つらい“花粉症”には緑茶がいい!? 抗アレルギー作用を持つ注目のお茶とは
第5回 茶畑から生まれた機能性表示食品「べにふうき緑茶」――農業・食品産業技術総合研究機構 食品研究部門 山本(前田)万里さんに聞く
柳本操=ライター
メチル化カテキンが粘膜の細胞膜内に直接入り込む
なぜ、メチル化カテキンがアレルギー症状を抑えるのでしょうか?
山本さん メチル化カテキンには、上の図にあるようにメチル基(-CH3)がついています。これにより細胞膜との親和性が高くなるのです。
このため、メチル化カテキンは細胞質内に入りやすい性質を持ちます。通常、花粉症などのアレルギー症状の引き金を引くのは、皮膚や粘膜など全身の組織に分布する「マスト細胞」です。アレルゲン(アレルギー原因物質)に反応したマスト細胞は、ヒスタミンなどの生理活性物質を放出して、周囲に炎症を引き起こし、かゆみや不快感をもたらしますが、メチル化カテキンはマスト細胞内にぴゅっと入り込んで、「敵がやってきたぞ」という間違った情報を伝える情報伝達系や、マスト細胞を刺激しようとする受容体の発現を抑えます。また、マスト細胞上にあるカテキン受容体に結合して反応を抑えることもわかっています。こういった作用によってマスト細胞の活性化を抑え、ヒスタミンの放出を抑制するのです。
長期で飲用しておくと、アレルゲンをくっつける受容体が少なくなるので、たとえば春先に花粉が飛散してきても、「ああ、こっちには関係ないよ」と反応しなくなるのです。だいたい、70~80%のアレルギー反応を抑えることがわかっています。ただ、残りの20%程度は抑えきれないため、少しは症状が出てしまいます。また、まれにメチル化カテキンを小腸から吸収できないタイプの人もいて、このタイプの人には効果がありません。吸収されて局所に到達しないかぎりは、効果が望めません。
それでも、アレルギー症状がつらい人にとっては、症状の7~8割が抑えられれば快適ですよね。
山本さん そう思います。もう一つ特筆すべきは、メチル化カテキンは、血液中に入っても安定性が高く、効果が長く維持されるということです。口から入れたときの体に取り込まれる量も、一般的な茶カテキンEGCG(エピガロカテキンガレート)の約5倍であるということを明らかにしました(Cytotechnology.2007;55(2-3):135-142.)。また、べにふうきはもともとポリフェノール量が多い品種で、カフェインの含有量も多いのです。アレルギーを抑える薬の副作用である眠気とも無縁で、むしろ症状も気分もすっきりする、というのも大きなメリットといえます。
通常のお茶、つまりやぶきた茶では効果はないのですか?
山本さん やぶきた茶にはメチル化カテキンは含まれていませんが、やぶきた茶にも含まれる一般的な茶カテキン、EGCG(エピガロカテキンガレート)にも抗アレルギー効果が報告されています。それなら、普通のお茶を飲んでいてもアレルギーを抑える効果がでそうですが、実際には「お茶をたくさん飲んでいる静岡県でアレルギー患者が減っている」といった検証がなされているわけではありません。
おそらく、細胞を用いた実験では一定の抗アレルギー作用は現れるものの、普通にお茶として飲むレベルの量ではアレルギーを抑制するほどの力を発揮できないのではないかと考えられます。
一方、メチル化カテキンは、アレルギー抑制力が非常に強いので、効果が顕著に表れます。1日34mg摂取で効果が認められていますので、17mg含有するペットボトルのお茶(「アサヒめめはな茶(350ml)」)の場合、1日2本分(700ml)を飲む、という条件をクリアすれば効果が得られると考えています。
- 次ページ
- 苦みの強い紅茶用品種、最初は反対された