日経グッデイ

“蚊に刺されやすい人”必見! 専門家がすすめる蚊刺され対処法

蚊に刺されて高熱! 「蚊刺過敏症」にご用心

ヘルペスウイルスの一種「EBウイルス」が関与か

 夏秋 優=兵庫医科大学皮膚科准教授

蚊に刺された後、赤みやかゆみだけでなく、高熱が出たり、なかなか治らない深い傷ができたときは、蚊アレルギーとも呼ばれている「蚊刺(ぶんし)過敏症」の可能性があります。蚊刺過敏症について、虫刺されに詳しい、兵庫医科大学皮膚科准教授の夏秋(なつあき)優先生にお話を聞きました。

蚊刺過敏症を疑うのは、高熱を伴うとき

 子どもの場合は、蚊に刺された後かなり強い炎症が起こることがあり、時には水ぶくれ(水疱)ができることもありますが、通常は数日から1週間程度で症状は治っていきます。しかし、蚊に刺されてから半日以内に38℃以上の高熱を伴い、水疱から深い傷(潰瘍)となり、その傷痕が1カ月以上経っても治らないときは、一般には蚊アレルギーとも呼ばれている「蚊刺過敏症(ぶんしかびんしょう)」を疑います。

[画像のクリックで拡大表示]
[画像のクリックで拡大表示]
蚊刺(ぶんし)過敏症に特徴的な水疱(写真左)と潰瘍(写真右)。傷痕が1カ月以上経っても治らないときは、蚊刺過敏症を疑います。(提供:兵庫医科大学皮膚科 夏秋 優先生)

EBウイルスの持続感染により過剰な反応を引き起こす

 蚊刺過敏症の発症にはEBウイルスの感染が関与しているのではないかといわれています。EBウイルスはヘルペスウイルスの一種で、大人になるまでにほとんどの人が感染するといわれるほど、ごく身近なウイルスです。通常はかぜのウイルスと同じように、感染しても自然に排除されます。

 ところが、白血球中のリンパ球に住み着いてしまうことがあり、そのような持続感染の状態にある人がごくまれに、蚊に刺されたときに過剰な反応を起こすようになります。このような人では、リンパ球ががん化して、リンパ腫や白血病を発症して亡くなるケースもあります。

表◎ 蚊を含む虫刺されに対する反応と日本人に見られやすい年齢の目安(夏秋先生による)
詳しくは、「『年寄りは蚊に刺されてもかゆくない』は本当だった」を参照してください。
[画像のクリックで拡大表示]

 なぜEBウイルスの持続感染が起こるのか、蚊刺過敏症を発症するのかはまだ明らかにはなっていません。ただ、蚊刺過敏症は即時型アレルギーが現れていない「ステージ2」(右表)の幼児期に見かけることが多い病気です。

 この年代の子どもが、蚊に刺された後に単に赤く腫れるだけでなく、高熱を伴い、水ぶくれから潰瘍ができて治らないといった状態を繰り返す場合は、蚊刺過敏症が疑われます。成人で急に蚊刺過敏症を発症するケースはごくまれなので、炎症が強くても前述のような症状でなければ、過度に心配する必要はないでしょう。

足首に症状が集中しているときはネコノミが原因かも

血を吸うネコノミ。(提供:兵庫医科大学皮膚科 夏秋 優先生)
[画像のクリックで拡大表示]

 虫に刺された現場を見ていないと、赤みやかゆみが蚊によるものなのか、それ以外の昆虫によるものなのか、判断するのは難しいもの。人間が薄着になり、虫たちが活発に動き回る夏場は、蚊以外の虫に刺されることも少なくありません。

 今の時期に蚊刺されと似た症状が出るのが、ネコノミによる刺症です。ネコノミは、ノラネコやイヌの体に寄生して吸血します。特にノラネコの移動とともに、庭や公園などに発生していて、そこを通りかかると足元を刺されます。足首やすねのあたりに症状が集中していて、水ぶくれもできるような場合は、ネコノミの可能性が高いでしょう。素足にサンダル履きで出かけるようなときは注意してください。

ネコノミに刺された足。(提供:兵庫医科大学皮膚科 夏秋 優先生)
[画像のクリックで拡大表示]

 「虫に刺されて…」と受診してくる患者さんに対して、皮膚科医は、皮膚のどの部位に、どんな炎症反応が起こっているかを見るほかに、その人の行動範囲などを聞き、原因となった虫を推察します。例えば、数日前に野山に出かけていたようなときはブユ(ブヨ)に刺された可能性もありますし、家にいて脇腹や下腹部、大腿部の内側などに症状があるときはイエダニの可能性も考えます。

     *     *     *

 人の血を吸う蚊はジカ熱やデング熱をはじめ、さまざまな病気を媒介します(参照記事「無防備なアナタは知らぬ間に蚊から病気をうつされる」)。かゆみといった不快な症状から逃れるためにも、虫よけや蚊取りを上手に使って、蚊に刺されない生活を目指しましょう。

(談話まとめ:田村知子=フリーランスエディター)
夏秋 優(なつあき まさる)先生
兵庫医科大学皮膚科准教授
夏秋 優(なつあき まさる)先生 1984年兵庫医科大学卒業。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校皮膚科研究員、兵庫医科大学皮膚科、大阪府済生会吹田病院皮膚科医長などを経て、2000年より現職(当時は助教授)。専門は虫による皮膚病、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、漢方治療。著書に『Dr.夏秋の臨床図鑑 虫と皮膚炎』(学研メディカル秀潤社)がある。