日経グッデイ

「危険ないびき」を撃退しよう

いびきの最初の検査はとても簡単、自宅でOK

第3回 「危険ないびき」を疑ったら睡眠時無呼吸症候群の検査を

 梅方久仁子=ライター

 「いびきの放置で寿命が縮まるかも」と聞いて怖くなっても(第2回「メタボよりも怖い『危険ないびき』、放置すると寿命も縮まる」)、受診となると、ついおっくうに感じてしまう人も多いかもしれない。ただ、もし「この忙しいのに、病院にお泊まりなんて無理」と思っているなら、安心してほしい。最初に行うのは簡易検査なので、機器を借りて自宅で検査できるのだ。その結果、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の疑いありと判定されれば、いよいよ病院での精密検査が必要になる。
 御茶ノ水呼吸ケアクリニックの村田朗院長への取材を基に、第3回は、SASの検査と診断方法について紹介する。

まずは、自宅でできる簡易検査でスクリーニング

 睡眠時無呼吸症候群(SAS)が疑われる人が睡眠外来などを受診すると、最初に問診と簡易検査が行われる。簡易検査用機器は扱いが簡単なので、検査機器を借りて帰って、自宅で就寝時に自分でセンサーを着けて、測定できる。

図1 SASの簡易検査のイメージ
指先のセンサーで動脈血の酸素飽和度を、鼻のセンサーで呼吸による気流の変化およびいびきの音を測定する。(イラスト:三弓素青)
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 使用する機器によってセンサーの数や種類は異なるが、多くの場合は指先の2カ所(上記イラスト参照)か、を加えた3カ所にセンサーを取り付ける。人間ドックなどでの実施は、費用を抑えるために指先のセンサーのみで行うこともある。指先に装着するのは「パルスオキシメーター」と呼ばれる機器で、皮膚の上から動脈血の酸素飽和度(*1)を測定する。鼻のセンサーは呼吸による気流の変化(およびいびきの音)を測定し、喉のセンサーは気管音(いびきの音)を測定する。

 「私のクリニックでは、正確なデータを取るために、この簡易検査を必ず2日間やってもらいます。いびきをかいている人の体を軽くつつくと、いびきが止まりますよね。いびきは、刺激を受けて体が緊張すると、一時的にかきにくくなるので、モニターを装着することで体が緊張し、その夜だけはいびきをかかなかった、というケースがけっこうあるんです」と村田院長は言う。

 簡易検査では、酸素飽和度や呼吸気流から、無呼吸低呼吸の指標であるAI(無呼吸指数)AHI(無呼吸低呼吸指数)を測定できる。

無呼吸低呼吸の指標であるAI、AHIとは?
  • AI(Apnea Index):無呼吸指数
    1時間当たりの無呼吸の回数。無呼吸とは、10秒以上の呼吸気流の停止をいう。
  • AHI(Apnea Hypopnea Index):無呼吸低呼吸指数
    1時間当たりの無呼吸と低呼吸の回数の合計。低呼吸とは、換気の50%以下の低下に酸素飽和度の3%ないし4%以上の低下を伴うもの。

 AHIが5以上であればSASと診断される。ただ、簡易検査のAI、AHIは精度が低いので、診断を確定するためには、医療機関に1泊入院して精密検査を受ける必要がある。ここはいよいよ観念して、お泊まり検査に挑もう。

*1 酸素飽和度 血液中のヘモグロビン(血色素)がどのくらいの割合で酸素と結びついているかを示す値。95%以上が正常で、低いほど酸素不足の状態になる。皮膚の上から測定する場合は「SpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)」と呼ばれる。

SASが疑われたら、ポリソムノグラフィー(PSG)で精密検査

 いびきや睡眠の専門外来で行われるSASの精密検査は、「ポリソムノグラフィー(PSG)」という装置を使用して、睡眠や呼吸の状態をモニターする。測定項目は、簡易検査で測定した血中酸素飽和度、呼吸気流、気管音に加えて、身体の動き、脳波、眼球運動、筋肉の動き、頤(おとがい)筋電図など多岐にわたる。

図2 PSG検査の様子と計測内容(村田院長提供の写真と図を基に作成)
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 このうち、脳波、眼球運動、頤(おとがい)筋電図は、睡眠状態を調べる検査だ。覚醒が続いているのか、どのような睡眠状態で無呼吸が現れるのかを確認する。

 胸部と腹部のセンサーでは、呼吸運動が規則正しく起こっているかどうかをチェックする。呼吸運動が起こっているのに鼻と口で呼吸気流が止まっている場合は、気道が閉じることにより呼吸が止まる閉塞型SASだと確認できる。逆に、呼吸運動そのものが起こっていない場合は、呼吸中枢に問題がある中枢型SASが疑われる(※SASのほとんどは閉塞型)。

 体位センサーでは、無呼吸が起こるときは仰向けのときなのか、横向きのときにも起こるのか、といったことを確認する。閉塞型SASでは、仰向けの姿勢のときに舌や軟口蓋が下に落ちてきて、無呼吸になりやすい(第1回「いびきの原因は日本人特有の『平たい顔』だった!」)。

 心電図は、無呼吸のときに不整脈や心拍数の変化がどの程度起こっているかを調査する。

 脚部センサーは、異常な脚の動きがないかを見ることで、周期性四肢運動障害やむずむず脚症候群(*2)などがないかを確認する。

図3 SAS患者のPSG検査結果の一例(提供:村田院長)
いびきの後に無呼吸が生じ、酸素飽和度が下がって低酸素血症(血液の酸欠状態)が生じていることが分かる。無呼吸が一定時間続くと脳が覚醒し、いびきが再開するが、しばらくするとまた無呼吸が出現。無呼吸の間も胸郭や腹部の呼吸運動があることから、閉塞型のSASであることが分かる。
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 PSG検査で、一晩の呼吸状態と睡眠状態を調べれば、SASの重症度、無呼吸低呼吸の現れ方、閉塞型か中枢型か、不整脈の兆候はないかなどを調べられる。その結果、診断が確定し、AHIが5以上15未満で軽症、15以上30未満で中等症、30以上で重症のSASとなる。

*2 周期性四肢運動障害(PLMD):下肢の不随意運動が睡眠中に出現し、睡眠が障害される。むずむず脚症候群:じっとしていると、脚部に違和感や痛みが起こり、脚を動かさざるを得なくなる病気。PLMDを合併し、ゆっくり寝ていられないので、睡眠障害の原因になる。

簡易検査で「軽症だから様子をみよう」はご法度!

 「現在、SASの精密検査に健康保険の適用を受けるには、まず簡易検査を行うことになっているため、病院を受診していきなり精密検査は受けられません。簡易検査だけなら、専門の睡眠外来でなくても実施できるので、信頼できるかかりつけ医がいれば、そちらに相談してもいいでしょう」と村田院長。ただ、簡易検査の結果、AHIが5を少し上回る程度の軽症のSASだった場合に「軽症だからとりあえず様子を見よう」と勝手に判断するのはご法度だ。

 「もし簡易検査で無呼吸や低呼吸が少しでも認められたら、必ず専門外来で精密検査を受けてください。精密検査では、AHIが簡易検査の2~3倍に増えるのが普通です。簡易検査で軽症と出ても、精密検査後では重症と診断されることは、珍しくありません」と村田院長は言う。

 「SASは、あまり本人の自覚症状がありません。以前、『夫のいびきがうるさくて』と夫を連れてきた妻が、説明を聞くうちに『ひょっとして、私も?』と検査を受けてみたら、実は妻の方が重症だったということもありました。重症のSASでも、眠気などの自覚症状があまり出ない人もいます。まずは、ちょっとでも怪しいと思ったら、簡易検査を受けてみてください」とのことだ。

 次回(「いびきや無呼吸がなくなれば、快適な目覚めが訪れる」)は、SASと診断されたときの治療法について紹介しよう。


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村田 朗(むらた あきら)医師
御茶ノ水呼吸ケアクリニック 院長
村田 朗(むらた あきら)医師 1983年日本医科大学卒業。専門は睡眠時無呼吸症候群、COPD。国内の睡眠時無呼吸症候群治療の中心的な存在であり、年間2万4000人の患者数は国内でもトップレベル。2003年2月26日、山陽新幹線の運転手居眠り事故の原因として、当時まだ認知度が低かった「睡眠時無呼吸症候群」を初めて大々的にメディアで取り上げたことでも知られる。