おなかを引っ込めても、もうごまかせない
内臓脂肪の蓄積を表す腹囲は、メタボの診断の重要な基準だが、「腹囲が基準値をオーバーしていると伝えてもあまり心に響かない人が多いようです」と坂根さん。確かに腹囲は、測定時におなかをうまく引っ込めれば減るし、測り方によって誤差が出やすい。そのためか、測定結果を見て「内臓脂肪を減らそう」という動機付けにはなりづらいのだという。
そこで、花王は2006年ごろから大阪大学と共同で健診で手軽に使える内臓脂肪計の開発を開始。小型で持ち運びができ、放射線被曝のない内臓脂肪計を完成させた。「2013年に医療機器認証を受け、2014年から実際に企業や健診・保健指導で使用し、効果検証に入っています」(花王開発研究第2セクター ヘルスケア食品研究所・柳沢佳子さん)
この内臓脂肪計、電極のついたベルトをおなかに巻くだけと操作は簡単。即座に内臓脂肪面積と腹囲がデジタル表示される(図2)。原理は体組成計などにも使われている生体インピーダンス法を改良し、腹部の皮下脂肪と内臓脂肪を分別して測定できるようにしたもの(*1)で、精度はCTに近く、誤差も少ないという(内臓脂肪計については、図2の動画[約38秒]もご覧ください)。
「これまで、健診の前におなかを引っ込める練習をしていた人も、もうごまかせません」(柳沢さん)。小さな変化も数値化されるため、例えば、運動前後の内臓脂肪量の違いなどを比べることもできるという。
記者も実際に測定してもらった。これまで腹囲がメタボ基準をオーバーしたことがなかったせいもあるが、内臓脂肪量についてはあまり意識したことがなかった。しかし、「内臓脂肪34平方cm」と実際に具体的な数字を示されたことで、自分が今どの位置にいるかを実感でき(図3を参照)、100平方cmを超えないように注意しようと強く思った。
花王が行った測定会でも、やはり同様に感じる人が多いようで、測定後に「数字で示されるとドキッとする」「出てきた数字について説明してもらえて、自分の内臓脂肪の蓄積状態がよく分かった」という声が聞かれたそうだ。
- 次ページ
- 内臓脂肪計の活用で減量効果アップ