苦労した4つのポイント
特に苦労したのは、「ハイブリッドトレーニングの確立」「高出力と低刺激の両立」「体の動きを検知するモーションセンサーの技術開発」「良好な装着性の実現」という4つのポイントだったと筏井氏は語る。
順を追って説明していこう。最も困難だったのは、ハイブリッドトレーニングを効率的に行うための条件の確立だったという。
「自力運動に電気信号を組み合わせて筋肉を刺激するためには、どういった条件がいいのかを模索しました。どのようなタイミングで電気刺激を与えればいいのか。具体的には電気信号の周波数や投入するエネルギーの大きさをどの程度にするべきなのか。走っているときに骨盤はどのように動いているのかなど、さまざまな項目において研究を進めました。シミュレーションやモニタリング調査を進めながら、ハイブリッドトレーニングを効率的に行うためには、どういった条件が必要なのかを確立するのがとても困難でした」
2つめとして筏井氏が挙げたのが「高出力と低刺激の両立」だった。
「筋肉を鍛えるためには、強いエネルギーを鍛えたい筋肉に与える必要がありますが、入力の波形をどうするかで非常に苦労しました」(筏井氏)
いったいどういうことなのだろうか。
「筋肉を効率的に鍛えるためには、たくさんのエネルギーを入れなければなりません。しかし電圧を高めると投入エネルギーが大きくなる半面、ぴりぴりしたイヤな刺激が強くなってしまいます。お客様が不快な思いをせずに使っていただくためには、ピリピリする刺激を抑えた商品を出さなければなりません。そこで採用したのが、『低周波のタイミングで中周波をたくさんかける』ということでした」(筏井氏)
刺激を抑えながら、おなかに効果的なエネルギーを
専門的で分かりにくくなってきたが、こういうことだ。
筋肉を効率的に収縮させるためには、電気刺激の周波数が高すぎても低すぎてもいけないという。そこで導き出されたのが「40Hz」の低周波、つまり40分の1秒に1回の周期で電気信号を送り出すというものだった。
その周波数のままでより強く筋肉を収縮させようとすると、電圧を上げる必要があるのだが、それでは電気刺激が強くて不快感が増してしまう。そこで導き出したのが、より高い周波数の電気信号をまとめて送り出し、電圧を抑えたままでエネルギーだけをアップするというものだった。

40分の1秒ごとに1回だけなわとびを飛ぶのに比べて、40分の1秒ごとに3重飛びを1回すれば、効果は単純に3倍になる。そんなイメージだと分かりやすいだろうか。
「これによって、刺激を抑えながら効果的なエネルギーをおなかに与えられるようになりました。エネルギーが大きくなるため、バッテリーを内蔵するコントローラーは大きくなりましたが、お客様が負担なく使えるように構造上で工夫しました」(筏井氏)
ビューティトレーニングは約1時間の充電で約3回(1回あたり約30分)の使用が可能。コントローラー部は確かに決して小さくはないが、腰の後ろに収納して邪魔にならずに使えるようになっている。
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