これでスープを飲み干せる!「ストレスのない減塩」を実現した技術とは?
第4回 エースコック「だしの旨みで減塩」、東洋水産「マルちゃん ホットヌードル 塩分オフ」
二村高史=フリーライター
「味が薄くておいしくない」をどう克服するか

なるほど、そこで「減塩」を中心に据えたのですね。実際の開発に当たってはどのようなご苦労がありましたか。
鈴木さん 減塩のラーメンが求められていたのは以前からわかっていましたが、技術的に難しいことが多かったのです。塩分オフの商品は、カップ麺に限らず「味が薄くておいしくない」という声が多いため、それをどうやって克服するかが課題でした。
そこで、まず開発のコンセプトとして据えたのが、「塩分は少ないけれども、1食食べて味も量も満足できる」というもの。おいしさの追求はもちろんのこと、おなかも満足できるというのがポイントです。
ミニカップにすれば、塩分の摂取量は当然少なくなりますが、それでは1食分として満足できません。また、塩分を控えるためにスープを残すというのも、どこか満足感を欠いてしまいます。
このため、「ホットヌードル 塩分オフ」は、めん重量60gで一般の縦型カップと同じ大きさにしました。
肝心のスープですが、そもそもラーメンというのは塩味がおいしいものです。それをただ減らしてしまうと、「先味」が弱くなるという問題点が生じてきます。「先味」とは、口に入ったときにすぐ感じる味のことです。つまり、塩分が少ないとインパクトが足りず「薄いな」と感じてしまうのです。これでは、いくら健康によくても商品として売れません。
ポイントは「スパイス感」
「後味」を強めるにはだしを強くすればいいのですが、「先味」をどうするかに頭を悩ませました。
最終的には、スパイス感と風味で補うのがいいという結論に達しました。スパイス感を強めるために加えたのが、にんにくやこしょうなどです。風味を増すためには、ポーク、チキン、魚介のエキスを加えています。
試作を50回ほど繰り返し、期間は半年ほどかかりました。口にした瞬間に「塩分オフだけどおいしいな」と感じていただける商品になったと思います。
「日本食品標準成分表2015」では、中華スタイル即席カップめん(油揚げ)の食塩相当量が6.9g(100g当たり)でしたから、30%オフになりました。これまで、塩分が気になってスープを残していた方も多かったのですが、ラーメン好きの人の中にはスープを残らず飲みたいという方もいらっしゃいます。その点、この商品ならば、全部食べても2.8gですから、コンセプト通りに満足が得られます。