「女性向けカップヌードル」が成功した理由
第5回 日清食品 「カップヌードルライトプラス」
二村高史=フリーライター
カップ麺を食べている姿を、ほかの人に見られるのは格好悪い
女性に受け入れられるために、どのような工夫をなさったのでしょうか。
佐橋さん まず、カップ麺を食べる女性がなぜ少ないのか、理由を考えました。
その結果、「自分の目」と「他人の目」があるという結論に達したのです。
自分の目というのは、「カップ麺は、カロリーが高く、栄養バランスが悪い」という固定観念。それをぬぐい去ることができないので、カップ麺に手が伸びないのです。他人の目というのは、「カップ麺を食べている自分を、ほかの人から見られるのは格好悪い」という意識です。
この2つの問題点を同時に解決することを、開発のコンセプトに据えました。
まず、「カップ麺は、カロリーが高く、栄養バランスが悪い」という固定観念を覆すために、カロリーを低く抑え、野菜をもりもり食べるイメージのあるメニューをいろいろと考えました。そうして、フレンチやイタリアンの店での女子会をイメージできるメニューとして、「ラタトゥイユ」と「 バーニャカウダ」を選んだのです。
「カップ麺を食べている自分を、ほかの人から見られるのは格好悪い」という意識には、パッケージを大胆にイメージチェンジすることで対処しました。
化粧品を得意とするデザイナーにパッケージデザインを依頼。従来はカップ麺をスーパーやコンビニの袋に隠すように持ち帰っていた若い女性も、これなら他人に見せて歩きたいと思えるデザインを目指したのです。

もちろん、イメージだけではなく、食べ物として中身がきちんと理解でき、おいしさが伝わることも大切です。カップの上面にシズル写真を入れたのも、実はこれまでにない新しい試みです。実際にどんな食べ物なのかがすぐにわかるので、安心感が持てるのです。
女性は理屈でものを食べない
私たちの開発のベースには、「食べ物は機能から入ることはない」という考え方があります。なぜなら、いくら健康的だといわれても、食べておいしくなくては受け入れられないからです。とくに女性にはその傾向が顕著です。私もそうですが、女性は理屈でものを食べることをしません。左脳ではなく、右脳をまず働かせるのです。
ですから、女性をターゲットにする以上、「おいしさ」は何よりも重要視しました。販売店の棚に置かれた状態では、まず素敵なパッケージでお客様の右脳に働きかけ、「おいしそう!」だと感じ取っていただけるようにしました。そうして棚から手に取ってもらえたら、今度は左脳に働きかけて「低カロリー、野菜たっぷり」ということを数字で示すようにしたのです。