やっぱりすごかった! 緑茶の健康効果
第1回 ダイエットから腸活まで、 「カテキン」の隠された効果とは? ~大妻女子大学名誉教授 大森正司さんに聞く(前編)
柳本操=ライター
「カラダにいい緑茶」が飲まれなくなっている
緑茶の健康効果が次々に明らかになり、緑茶を使った健康志向の食品・飲料が登場する一方で、緑茶を飲む習慣が失われつつあるのも今の日本の現状だ。お茶と言えば、かつては訪問先では必ず茶托に載った湯飲みが出されたものだ。ところが最近はペットボトル飲料が出されることが多くなった。家庭でも、急須で丁寧にお茶をいれる習慣が減っている。
静岡県立大学茶学総合講座、岩崎研究室が2014年に20~60代の男女1000人を対象に行った「急須でいれた緑茶に関する意識調査」によると、緑茶を飲む頻度については半数近くの49.0%が「ほぼ毎日飲む」と回答している。一見高いようにも見えるが、逆に言うと半数以上の人が毎日緑茶を飲んでいないのだ(こちらの記事を参照)。

普段の飲み方も、20代から30代では、「急須でいれる」より、「ペットボトルで緑茶を飲む」人の方が多数派だ。若い世代で「急須離れ」が進んでいることがわかる。
実際、日本での緑茶の生産量と、国内消費量は減少傾向にある。農林水産省の統計によると、2015年の荒茶(仕上げ茶の前段階のもの)の 生産量(全国)は7万9500トンと前年に比べ5%も減った(※なお、ペットボトルなどの緑茶飲料市場は近年拡大傾向にある)。
冒頭でも少し触れたが、緑茶にはさまざまな健康効果がある。値段が安く、量も摂取しやすい緑茶――こんなスグレモノを活用しない手はない。そこで今回の特集では、日本人だからこそ改めて見直したい「緑茶の健康効果」を緑茶研究の第一人者に聞いていく。
初回となる今回は、これまで50年にわたってお茶研究に従事してきた“お茶博士”、大妻女子大学名誉教授 大森正司さんに、緑茶の健康効果の全体像、そして緑茶の健康効果の代名詞ともなっている「カテキン」の効果について伺った。
緑茶の良さが忘れられている
昨年の国立がん研究センターの研究報告により、「やっぱり緑茶は体にいい」とマスコミなどで大きく取り上げられました。カラダにいいというのは、やはり本当だったのですね。
大森さん 緑茶の健康効果は欧米諸国でも注目されているんです。1998年にアメリカ健康財団のJ.H.ワイスバーガー博士によって『がん予防効果がある』と発表されています。近年では、メタボリック症候群予防やがんのステージのどこで効くかなど、研究内容はより細分化していっています。
緑茶の機能性研究は世界各国で進行する一方で、「緑茶は日本人にとってはあまりにも当たり前すぎて、その良さが忘れられているのかもしれない」と危惧していたので、国立がん研究センターの発表はうれしかったですね。改めて「緑茶」を飲もうという人も増えたのではないかと思います。
国立がん研究センターによると、死亡リスクを低下させ、心臓や脳も病気から守る。いいことづくめですね。この働きは、緑茶のどの成分から得られるものなのでしょうか。
大森さん 緑茶に含まれる「カテキン」「カフェイン」「テアニン」といった成分による複合的な働きによるものです。渋みと苦み、うまみが重なり合うこれらの健康成分を、急須に茶葉を入れてお湯を注ぐだけで同時に取ることができる。日本茶はあえてサプリメントを取る必要がなく、しかも経済的にもやさしいという、最も身近で健康効果を期待できる飲料です。
●カテキン(渋み成分) |
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ダイエット効果(脂肪燃焼を促進) |
抗酸化作用 |
抗菌、抗ウイルス作用(ピロリ菌や歯周病菌の抑制、抗インフルエンザ) |
肝臓を保護する |
血圧を抑える |
血糖値上昇を抑える |
腸内環境を改善する |
口臭を抑える、虫歯予防 |
アレルギー症状の抑制(「べにふうき」という品種による効果) |
発がん抑制効果も期待 | ●テアニン(うまみ成分) |
リラックス作用 |
ストレス軽減 | ●カフェイン(苦み成分) |
気分すっきり、覚醒作用 |
ダイエット効果(脂肪燃焼を促進) | ●その他 |
ビタミンC、βカロテン、ビタミンE、葉酸、フッ素、γ-アミノ酪酸(GABA)など |
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