日経グッデイ

“蚊に刺されやすい人”必見! 専門家がすすめる蚊刺され対処法

相乗効果! プロは長時間作用型と1プッシュで“蚊が居づらい環境”を作る

週に1回、家の周りのたまり水をなくし蚊の発生を防ぐ

 足立雅也=日本防疫殺虫剤協会技術委員

肌の露出が増える夏は、蚊も血を吸おうと活発になる季節。蚊に刺されないためには、人の体に直接使い、血を吸わせないようにする「虫よけ(忌避剤)」と、空間に使用して蚊を退治する「蚊取り(殺虫剤)」の2つをうまく使うことが重要です。今回は、蚊取り線香から端を発し、新しい商品が続々登場している蚊取りについて、日本防疫殺虫剤協会技術委員を務める足立雅也さんに話を聞きます。

線香、液体、マット、1プッシュ…どの蚊取りを選べばいい?

蚊が居づらい空間を作るには、どのような蚊取り剤(殺虫剤)を選べばよいのでしょう。(©PaylessImages-123rf)

 蚊に刺されるのを予防するものとして、人体に直接使用する「虫よけ(忌避剤)」と、空間に使用して蚊を退治する「蚊取り剤(殺虫剤)」の2つに分けることができます。前回は、虫除けの選び方としっかり塗布する方法を解説しました(参考記事「プロは虫よけを塗り直して蚊をブロック!」)。さて、今回は「蚊取り」の上手な使い方についてお話しましょう。

 一般的な殺虫剤(防除用医薬部外品)には、除虫菊(シロバナムシヨケギク:キク科の多年草)のピレトリンという有効成分をもとに開発されたピレスロイド系の殺虫成分を含む製品が多く市販されています。

 ピレスロイド系(アレスリン、トランスフルトリン、メトフルトリンなど)の主な殺虫剤には、部屋全体やその場にいる蚊に直接噴霧するエアゾールタイプのほか、殺虫成分を点火による熱で揮散させる蚊取り線香、電気による熱で揮散させる蚊取りマット液体(リキッド)蚊取り、送風により揮散させるファン式蚊取りワンプッシュ(定量噴射)式蚊取りがあります。

 使用方法にはそれぞれメリット・デメリットがあります。有効成分の拡散方法や使用可能な時間、効果の持続時間などから、生活パターンに合わせて選ぶのがコツです。以下に各タイプの主な特徴を簡単にまとめますので、使う場所や環境、注意点を考慮して選ぶといいでしょう。

 主に屋内で使用するものを紹介していますが、蚊取り線香は庭先などで、携帯用のファン式蚊取りは屋外でも使用できます。液体(リキッド)蚊取りやファン式蚊取りは長期間使用できるものが多く、液剤などの交換回数が少ないのが特長です。ワンプッシュタイプは拡散が速く、即効性があります。

表1◎ ピレスロイド系殺虫剤の特徴
使用方法/特徴使用場面注意点
エアゾールタイプ・殺虫成分を含む溶液を噴射ガスの圧力で微粒子として放出させる
・即効性がある
屋内・噴霧後は換気する
・火気のそばでは使用・保管しない
・廃棄前にはガスを抜く
蚊取り線香・殺虫成分を植物性粉末に練りんでうず巻き状にし、点火による燃焼熱で揮散させる
・煙による拡散力が高い
・一巻きで7~12時間程度使用できる
開放系の屋内や縁側、庭先などの屋外・火を使うため、専用の容器に入れるなどして、火災や火傷に十分注意する。燃えやすいものの近くでは使用しない
・煙が出るので、目・鼻・のどなどに刺激を感じることがある
・屋内で使用するときは、定期的に換気する
蚊取りマット・殺虫成分を含んだ繊維質マットを、電熱器のヒーターに装着し、揮散させる
・煙が出ないので、機密性の高い部屋での使用に適している
・1枚で12時間程度使用できる
屋内・電熱による火傷に十分注意する
・定期的に換気する
・各製品の有効時間を守ってマットを交換し、マットの色が白くなるまで使わない
表1◎ ピレスロイド系殺虫剤の特徴(続き)
使用方法/特徴使用場面注意点
液体(リキッド)蚊取り・殺虫成分を含む薬液の入ったボトルを、電熱器に装着して揮散させる
・煙が出ないので、機密性の高い部屋での使用に適している
・液体ボトル1本で30日から180日など長時間使用できるので、交換の手間が少ない
屋内・電熱による火傷に十分注意する
・定期的な換気は必要だが、人の出入りが頻繁な場所では効果が弱まる
・長時間の連続使用ができるが、スイッチを入れてから効果が表れるまで30分程度かかる
ファン式蚊取り・殺虫成分を含ませたカートリッジを送風器に装着して、ファンによる風力、回転による遠心力で揮散させる
・電池式のため、設置場所を選ばず、火傷の心配もない
・60~180日など長時間使用できる
置き型タイプは屋内、携帯タイプは屋外でも使用できる・屋内で使用するときは、定期的に換気する
ワンプッシュ(定量噴射)式蚊取り・蒸散性の高い殺虫成分を、噴射ガスの圧力により定量噴霧する
・部屋の広さに応じた回数(量)を使用する
・1回の噴霧量が少なく、ワンプッシュで12時間程度から24時間程度効果が続く
・拡散が早く、即効性がある。気化した薬剤が壁や天井などにも付着するので、そこへとまった蚊にも有効
屋内・噴射する方向に注意し、顔などにかからないようする
・火気のそばでは使用・保管しない
・廃棄前にはガスを抜く

「長時間タイプ」+「ワンプッシュ」で蚊が嫌がる空間を作る

 私自身は、交換の手間が少なく、長時間使用できるリキッドタイプをメーンに使用。ただし、電源を入れた直後や人の出入りの際に蚊を部屋に入れてしまったときには、即効性があり、壁や天井にとまった蚊にも有効なワンプッシュ式を併用しています。

 庭木や生垣などは剪定をして、ヤブカに効く庭用のエアゾール殺虫剤を使用するといいでしょう。ただし、野菜など人が口にするものを栽培している場合は、かからないように注意します。

 ピレスロイド系の蚊よけ成分には、窓や玄関ドアに吊り下げたり、網戸に貼ったりするタイプがあり、よく使われているのを見かけませんか。実は、こうしたタイプは風向きの影響を受けやすく、有効成分が風に流されて、満足のいく効果を得られないこともあるでしょう。現在のところ、防除用医薬部外品の承認を受けている製品もないので、蚊に対する効果について検証が行われていない商品もあります。ピレスロイド系の殺虫成分を繊維に練りこんだ衣服なども市販されていますが、どの程度蚊に刺されない効果があるのか不明です。

人体には無害とされるが、ペットがいる家は注意!

 ピレスロイドは、害虫の神経に作用して、麻痺させることで駆除します。人体への影響を心配する声も聞かれますが、人などの哺乳類では、解毒作用で分解された後、体外へ排出されるので、蓄積して健康被害を及ぼすという心配はいりません。とはいえ、人やペットに向かって使用しないよう十分に注意し、アレルギーや刺激に弱い体質の人は、薬剤に触れたり、吸い込んだりしないようにしてください。

 また、ピレスロイド系はカブトムシやクワガタ、スズムシといった昆虫、金魚や熱帯魚、鯉などの魚類にも影響が出やすいので、これらのペットから離れた場所で使用するか、万が一のことを考えて使用を避けるほうがいいでしょう。

 使用に当たっての注意事項は、商品パッケージに記載されています。必ず読んでから購入、使用するようにしてください。

1週間に1度、家の周囲の掃除で蚊の発生を防ぐ!

東京都は蚊の発生防止対策を強化するために、ポスターを作成しています。(資料提供:東京都福祉保健局)
[画像のクリックで拡大表示]

 蚊に刺されないための対策と同時に、蚊を発生させない対策も大切です。蚊が吸血してから産卵し、幼虫(ボウフラ)から成虫に育つまでには、2~3週間程度かかります。ですから、1週間に1度、家の周囲を掃除しておけば、卵や幼虫のうちに退治でき、蚊の発生を防ぐことができます。

 その際、大切なのは幼虫の発生源となる溜まり水をなくすことです。庭やベランダに空き缶やビン、発泡スチロールの箱、バケツやジョウロ、長靴、植木鉢の受け皿といった水の溜まりやすいものを放置していませんか? 溜まった水に、葉っぱが1枚でも落ちれば、幼虫は成長することができます。こうしたものは完全に撤去するのが一番ですが、どうしても片付けられない場合は、底を上にして逆さに置くなど、水が溜まらないようにしましょう。

 側溝や雨どい、ベランダの排水溝なども、水や落ち葉が溜まらないようにします。どうしても水を溜めておく必要がある場所には、メダカなど幼虫(ボウフラ)の天敵を入れるといった対策が有効です。必要のない穴やくぼみは埋めてしまいましょう。このように、身近にできる蚊の対策はたくさんあります。ぜひ、一人ひとりが意識して、習慣にしていってほしいと思います。

     *     *     *

 次回からは、蚊に刺されるとなぜかゆいのかについて、虫刺されの病態に詳しい、兵庫医科大学皮膚科准教授の夏秋優先生に話を伺います。蚊に刺される回数によって、赤みや腫れのメカニズムが変わっていきます。蚊に刺されても、何も反応が現れない人とは? 次回の公開をお楽しみに。

(談話まとめ:田村知子=フリーランスエディター)
足立雅也(あだち まさや)さん
日本防疫殺虫剤協会 技術委員、日本ペストロジー学会 企画委員、日本建築衛生管理教育センター 防除作業監督者講師
足立雅也(あだち まさや)さん 2001年に害虫防除用資機材を扱う鵬図商事へ入社。全国のペストコントロール協会や自治体などに、害虫防除に関係する講義や実習を行っている。共著に『トコジラミ読本』(日本環境衛生センター)がある。