日経グッデイ

話題の健康レストラン~罪悪感なくおいしいものを食べる~

「餃子の王将」が驚きの新店舗! 新展開の裏側を直撃

“女性向け”新店舗を京都のど真中に出店、2号店は満を持して都心に

 永浜敬子=ライター

王将、はなまる…外食チェーンで罪悪感なくおいしいものを

「外食ばっかりじゃカラダに悪い」と言われたのは昔の話。消費者の健康意識の高まりや女性客の取り込みをねらって、「健康を意識したメニュー」を出す外食店が増えている。我々利用者側としても、家の外で“罪悪感なく”おいしいものを食べられるのはありがたい。特に注目なのが、多くの人がお世話になっている外食チェーン店の動きだ。特集では、積極的に健康メニューに取り組む外食チェーン店を取り上げる。気になる店、メニューがあったら、ぜひ一度訪れてほしい。

 「外食ばっかりじゃカラダに悪いよ」――。こんな風に言われたことがある人(特に男性)は多いだろう。実際、外食だと野菜が十分に摂れなかったりと、バランスのいい食事を摂るのが難しいことが多い。

 しかし、ここ数年で状況は変わりつつある。バランスのいい“健康”に配慮したメニュー、低糖質、低カロリーメニューを充実させた店が増えている。これは「自然食レストラン」などの特別な店の話ではない。「餃子の王将」「はなまるうどん」「吉野家」――。多くの街にある、身近でいつもお世話になっているチェーン店が積極的に健康志向を進めており、バランスのいい食事がいつでも摂れるようになっているのだ

 しかも、各社は“おいしさ”に最大限の努力を払っている。外食の世界では、いくらカラダに優しくても、おいしくないメニューは決して売れない。多くの人にとって、わざわざ外食するのは「おいしいものを食べたいから」。だからこそおいしさにはこだわる。

 我々利用者側としても、家の外で“罪悪感なく”おいしいものを食べられるのはありがたい限りだ。この特集では、積極的に健康メニューに取り組む外食チェーン店を取り上げる。

 初回となる今回は、男性のハートをがっちりつかんできた関西の雄「餃子の王将」のユニークな試みを紹介する。

京都・烏丸御池に3月に開店した「GYOZA OHSHO 烏丸御池店」。「餃子の王将」の新業態だ。ロゴも一新。「王将はメニュー開発や店舗の運営など、店長の裁量権が大きい。当店もここだけにしかないメニューやサービスを充実させていきたい」と松田信幸店長。
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「餃子の王将」というとボリュームたっぷりのイメージ

 男性の「がっつり派」を中心に支持を集めている中華料理チェーンの「餃子の王将」(運営は王将フードサービス)。王将というと、定番の餃子をはじめ、ラーメン、チャーハン(焼めし)といった具合に、ボリュームたっぷりの定番の中華メニューが売り。店長に自由裁量権があるので、店舗によってメニューや雰囲気が異なる。皿洗い30分すれば、無料で食事ができる京都の出町店など、ユニークなサービスを設けている店舗もある。学生時代や若い頃にお世話になったビジネスパーソンも少なくないはずだ。

 特に、その発祥地でもある京都などでは“ソウルフード”的な位置づけになっており、京都生まれの筆者は、昔からなじみ深いチェーン店だ。京都で開催される同窓会の締めは必ず王将で昔話に花を咲かせるのが常。東京在住になった今も、ときおり王将の餃子が食べたくなる。

 やはり王将の魅力はその味とボリュームにあると言ってもいいだろう。チャーハンとラーメン、から揚げのセットといったセットメニューも充実している。こういったメニューは、最近話題のローカーボ(低糖質)と逆行するように炭水化物が多く、油分も多い。

“男性8割”の王将が出した新店舗とは?

産地の明確な食材を使用。国産食材に徹底し、味も向上した。
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 一見すると健康志向とは縁遠いように思える王将だが、実はさまざまな取り組みを進めている。2014年からは、餃子や麺に使用している小麦粉やキャベツ、生姜、にんにくなどの食材を国産へ切り替えるなど、食の安全とおいしさ向上の試みを始めている。

 そして、今年春からはユニークな試みをスタートさせた。それが京都のど真中に3月に出店した、“健康に特化した”新業態「GYOZA OHSHO 烏丸御池店」だ。男性客向けの中華料理店というイメージが強い同店だが、新店舗のメインターゲットは女性客だ。

 女性客を狙った新コンセプト店だけあって、外観は黒で統一したスタイリッシュなデザインで、店舗入り口前にはウェイティングスペースもあり、まるでオシャレなカフェのようだ。店舗の中も清潔感があるナチュラルな内装で、とても中華チェーン店には思えない。

バルをイメージしたゆったりとした店内。店舗面積は立ち飲みスペースを含めて約69坪。総席数は63席。オープンキッチンには、床に水を流さないドライキッチン方式を導入している。
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 そしてメニューを見ると、餃子などのおなじみのメニューに加えて、「サワークリームと溶かしバターで食べるスープ餃子」「ケーキのようなふわふわ玉子焼き」などの王将とは思えないメニューも目に付く。

店舗のエントランスにはウッドデッキが設けられ、スタンディングバーとしても使える仕様。ちょい呑みのニーズも獲得している。
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 この新店舗は3月にオープンした後、女性客を中心に行列ができる人気店となっている。実際に来店される客の6割以上が女性だ。女性グループが中心だが、一人で訪れる女性も多い。筆者が訪れた4月後半の平日は、3時を過ぎても遅めのランチを楽しむ一人客が目立った。

なぜ王将が“女性向け”の店舗を出したのか

 これまで男性客のハートをがっちりつかんでいる王将が、なぜ“王将らしくない”展開に踏み切ったのか。

 王将フードサービスのリサーチ&コンサルティング部の庄司達生氏は、これまでにない新店舗に挑戦した理由をこう話す。「(餃子の王将の)既存店のお客様は、男性8割に対して女性はわずか2割でした。安全でヘルシーなメニューを盛り込み、より多くの女性客に来店してもらうとともに、中高年齢層の男性の健康志向のニーズに対応するのが狙いです」。

桜や菊、矢羽根文様など、京都らしい和のモチーフを配したデザイン。今後は店舗ごとに立地に応じたデザインを採用する予定。ビジネス街の烏丸御池という立地で、座席2~3つに一つの間隔でモバイル用コンセントが設置されWi-Fiも完備されているせいか、ランチ時などは男性客も少なくない。
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 王将の既存店に対して、「男性客がいっぱい」「油っぽくて床が滑りやすい」という印象を持つ人は多いだろう。女性客は、家族で行くことはあっても、なかなか女性一人では入りにくい。“王将に来られなかった”女性客を開拓するのが新店舗の大きな狙いだ。王将に限らず、中華チェーンは男性客が多い。今後も継続的に売り上げを伸ばしていくのは、遅れていた女性客の取り込みが欠かせない。だから、一号店は京都の中でもオフィス街である烏丸御池に開き、近くで働くOL層などをターゲットにした。もちろん、健康に配慮したメニューは、メタボに悩むミドル以上のビジネスパーソンにとってもありがたい存在だ。中高年齢の男性層が離れるのを防ぐ狙いもあるだろう。

口当たりの軽さを重視したオリジナルメニュー

 「GYOZA OHSHO 烏丸御池店」には、ここでしか味わえないオリジナルのメニューがある。バランス料理研究家の小針衣里加氏がメニューを監修し、カラダに優しく、栄養バランスにこだわりながら、見た目や食感に重きを置いた。“油っこい”というイメージの中華料理の概念を覆すために、健康的で口当たりの軽さを重視している。油を使用する料理が多い中華料理だが、油切れがよく、胃もたれしにくい国産の米油を炒め物やドレッシングなどに使用しているので、全体的に軽やかな印象だ。

 「餃子の王将」といえば、その名の通り看板メニューは餃子だが、同店では「サワークリームと溶かしバターで食べるスープ餃子」も人気。あっさりとした白湯に浮かぶ水餃子に液状のバターやサワークリーム、大葉、黒胡椒などをトッピングして食べるオリジナル餃子だ。餃子の餡は、既存店と同じものだが、バターを添えるとコクが出て、まったく違う印象になる。また、サワークリームはミルキーな風味に、黒胡椒はキリッと締まった味になる。バターと黒胡椒、サワークリームと大葉など、トッピングをいろいろ組み合わせるのも楽しい。

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「サワークリームと溶かしバターで食べるスープ餃子」。小籠包のように旨みのあるスープが口の中でほとばしる。もちもちとした皮もおいしい。480 円。

やっぱり人気の定番餃子

 「野菜と豚肉のチーズせいろ蒸し」は、季節の野菜をせいろで蒸して豆板醤の効いたソースをつけて食べる。ほとんど油が使われていないヘルシーメニューだ。スタッフがせいろのフタを取ると湯気が立ち上り、中から彩り豊かな料理が顔を出す。こうしたパフォーマンスも従来店にはなかったサービスである。

「ケーキのようなふわふわ玉子焼き」。見た目も食感もスフレケーキ。そのまま食べると、ほのかに甘いふわふわの伊達巻。ごま油を添えると濃厚なおいしさに。200円。
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 「ケーキのようなふわふわ玉子焼き」は、見た目はほとんどケーキ。魚のすり身と卵を合わせてオーブンで焼きあげてあるので、スフレのようなふんわりとした食感が楽しめる。味は伊達巻に近い味わいだが、ごま油をつけて食べると、中華テイストがぐっとアップする。デザートも充実しており、店内で作る杏仁豆腐をはじめ、豆乳きな粉プリンや黒胡麻バナナ春巻き、甘酒と生姜のアイスクリームなど、体に優しいとされる食材を使用している。

ぷるぷるとした口当たりの杏仁豆腐。杏仁の香りがほどよく、ミルクプリンのようなミルキーな味わいだ。380円。
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 オリジナルメニューが充実している同店だが、既存店と同じグランドメニューも豊富だ。餃子やラーメン、天津飯、焼めしなどのおなじみのメニューもしっかりあるので、古くからの王将ファンも安心してほしい。

 一番の人気は何かと庄司氏に聞くと、なんと「餃子の王将」のスタンダードな餃子なのだそうだ。「この結果には私たちも驚いています。今まで食べたくても入りづらかった女性も多かったのかもしれません。こうした潜在的なニーズの獲得にも期待したい」と庄司氏。

 私自身もそうだが、餃子が好きという女性は少なくない。「餃子が食べたいけれど、一人では入りにくい…」というとき、「GYOZA OHSHO 烏丸御池店」のような“女性でも浮かない”店があるのはありがたい。また、ここで王将の餃子の味を初めて知った女性が、家族や友達と一緒に他の店舗を訪れる、などといった波及効果もありそうだ。

次は首都圏に! その後全国の主要都市に進出

 今後、王将は、メニューにカロリー表示をするなど、より健康に留意する層へのアプローチを高める方針だ。

 この新店舗の初年度売り上げ目標は約1億2000万円。新業態は、ここでしか味わえないメニューなどがあり、オペレーションが複雑化するなどから、オリジナルメニューの価格帯はやや高めに設定されている。

 しかし定番の餃子は既存店と同じ6個220円(※東京では240円)だ。ジャストサイズという小盛りもあり、こちらは3個130円。こうした試みは、ヘルシーなカフェスタイルを求めて初めて足を運んだ層に王将のスタンダードなメニューを試してもらえるという効果もある。

 この店舗で運営体制を構築し、2号店は首都圏に出店する予定だ。烏丸御池店同様、繁華街よりもオフィス街を中心に展開する予定で、東京1号店は丸の内を検討している模様だ。今後は全国の主要都市にも進出し、1年以内に2ケタの店舗数を目指す。遠からず、都市部ならオフィスや自宅から行きやすい店も増えそうだ。さらに海外に出店する計画もあるという。

 なお、烏丸御池店は、京都らしく、和のイメージを強調した店舗デザインだが、今後は出店地に合わせた地域密着のデザインが計画されているとのことだ。

「GYOZA OHSHO 烏丸御池店」

【住所】京都市中京区両替町通姉小路上ル龍池町430
【電話】075-251-0177
【営業時間】11:00~24:00(23:30LO)、日・祝は~22:00(21:30LO)
【定休日】無休