エースコック社長「体の半分は即席麺」でも健康。その秘けつは?
<特別編>危機を乗り越えてきた即席麺の歴史~エースコック 村岡寛社長インタビュー
二村高史=フリーライター
健康志向の商品が定着するのは間違いない
現在、健康志向の即席麺が各社から発売されていますが、この動きは将来も続いていくとお考えでしょうか。
村岡さん 高齢化はどんどん進んでいきますから、健康志向の商品は一定の割合で定着するのは間違いないでしょう。事実、これまで即席麺は若い人しか食べませんでしたが、今では私のような60代の人間もよく食べています。

例えば、1995年の阪神・淡路大震災がきっかけで、保存食としてカップ麺を買い込んだ方も多かったのですが、それと同時にミドル世代の人にカップ麺が見直されたという事実があります。震災をきっかけに久しぶりにカップ麺を食べて、「意外においしいじゃないか」と感じた方が多かったのでしょう。
当時、私がたまたまスーパーに立ち寄ったとき、カップ麺の棚の前にいた年輩の方のこんな会話を耳にしました。
「カップ麺に味噌味もあるなんて、初めて知ったよ」
「うん。このあいだ、久しぶりにカップ麺を食べてみたら意外とおいしかった!」
50代以上の方々には、昔のカップ麺に対するチープなイメージが残っていたのでしょう。しかし、現在の商品はどれも格段においしいものばかり。何かのきっかけで改めて食べる機会さえあれば、きっと見直していただけるはずです。
避難所にはスープを捨てる場所がない!
2011年の東日本大震災の際には、避難所に当社の即席麺を送ったのですが、そのときに現地の栄養士さんからこんな話を聞きました。
被災した方々から、減塩のカップ麺がほしいという声がいくつも寄せられたというのです。というのも、「血圧が高くて塩分を控えなくてはならないので、全部スープを飲むと塩分過剰になってしまう。普段ならスープを残せばいいのだろうけど、避難所にはスープを捨てる場所がなく、トイレも限られている。ぜひ、全部飲みきっても塩分が過剰にならないカップ麺がほしい」ということなのです。
これは特殊なケースではありますが、「塩分を気にせずに、スープを全部飲み干す満足感がほしい」というニーズは、高齢化の進展とともにこれからも増えていくと考えられます。
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