エースコック社長「体の半分は即席麺」でも健康。その秘けつは?
<特別編>危機を乗り越えてきた即席麺の歴史~エースコック 村岡寛社長インタビュー
二村高史=フリーライター
日本で培ったノウハウを新興国で活かす

エースコック全体の売り上げの中で、今は約半分が海外の売り上げだそうですね。エースコックでは1993年に他社に先駆けてベトナムに進出していますが、その現状と成算について教えていただけますか。
村岡さん 即席麺の売り上げは、世界全体で1000億食、うち日本は55億食に過ぎません(2014年、袋麺とカップ麺を合わせた数字、世界ラーメン協会推定)。確かに日本では品質がよく魅力的な商品が続々登場しているのですが、世界全体を考えればマーケットは小さいというしかありません。
一方、経済の発展とともに人口が増加して食糧のニーズが増えている新興国では、マーケットは日々成長していますが、品質や製品開発の点ではまだまだです。そこで、こうした発展途上の国において、日本で培ったノウハウを活かした商品開発をしていきたいと考えたのです。この決断もまた、新しいものにどんどん挑戦したいという社風と関係しているのかもしれません。
実は、現在のベトナムの即席麺業界は、さきほど申し上げた1987年当時の日本をさらにひどくしたような状態に陥っています。即席麺の成長が鈍ってきているために、どこのメーカーもシェア争いに走り、安売りや他メーカーへの中傷も日常茶飯事です。
そんな今だからこそ、当時の日本と同じような取り組みをして、即席麺の安全・安心を軸に消費者に訴えていきたいのです。そしてもう一度、成長ラインに戻したいと考えています。
さらに、いずれはベトナムも高齢化していくでしょう。またそこで、日本で培ったノウハウが応用できると思っています。
最近では、発展著しいミャンマーにも進出を開始しました。ご承知のように、ミャンマーでは長く軍事政権が続いたため、国産の即席麺はほとんどありません。大半がタイからの輸入品で、味もトムヤムクンなどタイのものばかり。ミャンマー独自のものが流通していないのです。輸入品の質が悪いということではないのですが、ミャンマーの人たちが家庭で慣れ親しんできた味を即席麺で味わえないのですから、これではハピネスが届けられません。
私たちの使命は、各国の食文化に根ざした即席麺を届けることだと考えています。可能ならば、今後はベトナム、ミャンマー以外でも、ハピネスを届けていきたいと思います。
私は体の半分が即席ラーメンでできている
最後に、社長の健康法を教えていただけますか。先日テレビ番組に出演なさったとき、「私は体の半分が即席ラーメンでできている」と話されていましたが、そんなに食べていらっしゃるのですか。
村岡さん そうですね(笑)。昼食は、ほぼ毎日、即席麺かスープはるさめを食べています。それに加えて、妻が大量に買い込んでくる野菜ジュースを持参して飲んでいます。現在65歳ですが、いたって健康で、検査で引っかかったことはありません。
お酒をよく飲むもので、家で食べるときの朝食と夕食は、妻にしっかりと管理されており、とくに野菜をたっぷりと食べています。
朝は基本的に和食で、ごはん、味噌汁に魚や卵のおかずを付け、野菜、くだもの、ヨーグルトも。晩ごはんも、肉・魚と野菜のおかずを中心にしていますが、晩酌は欠かしません。サプリメントは飲んでいません。
それに加えて、会社では仕事でしばしば即席麺の試食をしており、ほぼ全製品を食べています。確認のためなので全量を食べるわけではありませんが、トータルではかなりの量になるでしょう。
試食のチェックポイントは、「コンセプトの通りの製品に仕上がっているかどうか」という点です。例えば、「強い味にした」というのに、味がぼやけていたらいけません。試食でダメ出しをすることはありますが、「ごまの量を増やすとしっかり食べられるのではないか」など、建設的なアドバイスをするようにしています。どれも、現場の人たちがそれなりに考えて作ったものですからね。
また、月に1回の役員会で出てくるのは、すべてエースコックの新製品です。これも試食会を兼ねています。
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- お酒と即席麺の生活でも健康診断で異常なし