がんの手術前後や治療開始後に、妻が夫にお願いしたいこと
卵巣がんサバイバーが提案する がんになった妻の支え方(2)
太田由紀子=産業カウンセラー/フリーライター
今や、日本人の約半分が何らかのがんにかかる時代。たとえ自分が免れても、パートナーががんにかかる可能性はあります。もしそれが現実になったら、自分はどう行動すればいいのか。小、中学生の2人の子どもの母であり、産業カウンセラーとして活躍する中、卵巣がんに罹患し治療を受けたがんサバイバー、太田由紀子さんが、自身の体験を基に「妻ががんになった時、夫ができること」についてお伝えします。第1回のテーマは「がんの告知を受けた時、妻が夫にしてほしい7つのこと」でしたが、今回は手術前後や治療開始後についてお話いただきます。
手術前後に寄り添う

がんを告知された当初は私も夫も不安でいっぱいでしたが(詳しくは第1回「がんの告知を受けた時、妻が夫にしてほしい7つのこと」を参照ください)、治療方法が決まると、少し安心し、後は病院に任せればいいとお互い気持ちが楽になりました。
しかし不安は、どのシーンでも新たに発生するもので、手術がある場合は、その手術自体が怖くなります。
身体にメスを入れるわけですから、確かに怖いですよね。がんの部位によっても異なりますが、女性で一番多い乳がんは胸に、他のがんも内臓に関連するがんが多いので、お腹を切る手術が多いと思います。
私も開腹手術をしましたので、今、お腹に大きな傷跡があります。私の場合は、開腹するまで腫瘍が良性か悪性か境界性か分かりませんでした。がんの場合、その決定は手術時にされることが多いのです。
私は麻酔をかけられ眠っている間に、悪性(がん)が分かり、3~4時間の予定だった手術が7時間に延び、10cmくらいの予定だった傷が30cmになりました。
このように刻々と変わる状況のため、手術に送り出し、ずっと待っているパートナーの方は疲弊すると思いますが、手術前は明るく「いってらっしゃい」で送り出し、手術後もいつもと同じように接してください。
大丈夫?と聞かないで…。
麻酔から覚めた私に、大丈夫と聞かれても…。聞きたいのはこっちです。麻酔で眠っていたので自分がどんな状態か分かりません。大丈夫?と聞かれると、私大丈夫じゃないのかな?と不安になります。でも麻酔が切れたばかりでうまく話せないし、身体が動かせません。
医師から聞いた情報をパートナーに伝えて安心させてあげてください。そして「よく頑張ったね。大丈夫だよ」と微笑んで、涙は見せず元気をください。一番身近な夫の笑顔と励ましの言葉で妻は元気になります。
手術の傷は心の傷になります。寄り添ってください
手術が終わると、本人も家族も一安心です。妻は体が回復するまでの時間を病院や、帰宅して自宅で過ごします。身体の回復にだけ目が行きがちですが、妻には一つ越えなくてはならない悲しみがあります。
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