「女性向けカップヌードル」が成功した理由
第5回 日清食品 「カップヌードルライトプラス」
二村高史=フリーライター
健康志向のカップ麺には2つの方向性がある

佐橋さん 「ライト」は、一定の成功を収めましたが、私たちはこう考えました。
「カップヌードルがカップ麺ブランドとして、さらにシェア拡大を実現するには、人口の半分を占める女性にも受け入れられなくてはならない」
そこで女性にポジティブなイメージを持ってカップ麺を食べて欲しいとの思いで開発したのが「ライトプラス」です。
2015年に発売した「ライトプラス」は、「カップヌードル」というブランドの商品ではありますが、女性を意識して大きく変えました。味は当初「ラタトゥイユ」「 バーニャカウダ」の2種類で、2016年3月に「海老のビスク」が加わりました。
ラタトゥイユは野菜の旨みが溶け込んだトマトベースのスープ、バーニャカウダは、アンチョビやオリーブオイルの風味が香るミルキーなスープ、海老のビスクは海老と野菜の旨みが溶け込んだクリーミーなスープで、どれも女性に人気の南ヨーロッパの味を再現しています。
ターゲットは絞られるが、リピート率が高い
発売当初、「カップヌードルと別のものが出た」という印象を受けたのですが、それは狙い通りだったわけですね。
佐橋さん 健康志向のカップ麺には2つの方向性があると考えています。1つはミドルエイジ向けで、もう1つは女性向け。同じヘルシーでも、求めているものが違います。
カップヌードル好きのミドル世代が、「ちょっと健康も意識しないといけないな」と考えたときに、「ライト」はそれに応える商品になっています。40~60代はカップ麺のコアなファンがいる世代です。「やっぱり、カップヌードルのあの味でないと!」という人向けの商品といってよいでしょう。
ただし、女性に対してはそれで十分ではありません。そこを狙ったのが「ライトプラス」だったのです。「ライトプラス」では女性の購入率が65%です。この数字だけでも15ポイントプラスであるのに加えて、この商品は代理購入の率は少ないと考えられますので、女性の比率はかなり高いと認識しています。
SNSでは、「198kcalでこんなにおいしいならば、いつも食べてもいい」「カップ麺を食べたのは何年ぶりだろう!」という投稿をよく目にしました。
うれしかったのは、子育て中のお母さんにも喜んでいただけたことです。「やっと子どもが寝た」というときに、独身時代に親しんだフレンチやイタリアンの味を3分でおいしく再現できるのが受けたのでしょう。
また、リピート購入率が高いのも「ライトプラス」の特徴です。ターゲットは絞られていますが、深く受け入れられていると認識しています。