つらい“花粉症”には緑茶がいい!? 抗アレルギー作用を持つ注目のお茶とは
第5回 茶畑から生まれた機能性表示食品「べにふうき緑茶」――農業・食品産業技術総合研究機構 食品研究部門 山本(前田)万里さんに聞く
柳本操=ライター
苦みの強い紅茶用品種、最初は反対された
メチル化カテキンを豊富に含む「べにふうき」という品種は、もともと日本で育てられていたのですか?
山本さん べにふうきは、インドで紅茶用に栽培されているアッサム種に近い品種です。香りがとてもよく、半発酵する烏龍茶にすると花のようないい香りがするために、もともとは半発酵茶・紅茶用品種として登録されていました。カテキンを多く含む紅茶用の品種なので、日本茶のように発酵させずに入れたお茶はとても苦くなります。
私がべにふうきに関わるようになったのは、いろいろな経緯があります。私はかつて広島県の中国農業試験場で、エビの殻などに存在するキトサンや大豆外皮食物繊維の免疫増強作用を研究していました。ところが、国内留学先の九州大学から帰ったあとに、「次は静岡でお茶の機能性の研究をしなさい」という辞令を受けたのです。静岡に移ったのが1992年です。
実はこのころ、私の弟がひどいアトピーにかかっていて、入退院を繰り返していました。弟は、製粉会社の研究員なのに小麦粉にもアレルギーがありました。宇宙服のように完全防備の服を着なければならず、とても大変な状況でした。
そこで、お茶でアレルギーを抑制できないかをテーマにしてみようと考えたわけです。アメリカのラホヤアレルギー免疫研究所でマスト細胞の実験手法を学んできて、試験管内で簡単にアレルギー抑制効果をスクリーニングする方法を2年がかりで作りました。それからはひたすら「茶葉を摘んできてはお湯で煮出して、試験管で確認する」という作業を繰り返しました。さまざまな品種を試したところ、べにほまれにアレルギー抑制効果が確認できたのです。そこでメチル化カテキンに行きついたわけです。
その後、2000年には、メチル化カテキンを最も多く含むのが、べにふうきであることが判明しました。それを受けて、鹿児島県の茶農家さんにお願いして契約栽培がスタートしたのが2002年です。現在はべにふうきの栽培面積は約150haとなっています。
実は、研究を始めた当初は、「紅茶用の葉っぱを日本茶として飲むなんて、そんな苦いお茶、誰が飲むんだ! おいしいものを作らなくてどうするんだ」と批判されたこともありました。私はもともとお茶の専門家ではありません。だからこそ、通常のルールではありえない、本来は発酵させる紅茶用の葉を日本茶として飲む、という発想が可能だったのかもしれません。
べにふうき茶は、ヒト介入試験で期待以上の効果が得られました。そして、本格的にべにふうきの研究に着手してから15年かかって、「機能性表示食品」の認定を得るまでになったのです。前述した弟にも、べにふうき茶をせっせと飲ませ、ありがたいことに現在はとても症状が落ち着いています。
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