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仕事に役立つメンタルトレーニング

五郎丸ポーズ、イチローのカレー…大一番で“いつもの力”を発揮するコツ

プレッシャーで折れない心のカギ“ルーティン”を味方につける

 西門和美=フリーライター

重要なプレゼンや試合など、「ここぞ!」というときに実力を出し切れず悔しい思いをしたことはないだろうか。そんなとき「実力はあるのにメンタル面が弱くて負けてしまった」と考える人も多いだろう。しかし、本番で存分に戦えるメンタル面の強さもまた、実力のうち。そうした強さを発揮するうえで効果的なのが“ルーティン”だ。全5回にわたり、東海大学体育学部教授の高妻容一さんに具体的なメンタルトレーニング法について教えていただく同シリーズ(第1回は「スポーツ心理学者が明かすプレッシャーに強い人の共通点」)。第2回となる今回は、琴奨菊や五郎丸選手、イチロー選手など一流アスリートたちも実践する“ルーティン”を味方につける方法について紹介する。

“琴バウアー”の原点は、本番強さを培うためのメントレ

メンタルトレーニングの講習会でルーティンの重要性について話す高妻教授

 2016年の大相撲初場所で、日本人力士として10年ぶりの優勝を果たした大関・琴奨菊関。彼は、ルーティンの実践によってコンスタントに実力を発揮できるようになったといわれる。琴奨菊関だけではない。ラグビーの五郎丸歩選手や野球のイチロー選手もまた、ルーティンの実践者だ。

 琴奨菊関の優勝後、その勝因として、新しく始めたフィジカルトレーニングや新婚であることなどが挙げられたが、中でも注目を集めたのが “琴バウアー” だ。

 立ち合い前に必ず行う大きく体を反らす豪快なパフォーマンス。このルーティンは、フィギュアスケートの荒川静香選手のイナバウアーと似ていることからそう呼ばれ始めたといわれている。

 実は、この“琴バウアー”の原型は、東海大学体育学部教授の高妻容一さんが指導に携わったメンタルトレーニングにあるという。

勝負時だけでなく、普段から行ってこそのルーティンパワー

 もともと、メンタル面の弱さを自覚していた琴奨菊関。「結果を意識しすぎてプレッシャーを感じ、思うような相撲をとれない」という悩みを抱いていた。

 それに対して高妻さんはあるTV番組の中で、「結果よりもプロセスを意識してほしい。結果を出すために何をするのかという一連の流れが大切」とアドバイス。 “琴バウアー”を含む一連のプログラムを実践することで、気持ちの切り替えや集中力アップを図れる方法を伝授した。

 琴奨菊関が高妻さんのもとで体験したメンタルトレーニングプログラムは、2人1組になって次のような手順を踏んで行うもの。

(1)パートナーと握手をしながらお互いを褒め合うことで、プラス思考になって笑顔を作る
(2)上を向いて胸を張り、さらにプラス思考になる
(3)顔から全身にかけてセルフマッサージすることで筋肉と気持ちをリラックスさせる
(4)呼吸に意識を集中させる
(5)大きな声を出しながらあくびをする(琴バウアーに該当)
(6)リラクセーション(本シリーズの第3回で解説予定)とサイキングアップ(第4回で解説予定)のプログラムを行う

 琴奨菊関は初めてこうしたプログラムを行った後、緊張がゆるんで明るく晴れ晴れとした表情に。「『突破口を見つけた』『立ち合い前にも同じようなことをやれば大丈夫そう』と感じたようで、自信を取り戻した様子が伝わってきました」と高妻さん。

 ただし、こうしたプログラムは勝負時にのみ実践すればいいわけではない。平時にも欠かさずルーティンとして行うことで、“いつもの力”をコンスタントに発揮できる。場面を選ばず、正念場でもブレない心を保てるようになるのだ。

 「ルーティンの効力を期待するなら、いざというときにだけ実践するのは逆効果。特別なときにだけ気合いを入れて普段やらないことを試すと、かえってリズムが崩れてしまう。日々の積み重ねをなぞるようにルーティンを行うからこそ、本番でも同じようにリズムを刻んで力を出せるのです」(高妻さん)。

 ルーティンの実践によるコンディションの調整。これは、プロスポーツのみならずビジネスシーンなどでも応用できるテクニックだろう。

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