現職。専門分野は、応用健康科学(高齢者の体力・介護予防、運動と栄養、子どもの発育発達、外傷調査と外傷予防など)。
柳沢佳子(やなぎさわ・よしこ)さん
花王 開発研究第2セクター ヘルスケア食品研究所 博士(栄養学)、管理栄養士
柳沢佳子(やなぎさわ・よしこ)さん 1999年お茶の水女子大学大学院を経て、女子栄養大学、自治医科大学の博士研究員。2004年花王入社。内臓脂肪計の開発などヘルスケア関係の研究に従事。