日経グッデイ

眠りの上達法

パソコン作業型から交代制まで!働き方別 パフォーマンスを上げる眠りの極意

睡眠のお悩みパターン別 睡眠の実践テクニック

 西門和美=フリーライター

「睡眠に必要なのは、技術です」と語るのは、企業向けに睡眠のオーダーメイドソリューションを提供するニューロスペースの小林孝徳社長。DeNAや吉野家をはじめとする数々の企業で、社員のお悩みに合わせた眠りのテクニックを伝授する、睡眠のプロだ。第1回では「睡眠を司る2つの生体リズム」、第2回では「パフォーマンスを上げるための眠りの極意」について教えていただいた。だが、「自分の勤務スタイルではその通りにできない」と感じる人も多いだろう。そこで今回は、働き方のパターン別に睡眠の実践テクニックをご紹介いただく。

働き方別 良質な眠りのためのテクニック

 眠りにまつわる悩みは、人それぞれだ。眠りの質を左右する要因にはさまざまなものがあり、多くの場合、仕事の内容や勤務体系が大きな影響を与えている。

 そこで今回は、勤務スタイル別に睡眠のお悩みを4パターンに分類。それぞれの職場で役立つ睡眠のテクニックを教えていただこう。

働き方別 睡眠のお悩み4パターン
  1. パソコン作業中心型…長時間パソコンに向き合うデスクワーク。オン・オフを問わず寝る直前までパソコンに触れており、寝つきが悪い人が多い。
  2. 立ち仕事型…立ちっぱなしの時間が長いサービス業など。体を動かしている間は自覚がなくても、知らず知らずのうちに眠気がたまっていることも。
  3. 交代制勤務型…深夜営業の店に勤務する人や医療従事者など。十分な睡眠時間を確保できないことや、昼夜逆転することも珍しくない。
  4. 海外出張型…時差ボケによる眠気に悩まされがち。目的地との時差に翻弄されて生活リズムの立て直しに時間がかかることも。

1.パソコン作業中心型

(©erwin Purnomo Sidi 123-rf)

 パソコンが発するブルーライトの影響で脳の覚醒モードが解けず、夜になっても眠りモードに入りにくい。また、デスクワーク中心であまり体を動かさないため、日中に眠気を感じやすいのが、このタイプの特徴だ。

 「帰宅後はできるだけパソコンやスマホを使わないようにするといいですね。とはいえ、まったく使わないのは難しいと思うので、ブルーライトを遮断するメガネを使うなどして、少しでも刺激を減らすことをおすすめします。また、運動などによって自律神経が鍛えられると、就寝前に副交感神経が働き、眠りモードに入りやすくなります。帰宅するときに一駅手前で電車を降りて歩く…といった程度の軽い運動でもいいので、ぜひ始めてみてください」(小林さん)。

 このパターンの人には、ベッドの中にまでパソコンやスマホ、本などを持ち込み、眠る直前まで頭を使ってしまうという傾向も見られる。「“ベッドは情報入力をする場所”という記憶が脳に定着すると、眠りにくくなります。“ベッドは眠る場所”という記憶を徹底させるためにも、睡眠に関係のないものはベッドに持ち込まないようにするといいでしょう」(小林さん)。

 小林さんが研修を行ったDeNAではこのパターンの人が多かったが、研修後、「ベッドに置いていたパソコンを撤去したら、よく眠れるようになった」との声も寄せられていると言う。

2.立ち仕事型

(©HONGQI ZHANG 123-rf)

 デスクワークとは異なり、勤務中は体を動かしていることによって眠気を感じにくい。ただし、実感がなくても眠気は蓄積されており、知らず知らずのうちにパフォーマンスを低下させていることも。

 「集中力が落ちてきたな…と思ったら、眠気がたまっているサイン。タイミングよく仮眠をとれば眠気が緩和され、作業効率がアップします」(小林さん)。

 ただし、ベッドで横になったり30分以上眠ったりすると、本格的な睡眠モードに突入してしまう可能性があるので要注意。イスやソファに座ったまま、短時間の仮眠をとる程度にとどめておくのが賢明だ。(仮眠のコツについては第2回をご覧ください)

 また、このパターンの人の場合、座ったり寝転んだりした途端に睡魔に襲われるというのもよくあること。「帰り道の電車で座ったら眠ってしまい、そのせいで帰宅後に眠れなかった」という悩みも多い。「たまっていた眠気が解消されると、その後は眠りにくくなります。帰宅途中の電車内を含め、できれば就寝6時間前からは仮眠をとらないようにしましょう」(小林さん)。

3.交代制勤務型

(©Katarzyna Bia??asiewicz 123-rf)

 「生活時間が不規則になりがちなこのタイプの人には、入眠後の3時間が特に重要。睡眠の深さには波があり、深くなったり浅くなったりします。そして、深い睡眠が訪れるのは特に最初の3時間。この間に質の良い眠りをとることで、短時間でも効果的に身体を休めることができます。」と、小林さん。

 睡眠は、量よりも質。長時間は眠れないということであれば、入眠後3時間を充実させる努力をしよう。たとえば、朝6時から眠る人にとって入眠後3時間といえば6~9時頃。同居する家族が朝食をとったり外出の準備をしたりと動き回るせいで、目が覚めてしまうケースも多いだろう。

 そんな場合は「家族が動き回る部屋から、なるべく離れた場所で寝る」「静かに行動してくれるように協力をお願いする」といった工夫をしてみるといい。

4.海外出張型

(©fred goldstein 123-rf)

 時差ボケを防ぐためには、目的地の時間に合わせて睡眠や食事のタイミングをコントロールするのがおすすめだ。

 「現地時間に照準を合わせて過ごしておけば、時差の影響を小さくできます。現地時間に合わせて食事をとり、眠り、光を浴びるようにしましょう」(小林さん)。

 機内にいるときの、タイミングが合わない食事や光はシャットアウト。現地時間を参照しながら、機内食を食べないようにしたり、アイマスクをつけて眠ったりすればいい。また、周囲が眠っていても、現地時間が日中となる時間帯には照明をつけるなどして光を浴び、起きておく。こうして体のリズムを調整しておけば、目的地でも眠気にさほど悩むことなく過ごせる可能性が高いのだと言う。


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 小林さんは、「効率の良い眠りのために必要なのは、技術です。睡眠のメカニズムを知り、ライフスタイルに合わせた技術を活用してください」と語る。

 人生の約3分の1は睡眠時間だといわれている。この時間を充実させることで心身は健やかになり、より豊かな人生を手に入れられるはずだ。

小林孝徳(こばやしたかのり)さん
ニューロスペース社長
小林孝徳(こばやしたかのり)さん 1987年生まれ、栃木県出身。新潟大学理学部物理学科卒業。ITベンチャー企業を経て2013年にニューロスペースを起業。筑波大学や医療機関そして多くの民間企業と連携し、産業現場での睡眠改善と労働生産性の最大化を専門とする。