日経グッデイ

革新的「健康家電」ウォッチ

ジョギングしながら自動で筋トレ! これぞ現代の大リーグボール養成ギプス?

第3回 パナソニック 「ビューティトレーニング」(前編)

 安蔵 靖志=家電ジャーナリスト

 今、“健康家電”が盛り上がりを見せている。日本の人口の高齢化は待ったなしで進んでおり、ミドル以上の健康志向もこれまでになく高まっている。そんな“健康意識層”に向けて、各社が競うように新製品を投入している。本連載では、「健康」をテーマに最新の家電製品の魅力に迫る。
 今回は、“ランニング・ジョギング時に効果的に筋力トレーニングができる”というパナソニックの「ビューティトレーニング」を紹介する。

 「ランニングブーム」などと呼ばれて久しい。2007年には東京マラソンが、11年には大阪マラソンがスタート。15年にはそれまでハーフマラソンだった横浜マラソンがフルマラソン化するなど、市民ランナーの目標の一つとなる大きなマラソン大会が数多く登場している。笹川スポーツ財団「スポーツライフに関する調査報告書」によると、ジョギング・ランニング実践する人の比率は2002年以降、ほぼ右肩上がりで推移しており、2014年のランナー人口は約986万人と推計されている。

ジョギング・ランニング人口は右肩上がり
ジョギング・ランニングの年1回以上の実施率の推移(笹川スポーツ財団「スポーツライフに関する調査報告書」(1998~2014))より
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 こうした状況を背景に、モチベーションを維持・向上させながらランニングやジョギング、ウォーキングを楽しむための家電製品やデジタルグッズが登場している。例えば、手首に巻いて活動量(歩数や歩行距離、消費カロリーなど)や睡眠状況などを計測してくれるリストバンドタイプの「活動量計」や、GPSで位置情報を計測しながら、ランニングのトレーニングを行える機器などが登場している。

ジョギングしながら、EMSで筋トレも!

 今回紹介するパナソニックの「ビューティトレーニング」は、ランニング・ジョギング時に効果的に筋力トレーニングができるという製品だ。筋肉にパルス(電気信号)を送って収縮させることで筋力強化を図る「EMS(Electrical Muscle Stimulation)」を用いたものだが、一般的なEMS機器に比べてより高い効果を発揮できるという。

パナソニックが2015年9月に発売した「ビューティトレーニング ES-WB60」(実勢価格2万6750円/税込み、7月上旬時点)
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 EMS機器というと、ある程度の年齢以上の人の場合は、テレビ通販などでよく登場する機器を思い浮かべる人も多いのではないだろうか。お腹などに巻いて電源を入れれば、腹筋が鍛えられ、ウエストが引き締まるというものだ。筆者は特に2000年前後に流行したように記憶しており、実際に筆者も購入して使っていたことがある。現在まで続くロングセラーになっているものの、「EMS機器はどのくらい効果があるのかよくわからない」というイメージを持っている人も少なからずいるのではないかと思う。

 念のため補足するが、EMS機器はおなか周りの引き締めやダイエットに役立たないわけではない。きちんと使いこなせば効果は期待できる。しかし、「手軽にダイエットできる」と考えてEMS機器に飛びついた人の多くが三日坊主で続かなかったこともあり、目に見える効果を得られなかった人がいたのではないかと筆者は推測する。

 そんなEMS機器を、家電の雄であるパナソニックが発売したのは昨年9月のこと。なぜパナソニックがEMSを?と不思議に思った人もいるかもしれない。このビューティトレーニングはどのようなコンセプトから誕生したのか。従来のEMSとは何が違うのか。どのような仕組みで筋力強化を図るのかについて迫っていきたい。

運動とEMSを組み合わせた「ハイブリッドトレーニング」

 パナソニックの「ビューティトレーニング ES-WB60」(実勢価格2万6750円/税込み)は、有酸素運動をしながらEMS機器で筋肉に電気刺激を与える「ハイブリッドトレーニング」を手軽に行える機器だ。

 ハイブリッドトレーニングというのはセンサーによって体の動きを検知し、筋肉に動作の逆の抵抗となる電気刺激をかけることで、単純に運動するだけよりもずっと効率的に筋肉を引き締められるというもの。筋肉が伸びている状態のときに電気刺激で収縮させることで、通常時よりもさらに筋肉に負荷をかけられるというわけだ。単純なEMS機器の場合は、センサーの動きを察知した動きはしないので、ビューティトレーニングの方がより高い効果が期待できる。

 ビューティトレーニングは久留米大学医学部・志波直人教授のチームとパナソニックが共同で開発した。志波直人教授のチームとJAXA(宇宙航空研究開発機構)が行った長期実験によると、装置を装着しなかった場合に比べて装着した場合の方が肘屈伸運動において高い効果が見られたというデータが出ている。

 ビューティトレーニングを製品化した狙いについて、製品企画を担当したパナソニック コンシューマーマーケティングジャパン本部 スモールアプライアンス商品化 ビューティ・ヘルスケア商品課 主務 岡橋藍氏は次のように語る。

製品企画を担当したパナソニック コンシューマーマーケティングジャパン本部 スモールアプライアンス商品化 ビューティ・ヘルスケア商品課 主務 岡橋藍氏
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 「消費者の間で健康的なボディーラインを作る意識が高まっていることに着目しました。筋トレと有酸素運動を両方すると効率的に引き締められるのですが、忙しくてなかなかできないという人も多いと思います。特に女性の場合、皇居周りなどを走るのはいいのですが、筋トレは苦痛という人が少なくありません。そこで筋トレと有酸素運動をそれぞれ行うのではなく、有酸素運動しながら筋トレを勝手にしてくれることで引き締めようというのがビューティトレーニングの狙いです」

筋肉の伸びる部分を検知して電気刺激で引き締める

 ビューティトレーニングはバッテリーを内蔵するコントローラーユニットと、体の動きを計測するボディモーションセンサー、おなか周りの筋肉に電気刺激を与える電極コードパッドとサポーターという構成になっている。サポーターはおなか周りに合わせてS、M、Lの3サイズを用意しており、Sはウエスト55~67cm(おへそ周りサイズは59~71cm)、Mは64~81cm(同68~85cm)、Lは79~93cm(同83~97cm)に対応する。

ビューティトレーニングの装着イメージ

 現在はLサイズでおなか周りのサイズが足りない人向けに、サポーター用延長ベルトプレゼントキャンペーンも行っている(2017年3月31日購入分まで、応募期間は2017年4月7日23時59分まで)。

 装着は難しくない。サポーターに電極コードパッドを装着し、サポーターの中央にある目印をおへそに合わせておなか周りに巻く。ボディモーションセンサーを体側(体の側面中央部)に取り付ければ装着完了だ。

 ハイブリッドトレーニングモードは「ランニング」と「ウォーキング」、「ツイスト」の3つを用意しており、ボディモーションセンサーを用いずに通常のEMS機器として利用する「センサーオフ」モードの4つを用意している。

 ランニングとウォーキング、ツイスト運動で動きが異なるため、これらのモードを選んでスタートし、強さを1から50までの段階で調整する。ボディモーションセンサーが検知するのは「ひねり」の動きだ。

 「歩いたり走ったりすると生じる体のひねりを検出します。体をひねるときに伸びる筋肉に向けて、電気刺激で縮めるような力を加えます。運動を続けるとそれに逆らうように筋肉を動かそうとするので、(マンガ『巨人の星』に登場する)『大リーグボール養成ギプス』みたいな感じになります。より負荷をかけられている中で運動するため、より筋トレ効果がアップするという仕組みです」(岡橋氏)

ひねりをしっかり検知して的確に刺激を与えてくれる

 筆者も実際に装着して試してみた。ランニングは疲れるしヒザに負担がかかるので、ウォーキングモードを選択。装着して自宅の周囲をウォーキングしてみた。

ビューティトレーニングを装着したところ

 歩くたびに、つまり左右の足を交互に前に出して体にひねりが加わるたびに、腹筋の伸びる部分に電気が流れるのがよく分かる。的確に伸びる腹筋を狙い撃ちで収縮させてくれるので、効果がしっかりと体感できるのがうれしい。

 興味深かったのが、信号待ちのタイミングだ。車道の信号がそろそろ赤になるかな……と横を向くと、その瞬間のわずかな動きも検知してしっかりと電気を当ててくれる。ウォーキング中に信号で止まった場合、単なる「待ち時間」になりがちだ。しかしその場で軽くツイスト運動をすればEMSによる引き締め効果が(わずかかもしれないが)得られる。

 ビューティトレーニングは通常のEMS機器としての使い方もできるが、ランニング……とまではいかなくとも、ウォーキングやツイスト運動を組み合わせることで効率的にダイエットやおなか周りの引き締めに役立つのではないかと感じた。

EMS機器に対するネガティブイメージを払拭したい

 冒頭でも少し触れたように、ある程度の年齢以上の人の場合はEMS機器に対して、「そんなに効果があるのかな…」とネガティブなイメージを持っている人も少なからずいるように思う。

 パナソニックもその点は意識しているようだ。

 「なかなかお伝えするのが難しいのですが、ただ電気刺激を与えるのではなくて筋肉が伸びたときにかける『ハイブリッドトレーニング』だからこそ、より意味があるのです。『運動と組み合わせて前向きに使うとより効果が出ます』ということで、今までのEMSとは違うイメージを打ち出したいと考えています」(岡橋氏)

ダイエットに近道はあっても“ワープ”はない!

 ランニングやウォーキング、スイミングなどでダイエットに成功したという人は多い。しかし、成功した人の多くは、ただ運動するだけでやせたわけではない。ダイエットやトレーニングに対する意識が高まっているため、摂取すべきカロリーや栄養バランスなどに対する意識も高く、運動に加えて食事制限も並行して進めることで効率的にダイエットしているのだ。逆に、どちらかでも欠けると効果は出にくくなってしまう。

ビューティトレーニングのコントローラー
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 運動もせず、食事制限もせず…という人がEMS機器を1日10~20分かける程度では、目に見える効果はなかなか得られない(効果がないわけではないが…)。つまり、運動とEMSを組み合わせて使うのがとても重要なポイントとなるのだ。そういう意味で、ランニング大会に出展して貸し出すなど、実際の体験を通じて意識の高い消費者に向けて製品をアピールしていると岡橋氏は語る。

 「ランナーの方は結構面白がっていただけますね。ジムに来る方もそうです。ジムで運動をされる方は30分や1時間など、できるだけ短時間で効率よく運動したいという人が多いのです。そこで『効率的に運動できる』という点に興味を持っていただけるようです」(岡橋氏)

 何にせよ、こういった機器は継続することが重要だ。

 「愛用者からは、『毎日の日課になっている犬の散歩のときなどに着けたら続けられる』という声や、『これをきっかけに歩くようになった』『通勤の1駅分を歩くようになった』という声をいただいています。『ベルトの穴が変わってくると、励みになって続けられる』といった声も社内から上がっていました」(岡橋氏)

 明日公開の後編では、ハイブリッドトレーニングを実現する技術的な仕組みなどについてより詳しく紹介していきたい。