メタボよりも怖い「危険ないびき」、放置すると寿命も縮まる
第2回 睡眠時無呼吸症候群の困った症状と合併症
梅方久仁子=ライター
「危険ないびき」の正体である、睡眠時無呼吸症候群(SAS)。血液の酸欠状態や無呼吸・低呼吸で熟睡できない状態が続くと、健康にどんな悪影響があるのだろうか。第1回「いびきの原因は、日本人特有の『平たい顔』だった!」に続き、第2回では、睡眠時無呼吸症候群が睡眠の質や体調に与える影響と、危険な合併症について、御茶ノ水呼吸ケアクリニックの村田朗院長への取材を基にまとめた。
たびたびの脳の覚醒で、自覚はなくても睡眠不足に
SASで何度も無呼吸を繰り返すと、脳はおちおち寝ていられない。
睡眠は、その深さによって1期、2期、3期、4期に分けられる。健康な人の通常の睡眠では、浅い1期~2期と、深い3期~4期の睡眠(いずれもノンレム睡眠)と、脳は覚醒して夢を見て体は寝ているレム睡眠(*1)を90分~120分間隔で繰り返しながら、朝に向かってだんだん眠りが浅くなっていく。
ところが、SASになると、1時間に20回も30回も呼吸が止まるため、2~3分に1回の割合で脳が覚醒し、「起きて呼吸をしなさい!」と指示を出す。このため、SASの患者の睡眠は1期と2期のみで、3期と4期がほとんど見られなくなる(下図)。これでは、何時間寝ても熟睡できないというわけだ。
そのためSASの人は、日中に強い眠気や倦怠感を感じることが多い。「重要な会議中にうとうとしてしまうのはもちろん、重症患者の中には、商談中に取引先の目の前で寝てしまった人もいます」と村田院長。バスや電車の運転手がSASが原因で居眠り運転をしてしまい、事故を起こすこともある。こうなると、仕事上も日常生活でも、大問題だ。
ただ、特に強い眠気を感じていなくても、安心はできない。眠気の感じ方は人によって異なり、中には重症のSASなのに、全く眠気を自覚していない人もいるという。「SASの患者さんは、睡眠不足による身体の不調はあるはずなのですが、慢性的な不調なので『歳のせいかな』で済ませてしまうことが多々あります。いびきを心配した家族にうながされて受診し、治療を開始して初めて、『ずっと体調が良くなかったのは、眠たかったせいなんだ』と気付く患者さんも少なくありません」(村田院長)。