日経グッデイ

革新的「健康家電」ウォッチ

高温だと髪に穴があく!? 髪を傷めない“熱くない”ドライヤーとは

第5回 ダイソンの超高級ドライヤー「Dyson Supersonic」(前編)

 安蔵 靖志=家電ジャーナリスト

今、“健康家電”が盛り上がりを見せている。日本の人口の高齢化は待ったなしで進んでおり、ミドル以上の健康志向もこれまでになく高まっている。そんな“健康意識層”に向けて、各社が競うように新製品を投入している。そこで本連載では、「健康」をテーマに最新の家電製品の魅力に迫る。今回紹介するのは、ダイソンが今年春に発売した実売5万円近い超高級ドライヤーだ。革新的な掃除機などでおなじみのダイソン初の美容機器ということで話題になったので、ご存じの方も多いのではないだろうか。

「Dyson Supersonicヘアードライヤー」を持つ創業者のジェームズ・ダイソン氏
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 ここ数年、白物家電で“高級なもの”が流行っている。数年前から10万円を超えるような超高級炊飯器も人気だし、昨年には2万円を超えるトースター(バルミューダの「The Toaster」)が大人気になったことも記憶に新しい。この連載の最初で紹介したシャープの無水鍋も5万円もする高額商品だ。

 世の中では「なかなかデフレから脱却できない」などとよくいわれるが、“本当に価値がある”と考えるモノに対しては、消費者は高くてもお金を払うのだ。

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「Dyson Supersonic」の写真(スムージングノズルを付けた状態)。カラーは「アイアン/フューシャ」と「ホワイト/シルバー」の2色

 とはいうものの、今年4月に登場したダイソンのヘアドライヤー「Dyson Supersonic」にはさすがに驚いた。ドライヤーというと、安いものなら1500円程度から購入できるが、このDyson Supersonicの実売価格は4万8600円と、5万円近い!(税込、8月上旬時点) 創業者のジェームズ・ダイソン氏がデザインしたレザーケースが付属するモデル(税込5万9400円)も直販サイト限定で販売されている。

 この発表を聞いた人の多くは、「とてもドライヤーの価格とは思えない」と思うと同時に、「いったいどんな製品だろう」とその秘密を知りたくなった人も多いのではないだろうか。

今、高級な美容ドライヤーが人気

 女性の中にはご存じの方もいらっしゃると思うが、この高級ドライヤーという分野はここ数年、高価格商品がヒットを飛ばしているという、とてもホットなジャンルになっている。

 例えば、リュミエリーナが発売する「ヘアビューザー」というドライヤーは、高いものは3万円を超える高額商品にもかかわらず、髪を傷めないということで一部で「魔法のドライヤー」などと呼ばれ、クチコミなどで評判になり人気商品となっている。また、パナソニックの高級ヘアドライヤー「ナノケアシリーズ」(9月発売予定の最新モデル「EC-CNA98」の実売価格は2万2000円程度)なども人気だ。

 このように、美容ドライヤーの注目が高まる中、掃除機に革命を起こしたダイソンが超高級ドライヤーを投入したわけだ。これまでの高級ヘアドライヤーを遥かに超える高額モデルにはどのような秘密が隠されているのか。今回、詳しく紹介していこう。

風の温度を抑えて髪へのダメージを軽減

 Dyson Supersonicの大きな特徴は4つある。1つめは温度を細かく制御して風温を抑えることで「髪を傷めないこと」、2つめは、独自開発のモーターにより「圧倒的な大風力」を実現したこと、3つめは重量バランスを工夫したことで「腕に負担をかけずに髪を乾かせること」、そして4つめは「音が静かなこと」だ。

 温度を抑える(温度を一定に保つ)機能として、Dyson Supersonicには「インテリジェント・ヒートコントロール」機能が搭載されている。これは次のようなものだ。送風口付近にガラス球サーミスター(温度センサー)を搭載し、毎秒約20回の頻度で温度を計測する。これを基にマイクロプロセッサーがヒーターの温度を制御し、一定の温度に保つというもの。

 本体背面に操作ボタンを配置しており、風温と風速の設定が可能。風温は4段階(温風3段階+送風)で、「速乾/スタイリング」が約78℃、「標準」が約62℃、「低温/スカルプモード」が約45℃。風速は「スピード乾燥」「レギュラー乾燥」「スタイリング」の3段階が選べる。ボタンを押したときだけヒーターを使わずに送風する「コールドショット」機能も備えている。

送風口付近に搭載したガラス球サーミスター(温度センサー)が毎秒約20回の頻度で温度を計測し、マイクロプロセッサーに送られる
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 実際に使ってみると、温度が抑えられていることはすぐに体感できる。「速乾/スタイリング」は約78℃なので、手に当ててみると十分に熱いのだが、100℃を超える他社のドライヤーに比べると熱すぎない。

 ヘアードライヤーはイヤなニオイがすることが多いが、それも感じられなかった。というのも、ドライヤーのイヤなニオイは空気中のホコリが燃えて発するもののため、ホコリが燃えない温度なら発生することはない。これは同社のファンヒーター「Dyson Pure Hot+Cool」などにも採用している特徴となっている。

高い熱が加わると、髪の表面にたくさんの穴ができる

 ダイソン創業者でチーフエンジニアのジェームズ・ダイソン氏は熱が髪に与えるダメージについて次のように説明した。

 「髪に高い熱が加わると、髪の表面にたくさんの穴ができてしまいます。濡れた髪には水がたくさん含まれていますが、高熱を与えると水滴が破裂して表面に穴が開いてしまう。そのため、どのように熱をコントロールするかが重要です」

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高熱を加えると「髪の表面に穴が空いてしまう」と説明するダイソン氏

 タンパク質の塊である卵の白身が一定の温度(約60℃以上)で白く固まるように、タンパク質が多く含まれている髪も「熱に弱い」と言われる。このため、高温のドライヤーは髪によくないと言われるのだが、今回のダイソンの説明では、「髪のタンパク質が熱で変性する」のが問題ではなく、水滴が破裂するのを防ぐのがポイントということだ。

 ちなみに、ある家電メーカーの担当者に聞いたところ、「髪のタンパク質が変性するのは140℃前後で、毛髪のダメージ(タンパク質変性)はドライヤー程度では生じません。ただし、ヘアアイロンは危険です。特にストレートアイロンの場合は200℃や180℃など高い温度のモデルが非常に出回っています。これらを毎日使うとかなり傷んでしまいます」という。

 筆者もDyson Supersonicを使ってみて、「手に当ててもそれほど熱く感じない」ことは魅力だと感じた。実際、通常のドライヤーの場合、風温が高いので頭皮もかなり熱くなってしまう。頭皮への熱ダメージを与えたくない、なるべく刺激を与えたくないという人には、低温で乾燥できる方がうれしい。

 明日公開する後編では、Dyson Supersonicの内部を詳しく見ていこう。