日経グッデイ

革新的「健康家電」ウォッチ

実売5万円近くする“超高級”美容ドライヤーの秘密

第6回 ダイソンの超高級ドライヤー「Dyson Supersonic」(後編)

 安蔵 靖志=家電ジャーナリスト

今、“健康家電”が盛り上がりを見せている。日本の人口の高齢化は待ったなしで進んでおり、ミドル以上の健康志向もこれまでになく高まっている。そんな“健康意識層”に向けて、各社が競うように新製品を投入している。そこで本連載では、「健康」をテーマに最新の家電製品の魅力に迫る。今回は前回に引き続き、ダイソンの超高級ドライヤーを紹介する。「大風力」や「静音性」を実現したダイソンのテクノロジーに迫る。

モーターをハンドル部に内蔵することで重量バランスを工夫

DDM V9と一般的なドライヤーの搭載モーターを手に持って説明するダイソン氏
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 前回、Dyson Supersonicの大きな特徴の1つである「風温」について詳しく紹介した。今回は、「大風力」や「静音性」などの特徴を実現しているダイソンのテクノロジーに迫る。Dyson Supersonicの肝となるのはやはり、掃除機や扇風機、ハンドドライヤーなどで培ったダイソンオリジナルのモーター技術だ。

 ジェームズ・ダイソン氏も、「Dyson Supersonicの技術のカギとなるのはハンドル部分に搭載している、今までにはなかった全く新しいモーターです。非常に小さくて回転速度が速いため、製品がとても軽量になりました」と話している。

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オックスフォード大学でのテストの模様

 ダイソン氏は「とても軽量」と話していたが、製品の重さ自体は約618gあり、500~600g前後のモデルが主流の国内製品に比べると決して軽い方ではない。旅行などに持っていくコンパクトタイプなら300g前後のモデルも少なくないくらいだ。しかし風量は最大で毎分約2.4m3と、多くのモデルが毎分1~1.5m3程度(毎分1.9m3、2.0m3といったモデルもある)の中で群を抜いている。

 実際に持ってみると、重さの割に取り回しがしやすいように感じられる。その秘密は重量バランスにある

毎分約11万回転と段違いの高速回転

Dyson Supersonicの内部構造が分かるようにした展示モデル
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ハンドル部にDDM V9が内蔵されている
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 「オックスフォード大学で人間工学を研究しました。ヘアドライヤーを持ち上げたり、20分ほど使ったりするとどのような負担がかかるのか、どのような筋肉が使われているか。どうすれば負担を軽減できるか研究したところ、やはり重要なのは軽量化でした。そして、適切な場所にモーターを収めることも重要です。そこで本体上部ではなく、ハンドル部分に収めることにしました」(ダイソン氏)

 そこで新たに開発したのがダイソン最小・最軽量のブラシレスDCモーター「ダイソン デジタルモーター V9(DDM V9)」だ。一般的なヘアドライヤー用モーターが毎分約1万5000回転なのに対し、DDM V9は毎分約11万回転と段違いの高速回転を実現。これによって一般的なモーターの半分程度にまで軽量化したという。

一般的なヘアードライヤーに比べて重心バランスがいいため腕に負担がかからないとダイソン氏は話す
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 「一般的なヘアドライヤーはモーターが上部に収められているため頭でっかちで、その重さによって腕に負担がかかります。Dyson Supersonicはハンドル部分にモーターを収めたため重量バランスがよくなり、腕に負担をかけずに使えるようになりました」(ダイソン氏)

扇風機と同様に周囲の空気を巻き込んで風量をアップ

モーターからの風が送風口から出る際に背後の空気を引き込み、送風口周囲の空気を巻き込むことによって、風量を約3倍にまで増幅する
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 Dyson Supersonicは他社のドライヤーに比べて風温が低いが、それを補うのが毎分約2.4m3の大風量だ。この風量は新開発のDDM V9モーターと、ダイソンならではの“羽根のない扇風機”「Air Multiplier(エアマルチプライアー)」の技術が生かされている。

 DDM V9は13枚羽根のインペラー(モーターに付属する羽根車のこと)を搭載しており、これが毎分約11万回もの高速回転をすることで毎秒約13リットル(毎分約0.78m3)の風量を生み出す。ただし、これでは最大約2.4m3/分の約3分の1しかない。そこでエアマルチプライアーの技術が生かされる。

 エアマルチプライアーは送風口から出る空気が周囲の空気を巻き込むことによって、元の風量の約6倍もの大風量を実現するというもの。Dyson Supersonicの場合はモーターからの風が送風口から出る際に背後の空気を引き込み、送風口周囲の空気を巻き込むことによって、約3倍の風量を実現するという。つまり毎秒0.78m3×3=2.34≒毎秒2.4m3というわけだ。

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モーターをハンドル部に内蔵し、吸音材などを使うことによって静音化を図っている

 風量もさることながら、Dyson Supersonicは音が比較的静かなのも大きな特徴だ

 「なぜ静かなのかというと、ハンドル部分に入っているファンの回転数が毎分約11万回転とかなり高いため、動作音が高周波になって人間の耳にはほとんど聞き取れないからです。モーターをハンドルの中に配置し、さらに吸音材も入れるなど、元々静かなモーターの音をさらに消す工夫をしています」(ダイソン氏)

 騒音値は公表していないようだが、実際に最大風量で試してみたところ、確かに風量の割にはうるさく感じなかった。というより、ほとんどが吸気口から吸い込まれる風の音で、モーター音はほぼ感じられなかった。

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左からディフューザー、スムージングノズル、スタイリングコンセントレーター、滑り止めマット

 送風部に装着するツールとして、なめらかな風で優しく乾かす手ぐし向けの「スムージングノズル」、ブローしたい箇所だけに風を集める「スタイリングコンセントレーター」、髪のカールやウェーブを崩さないように優しい風を送る「ディフューザー」の3種類が付属する。各ノズルはマグネット式になっており、簡単に着脱できるのも大きな特徴だ。これらを装着すると風量が抑えられるため風切り音が大きくなってしまう。ツールを装着しない場合は、テレビを見ながらなどの「ながらドライ」もしやすそうだ。

「低温+大風量」は好みが分かれるが、デザイン性は抜群

 筆者の場合は短髪なので「低温」かつ「大風量」で早く乾かせるのは大歓迎だが、長髪の人の場合、大風量だと毛先が踊ってしまって乾かしにくいということもあるだろう。もちろんその場合は風量を抑えればいいのだが、「大風量」と掛け合わせることで「低温」でも「速乾」が可能になるという点は注意したい。温度を細かく調節できるのは魅力的なので、実際に他社のモデルと使い勝手を比べてみるのがいいかもしれない。

 やはり他社にはない魅力の一つが特異なデザインだろう。パッと見て目を引くデザインと高級感はさすがダイソンという感じだ。掃除機などでは色合いが「おもちゃっぽい」ということで好まない人もいるようだが、落ち着いた色合いの「ホワイト/シルバー」はどの家でも使いやすく、「アイアン/フューシャ」はいかにもダイソンといった感じの色合いが目を引く。実際、遠目からでもDyson Supersonicだと分かりやすいこともあってか、ヘアサロンなどでも導入が増えているようだ。

発表会の模様。デザインが目を引くこともあってか、ヘアサロンで見かけることも多くなった
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 他社の高級ヘアドライヤーの数割増~約2倍以上の価格の製品なので、性能で比べるというよりも嗜好品、趣味の品に近いかもしれない。使い勝手は一般的なヘアドライヤーと異なるので、使いこなすには慣れが必要な部分もあるかもしれないが、「持つ喜び」は確実に感じさせてくれる。