お茶は「ストレス」「不眠」にも効果あり! 緑茶パワーをフルに活かす“いれ方”とは?
第2回 今、注目の健康成分 「テアニン」の効果 ~大妻女子大学名誉教授 大森正司さんに聞く(後編)
柳本操=ライター
お茶の味わいは後天的に学習されるもの
大森さん 私などは毎日緑茶を飲んでいるので、もっとガツンとした味わいでないと物足りないと感じるんです。ですから、これとは逆に、5gの茶葉に100ccの湯、湯温は80度、蒸らしは3分で抽出します。

大学に入学してきた学生には必ず緑茶をいれてもらいます。すると、最初のうちは白湯のような薄いお茶をいれます。私がいれたお茶は『渋くて嫌だ』というのです。でも、学生に「毎日、煎茶、玉露、など二種類以上のお茶をいれて飲み比べて、茶葉の種類を当てる」という課題を与えると、1カ月ほどで正しく当てられるようになります。おいしいお茶もいれられるようになります。
実はネズミでも実験をしてみたことがあります。水分として緑茶を与えると、ネズミは「なんだよ」と見向きもせず、えさも食べなくなり体重も落ちます。それでも与え続けると、お茶を飲むようになり、えさも食べるようになって、痩せた体も回復していきます。そうやって飼育しておき、あるとき水と緑茶を同時に出すと、なんとお茶を選んで飲むのです。つまり、お茶のおいしさは学習することにより、後天的に覚えるものだということです。
そうなんですね。確かに、お茶のおいしさをしみじみ感じるのは、ある一定の年齢を超えてからのように感じます。
大森さん ですから、子どもの世代にもどんどん緑茶を飲んでほしいと思います。幼いうちは、甘いものは無条件でおいしいと感じるのですが、苦みや渋みは危険のアラームだと本能的に感じるので、「まずい」と言います。しかし、飲み続けることによっておいしさを理解、獲得していきます。魚のわたやビールの苦み、赤ワインの渋みも後天的に学習するものですよね。お茶と言えば、農薬のことも気になるのですが。
大森さん 国内で生産される農産物は、残留農薬基準と農薬登録保留基準という2つの基準によって、安全性の確保がなされています。飲んでおいしいと感じられるようなお茶の樹は虫の標的にもなりやすいので、農薬を散布することによって病虫害を避けます。
煎茶のうち、一番茶と呼ばれる新茶は基本的に農薬は使われていません。その年の最初に生育した新芽を摘み採って作られるお茶で、収穫時期は八十八夜と言われる5月上旬(2016年は5月1日)になります。それまでは気温も低く、虫が出ないため農薬を散布する必要がないのです。農薬を使うのは基本的に二番茶以降になります。このときも、農薬散布の量と方法は、他の作物同様、法律によって規定されています。散布された農薬は、防除という役割を果たしたあと、日光による光分解や酸素、水との化学反応による分解、風雨による洗い流し、作物の代謝による分解を受けます。残留性は非常に少ない、と理解いただいていいでしょう。行政機関による無作為抽出、農薬分析調査も行われています。
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