ケガ予防&疲れを引きずらない 足腰ストレッチ・メンテナンス術
【カリスマトレーナーが動画で解説】関節に細かな振動を与えて筋肉疲労から素早く回復
筋肉のリフレッシュでケガ予防につなげる最新テクニック
松尾直俊=フィットネスライター
5月の大型連休を迎えて、ランニングやウォーキング、インターバル速歩、ハイキングなどの運動を楽しむにはちょうど良い季節になった。でも、走り終わった後や歩きすぎた後のケアを忘れていると、思わぬところに痛みが出たり、ケガの原因になったりする。青山学院大学陸上競技部を箱根駅伝2連覇に導いた功労者の一人である、フィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一さんの指導を受け、ランニングや歩きすぎた後の疲労回復やケガ防止に効くストレッチやエクササイズを3回にわたってお伝えする特集企画。
1回目の「ケガ予防には運動前より運動後のストレッチが効く!」でお伝えした静的ストレッチとアイシングのノウハウに続いて、2回目の今回は、筋肉の疲労を素早く取り除く「セルフモビライゼーション」の技をお伝えする。

ランニングやウォーキングを行うと、筋肉はその負荷によって小さな損傷を起こす。また、力を発揮するために使われたエネルギー(栄養)の代謝物などの影響で柔軟性が低下する。そのままにしておくと、疲労回復が遅くなると同時に、筋肉が硬くなったままになってしまう。すると次に運動した時に損傷しやすくなり、ケガにつながってしまうのだ。1回目でお伝えした静的ストレッチは、運動後に収縮した筋肉を伸ばすことで柔軟性を取り戻してくれるが、それだけでは疲労から完全に回復していない。疲労からの回復を早めるには、筋肉を緩めるための動作が効果的なのだ。
「練習後に行う重要なこととして青学の選手たちに伝えたのは、体を『伸ばす』『冷やす』『緩める』の3つです。使った筋肉を前回紹介したようなストレッチで十分に伸ばし、アイシングで筋肉や腱を冷やす、そして今回紹介するのが、その中の緩めるという部分です」(中野さん)
関節に細かな振動を与えて筋肉を緩める
収縮した筋肉を緩める方法は、筋肉がつながっている関節に細かな振動を繰り返し与える「セルフモビライゼーション」と、筋肉に力を入れるのと脱力するのを繰り返す「筋弛緩法」の2通りがある。まず、今回はセルフモビライゼーションについて解説する。セルフモビライゼーションとは、あまり聞き慣れない言葉だが、どんなものなのだろうか。
「モビライゼーションというのは、関節の可動域の限界を超えない範囲で、細かい振動を繰り返し行うことによって起こる筋弛緩反応を利用して、筋肉の疲れや緊張を解くものです。一般的には施術者が対象者の関節を手技で動かしますが、それを自身で行うのがセルフモビライゼーションになります」(中野さん)
本来、療法士がモビライゼーションを施術する場合は、関節可動域の改善と関節機能障害による痛みの軽減を目的とする。これに対して中野さんが考案したセルフモビライゼーションは、モビライゼーションによって筋肉が弛緩する効果に着目して、短縮した筋肉の伸張や、緊張からの解放、疲労の軽減に応用したものだ。
「ランニングやウォーキングの終了後に入念に静的ストレッチをして、その後に入浴しても、体はまだ緊張状態にあることがほとんどです。また、筋肉が緊張状態あることは、自分ではなかなか気づかないのです。セルフモビライゼーションを行って関節が緩んでくると、自分ではリラックスしていたつもりでも、想像以上に脱力できていなかったことに気がつくはずです」(中野さん)
運動後も緊張状態が続くと、筋肉や腱がその長さで固まってしまい、次の運動の時に伸びにくくなる。それがケガにつながることになる。
「筋肉の緊張状態が続くというのは、車のエンジンに例えるとアイドリング状態にあるということです。余計なエネルギーが使われているので、深い眠りにつけず、疲労を残したまま翌朝を迎えることもある。十分に疲労から回復させるのも、ケガの予防には大切です」(中野さん)
では、筋肉を緊張状態から解きほぐしてやるには、どのようなエクササイズを行えばよいのだろうか。