がんの手術前後や治療開始後に、妻が夫にお願いしたいこと
卵巣がんサバイバーが提案する がんになった妻の支え方(2)
太田由紀子=産業カウンセラー/フリーライター
【 脱毛 】
脱毛は人によって出る時期が多少ずれるようですが、多くの場合、治療開始後2週間くらいで抜け始めます。よくドラマであるように、シャワーで髪を洗うとごっそり抜ける…という状況が本当に起きました。これは毛根がお湯で温められ抜けやすくなるからだそうですが、とてもショックな体験です。
ホルモンの関係で最初は後頭部が抜け、孫悟空の沙悟浄(さごじょう)のような状態になりました。それで一旦終了し、次の抗がん剤治療でだんだん側面も抜け…。3カ月くらいでほとんどが抜けました。
抜けた髪の処理は手伝ってあげてください
お風呂の溝にたまる髪の毛、抜ける量が多くなると幼児の頭1個分くらいの髪がたまったりします。それはとても怖いことで、私の場合は怖くて悲しくて、主人に「ごめん」と謝り片付けてもらいました。大体シャワーでは抜けるたびに泣いていた頃なので、主人もあきらめてくれたようです。
これはご家庭によって違うと思いますが、もし妻が怖がったら手伝ってあげてください。枕に付く髪、床に落ちる髪、しばらくは家族で覚悟してください。そして、家族で髪が抜けていく妻をいたわってください。
髪が抜けることで、自分が醜くなっていくような敗北感を味わいます。分かっていてももう脱毛を止められません。いずれは眉毛もまつ毛も抜け、別人のようになって行きます。
脱毛しても、人相が変わっても妻は妻、いたわりを忘れずに。
なりたくてなるわけではありません。がんをやっつけるために仕方なく選んだ抗がん剤治療です。悔しい気持ちを共有してあげてください。
外見が変わることにショックを受け、外出できなくなったり、うつ状態になるがん患者も多いものです。家族みんなでサポートして、妻の気持ちに寄り添ってください。
脱毛のことで子どもがふざけ、それに明るく応えていても、妻は本当は悲しいもの。夫のあなたはふざけず、妻の味方でいてあげてください。
【 骨髄抑制 】
抗がん剤治療後2週間くらいで、副作用の一つである「骨髄抑制」という状態になりました。血液中の白血球の値が落ち病気になりやすくなったり、血小板の値が落ち、血が止まりにくくなったりする状態です。
この期間は外出禁止になる人も多く、家の中も清潔を保つことが必要になってくるようです。倦怠感も起こりやすいので、外には出られないし、動けずダメダメな状態になる人が多いそう。私も、自分のためにも掃除をして家のばい菌を追い払いたいところでしたが、それをやる免疫力も体力もありません。それに、うっかりけがをしたら、血が止まらなくなる可能性もあるそうなので、めったなことはできません。
夫や家族が頼りです。妻をみんなで守ってください
家族みんなで、風邪やインフルエンザ、他の病気にかからぬよう努力して、妻のいる家に悪いものを持ち帰らないようにしてください。そして、掃除や風呂洗い、ペットの世話を、分担してお願いします。やりたくてもできません。この時期だけは、夫や家族が頼りです。
ここまで挙げた副作用以外に、貧血、むくみ、かゆみ、口内炎、爪の変色、水痘、しみ、目のチカチカ、歯痛など、様々な副作用があるようです。妻の感じる副作用の緩和に根気強く付き合ってください。いつか終わる日は来ます。
産業カウンセラー/フリーライター
