日経グッデイ

長寿の秘訣! 知られざる緑茶の健康パワー

ストレスで肝臓を傷める現代人こそ「緑茶」がいい

第4回 「脂肪肝」や「風邪・インフル」予防にも効果が期待できる!――栗原クリニック東京・日本橋院長 栗原毅さんに聞く(後編)

 柳本操=ライター

薫り高く、心を落ち着かせてくれる“お茶”(緑茶)。現在、緑茶の健康効果についての研究が国内外で進行しており、緑茶に秘められた健康パワーが次々と明らかになっている。今回は、前回に引き続き、「血液サラサラ」という言葉の名付け親でもある、栗原クリニック東京・日本橋院長の栗原毅さんに、緑茶を飲む習慣がいかに健康に寄与するかを詳しく聞いていく。緑茶はビジネスパーソンの多くが気になる「脂肪肝」への効果も期待できる。さらに、風邪やインフルエンザの予防効果も報告されているという。

(前編「緑茶習慣で『血液サラサラ』!『認知症予防』にも」はこちら

お茶は肝臓をダメージから守ってくれる

緑茶はビジネスパーソンの多くが気になる「脂肪肝」にも効果が期待できるという。(©kazoka30 -123rf)

栗原先生は、C型肝炎のインターフェロン治療など、肝臓病がご専門です。グッデイ読者の関心も高い、肝臓と緑茶の関係についてもぜひお聞かせください。緑茶は肝臓にもいい効果があるのでしょうか?

栗原さん 肝臓は、体内の栄養分を蓄積したり、代謝したり、有害物質の解毒も行っている、体の中でもっとも大きな臓器です。しかし、肝臓は活性酸素に極めて弱い臓器で、ストレスの影響も受けやすいのです。家庭内不和があるだけで、肝機能の数値であるALTやASTが上がるぐらいなんですよ。

*ALT(GPT)とAST(GOT)、γ-GTPは、肝臓の状態を判断する基本的な指標。AST、ALTは肝細胞のなかでアミノ酸の代謝に使われる酵素。肝細胞が壊れると、これらの酵素が血液中に漏れ出てくるため、数値が高くなる。この数値のバランスが、肝細胞の壊れ具合や原因疾患を知る手がかりになる。γ-GTPは肝臓で作られ、アルコールを飲みすぎたときに高くなる。詳しくは「糖質のとりすぎは肝機能の数値でチェックできる 」の記事を参照)。

数値が上がるということは、それだけ肝臓が傷害を受けているということですね。デリケートな臓器なんですね……。

栗原毅さん。栗原クリニック東京・日本橋院長。北里大学医学部卒業。東京女子医科大学消化器病センター内科、東京女子医科大学教授、慶應義塾大学教授などを経て現職。総務大臣・厚労大臣主催「遠隔地医療の推進方策に関する懇談会」構成員。肝臓専門医として肝臓病、糖尿病に対する質の高い医療を実践する

栗原さん そこで患者さんにお勧めしているのが、緑茶です。緑茶に含まれるカテキンには、肝臓を攻撃する活性酸素を消去する強い抗酸化作用があります。つまり、肝臓をダメージから守ってくれるわけです。また、お茶に含まれるうまみ成分のテアニンにはリラックス作用がありますから、お茶を飲むことでストレスが軽減します。これも肝臓にいい方向に働きます。

 カテキンやカフェインは熱いお湯で入れると多く抽出され、テアニンは40~50度ほどのぬるい湯で入れたときにたくさん抽出されます。ですから、朝は熱いお湯でカテキンとカフェインを抽出した渋めの緑茶でしゃきっと気持ちを奮い立たせ、夜は朝から水出しにして冷蔵庫に入れておいた甘みのある緑茶のテアニンでほどよくリラックスして安眠を、という飲み分けをするといいのです。

成人の3人に1人が「脂肪肝」!

肝臓にいいというと、「脂肪肝」にも効果があると考えていいのでしょうか。最近、「脂肪肝」を気にするビジネスパーソンが増えています。実際、日経グッデイでは、脂肪肝に関わる記事がびっくりするほど読まれているのです。

栗原さん もちろん、緑茶の摂取は脂肪肝の改善に効果があります。詳しく解説しましょう。

 そもそも脂肪肝とは、肝臓に30%以上の中性脂肪がたまった状態のことです。食事で摂った糖質や脂質は、小腸で吸収されたあとに肝臓で代謝されますが、糖質や脂質を摂りすぎてさらに運動不足であると、エネルギーとして消費しきれなかった分が中性脂肪として肝臓に蓄積します。今では成人の3人に1人が脂肪肝だと言われています。つまり、現在、国内に推定約3000万人以上の脂肪肝患者がいるわけです。かつては、「肝臓に中性脂肪がたまるだけだ」と軽くみられていた脂肪肝ですが、近年、さまざまな病気を誘発することがわかってきたのです。

 脂肪肝の中でも、近年とくに問題になっているのが、ごはん、麺類、甘いものなどの“糖質”を多く摂る人の脂肪肝が増えていることです。昔から医療の世界では、お酒の飲み過ぎが脂肪肝につながることはよく知られています。これがアルコール性脂肪肝なのですが、今、アルコールを飲まない人の間で脂肪肝が増えているのです。糖質の摂り過ぎによって、血中に糖が増えすぎると、インスリンが過剰分泌され、中性脂肪が肝臓に蓄積されてしまうのです。

 脂肪肝をきっかけに、アルコールを飲まないのにアルコール性肝障害に似た症状を起こす「非アルコール性脂肪肝炎(NASH=non-alcholic steatohepatitis)」に発展することがあります。これによって、肝臓の炎症や壊死を引き起こし、肝硬変や肝臓がんに早く進展することがあります。

脂肪肝をきっかけに、深刻な肝臓病に発展することがある(日本肝臓学会編『NASH・NAFLDの診療ガイド』より)
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 脂肪肝からNASHになるメカニズムはまだはっきりとわかっていませんが、脂肪肝の人の10人に1人が、およそ10年間かけてNASHに進展していくとされています(図)。「お酒を飲まないけれど甘いものが好き」という人こそ注意していただきたいのがNASHです。読者のみなさんは毎年健康診断で肝機能の検査値をみていると思います。肝機能の指標となるALTは、本来基準値が10~30IU/Lとされていますが、20IU/Lを超えていたら、脂肪肝をはじめ、肝機能の注意信号です。やせ型の人であっても糖質をとりすぎれば脂肪肝になります。

緑茶のカテキンは様々な方向から“負のスパイラル”を止める

栗原さん 「脂肪肝の何が本当に怖いか」――。それは、高血圧や脂質異常症、糖尿病などの上流に脂肪肝があると考えられるためです。脂肪肝になると、肝臓内の脂肪が血糖値や血圧を上げるサイトカインを出し、糖尿病や高血圧を引き起こしやすくなります。

脂肪肝はかつては、深刻な病気とは考えられていなかった。しかし、最近では、さまざまな病気の入口になることがわかってきている
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 肝臓内の脂肪が酸化すると動脈硬化も進行し、心臓病や脳卒中を発症するリスクが最大で約2倍になることもわかっています。糖尿病になると認知症リスクも高くなる、というふうに、脂肪肝を放置すると、様々な病気を誘発する“負のスパイラル”が起こるわけです。

 だからこそ、これらの病気の上流に位置する脂肪肝の状態でブロックすることが重要なのです。そのためには「ごはんの量を控えめにする」「砂糖入りの飲み物は避ける」といった“糖質ちょいオフ”の実践と「緑茶を日常的に飲むこと」を組み合わせることが、大きなポイントになります。

 先ほども少し話しましたが、緑茶に豊富なカテキンには活性酸素による酸化ストレスを消去する働きがあります。さらに、高濃度に摂取すれば「肝臓における脂肪燃焼酵素に働きかけ、脂肪燃焼を促す」効果が期待できます。これは、ペットボトルのお茶として販売されている特定保健用食品(トクホ)の商品などでおなじみの働きなので、ご存じの方も多いでしょう。つまり、肝臓内で脂肪を燃やす効果があるわけです。

 また、カテキンは小腸の消化酵素の活性を抑えることによって糖質の吸収を抑制します。最近の研究では、非アルコール性脂肪肝であるラットに緑茶を与えると、炎症物質が抑えられたという報告もあります(J Med Food.2015;18:648-655.)。

緑茶摂取と肝がんの罹患リスクのグラフ。国内の40~79歳のおよそ4万人を対象に9年間追跡調査を行った。その結果、緑茶を1日に1杯未満しか飲まない群の肝臓がん罹患リスクを1とすると、緑茶を1日5杯以上飲む群の肝臓がん罹患リスクは0.58で有意に低いことがわかった(Cancer Causes Control.2009;20:1939-1945.) ※詳細は東北大学大学院のホームページで紹介しています

 前述のように、脂肪肝は肝臓がんの出発点になっています。脂肪肝を減らすことができれば、肝硬変や肝臓がんの発症を抑えることにつなげられると考えられます。東北大学大学院が行った、4万人を対象にした9年間の追跡調査によると、緑茶を1日5杯以上飲んでいる人は肝臓がんの罹患リスクが有意に低いことが明らかになっています(Cancer Causes Control.2009;20:1939-1945.)。

余分な糖分を摂らずにポリフェノールを摂取できるスグレモノ

カテキンはポリフェノールの一種です。抗酸化効果の高いポリフェノールを含む食品や飲料は、赤ワインやコーヒー、果物など他にもいろいろとあります。ほかの食品や飲料などから摂取してもいいのではないでしょうか。

栗原さん 確かに、赤ワインやコーヒーもポリフェノールを多く含んでいます。ご指摘のように、これらの食品、飲料から摂取してもいいでしょう。ただ、赤ワインには、糖質やアルコールも含まれています。果物も、やはり血糖値を上昇させる果糖を多く含みます。コーヒーもミルクや砂糖を入れて飲む人が多くいます。その点、緑茶はカロリーゼロ、糖質ゼロです。抹茶ラテなどにするケースもありますが、基本的にはミルクや砂糖などを入れずに飲みますから、余分な糖分を摂取することなくポリフェノールを摂取するのに最適です。

 また、赤ワインはいくらポリフェノールが多いといっても、安くはありませんし、お酒ですから多くは飲まないほうがいい。その点、緑茶は経済的です。惜しげなく飲むことができます。カフェインの量もコーヒーの3分の1程度ですから、単純計算してもコーヒーの3倍くらい飲んでも大丈夫なわけです。このように、「毎日の習慣にしやすい」ところが大きなメリットです。

インフル、風邪予防に“ガラガラ、ごっくん”のお茶うがい

先生ご自身も、緑茶を毎日飲んでいらっしゃるのですか?

栗原さん もちろんです。朝は茶葉をまるごとパウダー状に加工したものをお湯で溶いて飲んでいます。日中は、ペットボトルの緑茶を2~3本飲んでいますね。ペットボトルを選ぶときは、価格がお手頃で、かつ国産茶葉が原料のもの、そしてカテキン量が多めなものをチェックしています。私は日中クリニックで患者さんを診察していますが、一人診察するごとに、その合間にペットボトルのお茶を口に含み、ガラガラとうがいして飲み込んでいます。風邪の流行期には電車の乗り降りのあとにも必ずお茶でうがいをします。

 個人的な話になりますが、今年はインフルエンザが非常に流行しましたが、私はインフルエンザにかかりませんでした。ワクチン接種で予防したうえに、お茶を欠かさなかったおかげでしょう。これまでもインフルエンザは1度もかかったことがありません。風邪もまったく引きませんね。

 お茶うがいによるインフルエンザ予防効果は、わが国の高齢者を対象とした臨床研究によっても報告されています(下図参照)から、患者さんにも、「ぜひやりましょう」とお茶うがいを指導しています。カテキンは、インフルエンザウイルスの表面にある突起にくっつき、粘膜にウイルスが吸着するのを邪魔して感染を防ぎます。静岡大学の研究結果でも、茶カテキンのうがいによって、インフルエンザ発症が抑えられたという報告がなされています。

お茶のうがいでインフルエンザの発症が抑えられた
茶カテキンのうがいによるインフルエンザ発症者数の比較。特別養護老人ホームの入所者を対象に、緑茶カテキン抽出物(総カテキン濃度は200μg/ml。市販の通常のペットボトル飲料の約半分の濃度)で1日3回、3カ月間うがいをしてもらった。全員が予防接種を受けていた。水うがいをした48名は10%がインフルエンザを発症。一方、茶カテキンでうがいした76名のインフルエンザ発症率は1.3%に抑えられた(J Altern Complement Med.2006;669-672.)
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 インフルエンザや風邪のウイルスは、のどの奥の粘膜にはりつきます。ガラガラとうがいすることは、感染予防効果を発揮すると考えています。うがいをした後は、そのまま飲んでしまって大丈夫です。また、カテキンは、口臭の原因成分と結合したり、虫歯菌や歯周病菌の繁殖を抑える作用も持っているので、習慣的にお茶を口に含むことで口をすっきり清潔にキープすることができます。

 緑茶にはカテキン以外にも、テアニンやビタミンCといった免疫力を高める成分も含まれているので、飲むことによる効果も高い。実際に、静岡県のお茶産地である菊川市では、1日1~5杯の緑茶を飲む小学校児童は1日1杯以下の場合と比べてインフルエンザ発症が少ないこともわかっています。

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 栗原さんは、テレビ電話などを用いて北海道や岩手県などの遠隔地の住民の医療相談にあたる遠隔医療を2007年より行っている。昨年は北海道積丹町で茶の苗を植樹した。積丹を世界最北端の茶どころにし、地域の活性化や健康長寿に役立ててほしいと考えているそうだ。次回は、アレルギー抑制に効果的なメチル化カテキンを含む「べにふうき」緑茶の研究者である、農研機構 食品総合研究所の山本(前田)万里さんに話を聞く。

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栗原毅さん
栗原クリニック東京・日本橋院長
栗原毅さん 昭和26年、新潟県生まれ。北里大学医学部卒業。東京女子医科大学消化器病センター内科、東京女子医科大学教授、慶應義塾大学教授などを経て現職。総務大臣・厚労大臣主催「遠隔地医療の推進方策に関する懇談会」構成員も務める。医学博士。肝臓専門医として肝臓病などの消化器疾患、糖尿病などに対する質の高い医療を実践する。『緑茶を食べると、なぜ糖尿病や認知症に効くのか』(主婦の友社)など著書多数。