日経グッデイ

“蚊に刺されやすい人”必見! 専門家がすすめる蚊刺され対処法

「年寄りは蚊に刺されてもかゆくない」は本当だった

蚊に刺された後の反応は「すぐ」と「遅れて」の2種類ある!

 夏秋 優=兵庫医科大学皮膚科准教授

蚊を不快に思う最大の要因は、刺された後の「かゆみ」や「腫れ」です。これらは私たちの体に備わっているアレルギー反応によるもの。これから3回にわたって、虫刺されの病態に詳しい、兵庫医科大学皮膚科准教授の夏秋(なつあき)優先生に話を聞きます。今回は、蚊に刺された後のかゆみや腫れのメカニズムについて解説してもらいます。

蚊に刺されたとき、すぐかゆくなる? 次の日かゆくなる?

 「蚊に血を吸われることより、あとからかゆくなるのが嫌なんだよね…」。そんなことを思っている人は少なくないでしょう。蚊に刺された箇所がかゆくなったり、ぷくっと膨らんで赤くなったり(膨疹、紅斑※1)するのは、蚊の唾液腺物質(※2)に対するアレルギー反応です。

※1 膨疹(ぼうしん)とは、皮膚の盛り上がりのこと。紅斑(こうはん)とは、皮膚の赤みのこと。
※2 蚊は血を吸っている間、吸っている血液が固まらないようにするため、針状の口吻(こうふん)から唾液腺物質を注入します。

蚊刺されによるアレルギー反応には時間差がある

 蚊に刺されたときのかゆみや赤みは、2つのタイプに分けられます。一つは刺された直後にかゆみや赤み、腫れが出て、1~2時間するとおさまるもの、もう一つは刺された翌日以降にかゆみや赤みなどが現れるものです。前者を「即時型」、後者を「遅延型」と呼びます。

【蚊に刺されたときのかゆみ・赤み・腫れ(アレルギー)の種類】

  • 即時型……刺された直後に反応が出るが、1~2時間後にはおさまる(写真左)
  • 遅延型……刺された翌日以降に反応が出る(写真右)
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(提供:兵庫医科大学皮膚科 夏秋 優先生)

ぶり返すかゆみは別のアレルギー反応

 よく、蚊に刺されてしばらく経ってからのかゆみを「ぶり返すかゆみ」などといいますが、実は、即時型と遅延型を起こすメカニズムは全く別のもの、同じアレルギー反応を繰り返しているわけではないのです。全く違う反応が皮膚の下で起こっています。

 即時型(刺された直後に出るアレルギー反応)は、体内に侵入した異物(この場合、唾液腺物質)に対して、体がそれに対抗する抗体(IgE)を作り出して反応するものです。見張り番のように、異物をいち早く排除するために働きます。蕁麻疹やアレルギー性鼻炎などもこの即時型と同じメカニズムです。

 一方、遅延型(刺された翌日以降に出るアレルギー反応)は、T細胞と呼ばれる免疫細胞が関与しているもので、異物を取り込んだマクロファージからの刺激によって、T細胞性の免疫機能が活性化されます。接触皮膚炎や金属アレルギーなどが同じメカニズムによって発症します。

 これらのアレルギー反応は、蚊に刺された経験によるもの(後天性免疫)。例えば、生まれて初めて蚊に刺された赤ちゃんには、かゆみや腫れは現れません。医学的に言うと、唾液腺物質に対する感作(アレルギー反応を起こす原因物質に対して抗体などが作られるようになること)が成立することで、かゆみや腫れなどの炎症反応が現れるようになるのです 。

蚊に刺された回数でアレルギーの現れ方が変わる

 何度か蚊に刺されると、まず遅延型が現れます。その後、さらに刺されてアレルギー反応を繰り返すようになると、遅延型に加え即時型も現れるようになります。

 即時型と遅延型が同時に見られる時期が続いた後は、遅延型が次第に出なくなっていき、即時型だけが残るようになります。さらに、即時型も弱まり、最終的には、蚊に刺されても皮膚反応が現れなくなります。蚊に刺された後に出るアレルギー反応の段階(ステージ)は、表1のように進んでいきます。

表1◎ 蚊を含む虫刺されに対する反応と日本人に見られやすい年齢の目安(夏秋先生による)
ステージ1反応なし新生児期
ステージ2刺された翌日以降にかゆくなる
(遅延型のみ)
乳幼児期~幼児期
ステージ3刺されてすぐにかゆくなり、一度治まるが翌日以降に再びかゆくなる
(即時型+遅延型)
幼児期~青年期
ステージ4刺されてもすぐにかゆくなるだけ
(即時型のみ)
青年期~壮年期
ステージ5反応なし老年期

かゆみ・腫れの現れ方は「年齢より蚊に刺された経験」による

人間の皮膚から血を吸うアカイエカ。(提供:兵庫医科大学皮膚科 夏秋 優先生)
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 四季のある日本では、蚊に刺されるのは夏場だけ。蚊に刺される頻度にものすごくバラつきがあるわけではないので、こうした反応のステージが年齢とともに進行していく傾向があります。

 もちろん、蚊に刺される頻度や体質によって、進み具合に差が出てきます。例えば、子どもの頃からよく蚊に刺されている人は、早い段階で無反応になることもあります。逆に、蚊にめったに刺されない人は、年配になってからも即時型が続くことがあります。「歳をとると、蚊に刺されてもかゆくなくなる」というのは一概にいうことはできません。

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 次回は、悔しくも蚊に刺されてしまった後の対処法について、夏秋先生に解説してもらいます。「一番気を付けなければならないのは、かき壊しによる細菌感染」と話す夏秋先生イチオシの「薬を使わずにかゆみを抑える方法」とは? …ぜひ、公開をお楽しみに。

(談話まとめ:田村知子=フリーランスエディター)
夏秋 優(なつあき まさる)先生
兵庫医科大学皮膚科准教授
夏秋 優(なつあき まさる)先生 1984年兵庫医科大学卒業。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校皮膚科研究員、兵庫医科大学皮膚科、大阪府済生会吹田病院皮膚科医長などを経て、2000年より現職(当時は助教授)。専門は虫による皮膚病、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、漢方治療。著書に『Dr.夏秋の臨床図鑑 虫と皮膚炎』(学研メディカル秀潤社)がある。