日経グッデイ

仕事に役立つメンタルトレーニング

結果を出す人は独り言が違う!一流選手に学ぶ“プラス思考”法

ポジティブな“自己暗示”でプレッシャーから解放されるコツ

 西門和美=フリーライター

 あなたが、野球の3割打者だとして自分がバッターボックスに立っているシーンをイメージしてみよう。1打席目も2打席目も打つことができなかった。その状況であなたはどのような心境になるだろうか。
 重要な場面で容赦なく心を襲ってくるプレッシャー。その原因の多くは「結果を出せなかったらどうしよう」「前回のように失敗しないか心配だ」「ミスをして怒られるのが怖い」といったマイナス思考だ。今回は、そんなマイナス思考にとらわれずプレッシャーに打ち勝つため、一流のスポーツ選手たちが実践しているセルフコントロール術を東海大学体育学部教授の高妻容一さんに教えていただく。

メンタル面が弱い人の思考パターンとは

過去を悔やむのではなく、ポジティブな未来をイメージしてプラス思考になるほうが、良い結果につながりやすい(©strangerview 123-rf)

 あなたは肝心なプレゼンや大事な仕事などを前にして「結果を出せなかったらどうしよう」とプレッシャーを感じることはないだろうか。

 「正念場を前にして浮かび上がったマイナス思考は、次第に増大して心身を狂わせるような悩ましいプレッシャーとなることがあります。いったん悩み始めると、不安や恐れがさらに強くなるため、呼吸が乱れたり集中力が低下したりとコンディションが悪化。その結果、ミスを招くなどしてマイナス思考にますます拍車がかかり、悪循環へと陥っていくのです」と、東海大学体育学部教授の高妻容一さん。

 そんな状況を回避して良好な心理状態を保つために、効果的なのはプラス思考になること。ただし、人の心は「変えよう」と思うだけで簡単に変えられるものではない。

 そこでおすすめしたいのは、行動を変えることでプラス思考へと導くこと。行動を変えることよって意図的に、思考にも変化をもたらすことができるのだ。

 「メンタルが弱い人は過去を引きずりがち。自分にはコントロールできないようなことにまで思いを巡らせ、マイナス思考に陥ってしまうのです」と、高妻さん。

 例として、冒頭でも挙げたように、3割打者である自分がバッターボックスに立っているシーンをイメージしてみよう。1打席目では打つことができなかった。その状況でどのような心境になるだろうか。

 マイナス思考の人は、1打席目の失敗を悔やんで「あと2打席しかチャンスがない!」とプレッシャーを強めてしまう。さらに2打席目でも失敗を重ねようものなら「あと1打席しかない!」と緊張でガチガチに。心理的にも呪縛され、本来であれば勝てるような試合も勝てなくなってしまうだろう。

 しかし、プラス思考の人は違う。3割打者ということは、3打席のうち1度は打てる可能性が高いということ。1打席目で失敗したとしても「残り2打席のいずれかで打てる!」「むしろ、1打席目よりも打てる確率は高い!」と前向きさを保つことができる。さらに2打席目で失敗したとしても「次は打てる!」「次こそ最も打てる可能性が高い!」というポジティブな気持ちで勝負に臨むことができるだろう。

1打席目、2打席目で打つことができなかった3割打者の場合

マイナス思考の場合…「あと1打席しかチャンスがない」

プラス思考の場合…「次こそ最も打てる可能性が高い!」

 「すでに失敗してしまった1打席目を後悔したところで、その結果はコントロール不能。いつまでも思い悩んでマイナス思考に陥っていては、さらに悪い結果を招いてしまう。過去を悔やむのではなく、ポジティブな未来をイメージしてプラス思考になるほうが、良い結果につながりやすいのです」(高妻さん)。

ポジティブな言葉が心を前向きにする

 プラス思考になるための心理的テクニックとして、おすすめなのが「セルフトーク(独り言・自己会話)」だ。声を出さず心の中でつぶやく方法でも十分に効果がある。

 まずは試しに、次のようにつぶやいてみよう。

 「やりたくない」「嫌だ」「無理」…。そして、自分の今の気持ちを観察してみるのだ。つぶやく前と比べて気持ちが落ち込み、ネガティブになっていないだろうか。

 続いて、「できる!」「ナイス!」「絶好調!」などのポジティブな言葉をつぶやき、再び自分の気持ちをチェックしてみよう。先ほどよりもずっと前向きな気分になっているのではないだろうか。

 「鏡で自分の顔を見ながら実践すると気持ちが高まります。笑顔になってポジティブな言葉でセルフトークをしてみましょう」と高妻さん。

 また、セルフトークに加え、周囲の人たちと積極的にポジティブなコミュニケーションをとることも有効だ。「褒めたり笑ったりし合うことで、頭の中はプラス思考に。気持ちが上向きになっていきますよ」(高妻さん)。

 重要な試合やプレゼンを前にすると、気持ちが萎縮してネガティブになってしまうこともあるだろう。しかし、「どうせダメだろう」というあきらめ感を持っていると、精神的にも縛られて力を出せなくなってしまう。

 そんなときこそ、「プラス思考になり『できる!』といった言葉で自己暗示をかければ、モチベーションを上げて理想的な心理状態で勝負に臨むことができるのです」と、高妻さん。

 未来に対するポジティブなイメージを思い描くプラス思考。さらに、それを言葉にして自分に語りかけるセルフトークを行えば、プレッシャーに負けない心のスイッチを入れることができるはずだ。

高妻容一(こうづま よういち)さん
東海大学体育学部教授
高妻容一(こうづま よういち)さん 1955年宮崎県生まれ。福岡大学体育学部体育学科卒業、中京大学大学院修士課程体育学研究科修了後、1985年フロリダ州立大学博士課程運動学習・スポーツ心理学専攻に4年半留学。1993年州立フロリダ大学へ1年間の研究留学。近畿大学教養部を経て、2000年より東海大学体育学部へ。現在、教授。2015年にも半年間、米国へ研究留学(IMGアカデミー、オリンピックトレーニングセンター、フロリダ大学、大リーグのチーム等)。1985~2001年日本オリンピック委員会のメンタルマネジメント研究班員。1994年から日本メンタルトレーニング・応用スポーツ心理学研究会をスタートし、事務局・代表を務める。東海大学スポーツサポート研究会メンタルトレーニング部門担当。