これでスープを飲み干せる!「ストレスのない減塩」を実現した技術とは?
第4回 エースコック「だしの旨みで減塩」、東洋水産「マルちゃん ホットヌードル 塩分オフ」
二村高史=フリーライター
日本が生んだ世界的な発明品「即席ラーメン」。多くの人に親しまれている大ヒット商品に今、「健康志向」という新しい波が起きている。特集では各社の健康志向への取り組みを紹介していく。
今回登場するのは、「減塩」を大きな柱の一つに据えているエースコックと東洋水産の2社だ。「塩分控えめの薄味はおいしくない」という業界の“常識”に対して、両社はどのように立ち向かい、新商品を開発してきたのだろうか。前半ではエースコックの取り組みを、後半で東洋水産の取り組みを紹介する。

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「塩分が気になるのでスープを残している」人が多かった
2013年に「だしの旨みで減塩」シリーズを立ち上げたエースコック。同シリーズは、国立循環器病研究センターの「かるしお」認定を取得、さらに減塩の比率を40%オフに上げるなど、積極的に減塩を進めている。これまでの取り組みと開発における工夫を、マーケティング部 商品開発グループI サブグループマネージャーの兼子幸士さんにうかがった。
エースコックは、「スープはるさめ」や乳酸菌入りのカップスープなど、健康を意識した商品を数多くラインアップしています。最初はどのような取り組みから始まったのですか。

兼子さん 当社が健康を意識した最初の商品は、1983年に発売した「わかめラーメン」でした。高級即席めんがブームになっている時期でしたが、あえて健康感のある食材として認知されていたわかめに注目したのです。これはかなりのヒット商品となり、現在でも販売が続いています。
本格的に健康志向のカップ麺に乗り出したのは、2013年3月に発売した「だしの旨みで減塩」シリーズです。当初は、「鶏炊きうどん」「小海老天そば」の2品目でしたが、現在は「中華そば」「丸鶏だし醤油ラーメン」「香味野菜タンメン」を加えた5品目がラインナップされています。
健康志向といっても、カロリーオフやノンオイル、ローカーボなどいろいろな方向があります。減塩を選んだのはどういった理由からですか。
兼子さん 減塩は昔からの課題であり、血圧を気にするシニア世代の方々からの要望もありました。「カップめんは好きなのだが、塩分が気になるのでスープを半分残している」という声を多くいただいていました。
カロリーが気になるといっても、カップラーメンのカロリーは、せいぜい500~600kcalくらい、縦型カップなら300~400kcalくらいです。一般の食事に比べて、取りすぎを気にする数字ではありません。その点、やはり気になるのは塩分ということになるのでしょう。
ただし、ラーメンのスープをおいしく減塩にするのは、技術的に難しかったのです。お客様としては、減塩のカップ麺を求めていたものの、あきらめていたというのが実情だったと思います。
しかし、当社のスープ技術が進歩したことによって、今ならばおいしい減塩の即席めんを提供できると判断して、販売に踏み切ったのです。この商品のコンセプトは「だしの旨みで減塩」です。だしで減塩できるということは、以前から新聞やテレビでも紹介されていましたので、これをカップ麺でも応用できるのではないかと考えました。
おいしくないと買ってもらえないのはもちろんですが、それ以前に「おいしそうに見える」ことが重要です。そのために、商品名に「だし」というキーワードを付け、パッケージにも印刷したわけです。