日経グッデイ

革新的「健康家電」ウォッチ

5万円もする鍋が人気! 「簡単すぎて料理の腕が上がらない」電子鍋とは?

第1回 シャープ 「ヘルシオ ホットクック」(前編)

 安蔵 靖志=家電ジャーナリスト

今、“健康家電”が盛り上がりを見せている。日本の人口の高齢化は待ったなしで進んでおり、ミドル以上の健康志向もこれまでになく高まっている。そんな“健康意識層”に向けて、各社が競うように新製品を投入している。そこで本連載では、「健康」をテーマに最新の家電製品の魅力に迫る。初回に登場するのは、「簡単すぎて料理の腕が上がらない」と言われる無水調理鍋だ。

 テレビ、冷蔵庫、洗濯機、パソコン――。“家電”はどのメーカーの製品を買っても大した違いはない。そう思っている人が多いかもしれない。確かに、テレビに代表される“黒物家電”は、各社の製品の違いが目立たなくなっている。だが、“白物家電”と呼ばれる生活家電分野は違う。この分野ではここ数年、大きな地殻変動が起こっている

 例えば、「ルンバ」に代表される掃除ロボットはここ数年で一気に各家庭に広まった。10万円超の超高級炊飯器を各社がラインアップするようになったのもここ数年の出来事だ。また、これまでにないユニークな製品も続々と登場している。例えば昨年、バルミューダという家電ベンチャーが出した2万円を超えるトースター「The Toaster」が人気を博したのをご存じの方も多いだろう。

 そんな盛り上がりを見せる白物家電で、特に注目なのが「体力維持・増進」や「食生活改善」「ダイエット」「睡眠改善」などさまざまな角度から健康を志向した“健康家電”だ。日本の人口の高齢化は待ったなしで進んでおり、ミドル以上の健康志向も今までになく高まっている。そんな“健康意識層”に向けて、各社が競うようにユニークな製品を続々と投入している。

 そこで本連載では、「健康」をテーマに最新の家電製品の魅力に迫っていきたい。

5万円もする鍋が人気、そのワケは?

ヘルシオ ホットクックKN-HT99A。「電気調理鍋」の一種で、水を加えずに調理する「無水調理」が可能。実売価格は4万8000円前後(4月末時点)
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 連載の初回に登場するのがシャープの「ヘルシオ ホットクック」。驚くほど簡単に煮込み調理ができる「無水調理鍋」だ。

 健康に気を使っている人の中には、「タジン鍋」などのように水を加えずに調理する「無水調理鍋」を愛用している人もいるのではないだろうか。食材の水分だけで調理できるタジン鍋は、食物の栄養をもらさず摂取できるうえ、油の使用も控えられるなどのメリットもあり、ここ数年人気を得ている。

 これを家電で実現し、しかも“無水”だから焦げやすくなるところを、「混ぜながら煮る」ことで焦げずに調理できるのがホットクックの大きなポイント。食材を入れてセットしたら、後は放っておくだけで料理が完成するので、忙しい子育て家庭に優しく、しかも食材の栄養を余さず取れるという健康面でも嬉しいスグレモノだ。

 実際、筆者も試したが、ビックリするほどおいしいカレーが、材料を鍋に放り込むだけでできた。ある家電量販店の店員が、「あまりにも簡単なので、料理の腕が上がらないのが難点」と話していたが、それもあながちウソではないと感じている。

 このホットクックは実売価格で5万円弱と、決して安くはない。それにもかかわらず、機能性が受け、ホットクックは人気商品となっている。シャープによると、「おかげさまで大変ご好評をいただいており、計画比1.5倍で増産しています」(広報)という。

「健康」をテーマに進化してきた「ヘルシオ」シリーズ

 シャープというと、最近は、液晶パネル事業や太陽光発電事業の失敗によって経営不振に陥り、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下となったことばかりが取り上げられているが、実は、国内では、ユニークな商品を次々と生み出している数少ないメーカーの一つだ。最近もモバイル型ロボット電話「RoBoHoN(ロボホン)」や「蚊取り」機能を搭載した空気清浄器を発表して話題になった。

 そんなシャープの、「食事」と「健康」を結びつけた家電ブランド、それが「HEALSIO(ヘルシオ)」だ。液晶テレビの「AQUOS(アクオス)」、除菌・消臭などに効果があるとされる「プラズマクラスター」と並んで、日本の消費者に広く認知されている3大ブランドの一つとなっている。

シャープが2004年9月に発売した「ウォーターオーブン ヘルシオ AX-HC1」。「水で焼く。21世紀調理器、誕生。」というキャッチコピーは衝撃的だった
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 ヘルシオシリーズは2004年に発売したスチームオーブンレンジ「ウォーターオーブン ヘルシオ」(初号機は電子レンジ機能のない、過熱水蒸気調理機能だけを搭載したモデルだった)に始まり、2012年10月発売の「ヘルシオ炊飯器」、2013年4月に発売したスロージューサーの「ヘルシオ ジュースプレッソ」、茶葉を挽いて「粉茶」を楽しめる2014年4月発売の「ヘルシオ お茶プレッソ」など、数多くのシリーズを展開している。

 それぞれ「オーブンレンジ」、「炊飯器」、「スロージューサー」、「コーヒーメーカー」など、ベースになる、もしくは似たようなコンセプトの製品はあった。しかしそれを「健康」というテーマの下で見直して消費者に訴求することで、ヘルシオブランドは着実に成長を遂げてきた。

2015年4月に発売した「お茶プレッソシリーズ」最新モデル
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 そこに2015年11月に加わったのが、今回紹介する「ヘルシオ ホットクック」。冒頭でも少し触れたが、「電気調理鍋」の一種だが、タジン鍋などのように水を加えずに調理する「無水調理」が可能な点が大きな特徴となっている。では、ヘルシオシリーズとはどういったコンセプトなのか、ヘルシオ ホットクックはどのような経緯で生まれたのか。ホットクックを利用することで、どんなライフスタイルを実現できるのかについて迫っていきたい。

食材や調味料の水分だけで調理する「無水調理」を実現

 「ヘルシオ ホットクック」は、食材や調味料の水分だけで調理する「無水調理」が可能な電気鍋だ。内蔵する「まぜ技ユニット」によって自動的に中の食材を混ぜることによって、食材を入れてボタンを押すだけの簡単操作で栄養価を損なわずに料理を作ることができるという。ボタンを押して「放っておく」+「料理(クック)」で「ホットクック」、さらに「栄養価を損なわずに食べられる=ヘルシー」ということで「ヘルシオ ホットクック」という名前が誕生した。

 ヘルシオ ホットクックの商品企画を担当したシャープ スモールアプライアンス事業部 チームリーダーの中島優子氏は、「元々自動で調理できる鍋を作りたいという思いで開発をスタートしました」と語る。

ヘルシオ ホットクックの商品企画を担当したシャープ スモールアプライアンス事業部 チームリーダーの中島優子氏
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 「同時に、その鍋に『ヘルシオ』というブランドを付けたいという思いがありました。ヘルシオは『健康』と『おいしさ』をテーマにしたブランドです。この2つを両立できる鍋とはどのようなものかを考え、着目したのが『無水調理』です」(中島氏)

 無水調理というと、ムスイの「無水鍋」や愛知ドビーの「バーミキュラ」、北アフリカで生まれた「タジン鍋」などが有名だ。その調理方法は健康的でおいしいということで人気となっている。食材が持っている水分や調味料の水分だけを使って調理するため、栄養素を損ないにくく、おいしさを閉じ込めることができる。しかし機密性の高い鍋で水分を逃がさずに調理するのがキモのため、火加減の調節が難しい。混ぜたくても頻繁にふたを開けるわけにもいかない。もちろん、長年愛されている調理方法なのだから、慣れてしまえば普通に調理できるはずだ。

 「食材をまぜる機構も我々の技術にあったので、ふたを取らずに上手にまぜながら加熱をすればうまくいくのではないかと考えました。やってみるとかなりおいしいものができるので、どんどん開発を進めていきました」(中島氏)

ほとんど水を使わずにゆでることで栄養素が残りやすい

 筆者は娘のお弁当作りや夕飯など日常的に料理をするが、無水調理で、実際に調理をしたことはなかった。「無水調理カレー」というのは有名なレシピの一つかと思うが、他にはどのようなレシピがあるのだろうか。

 「よく作られるのはゆで野菜などです。例えばほうれん草をお湯でゆでると、葉酸など水に溶ける栄養素が出てしまいます。ホットクックを使って、ほうれん草を洗ったときに付いた水分だけで無水調理すると、栄養素が逃げにくいのです」(中島氏)

 シャープの調べによると、ホットクックで無水調理した場合、大根はビタミンCが約1.5倍、ほうれん草の葉酸は約1.8倍、マグネシウムは約1.6倍多く残るという。さらに魅力的なのが煮物だ。

野菜など食材に含まれる水分を活用して調理するため、ビタミンCや葉酸など抗酸化作用のある栄養素をより多く残せるという(シャープの製品情報サイトより)

 「大根などの煮物の場合は、醤油やお酒、砂糖などを混ぜた調味液の水分は使うものの、水は一切加えません。たっぷりのだしで炊くよりも栄養素が多く残ります。さらに無水調理の究極の一つはカレーです。ルーだけ入れて、あとは食材から出た水分だけで調理します。水を入れる代わりに野菜をたっぷり入れるので、それだけ野菜をたくさん食べられます。健康増進のためには1日350g以上の野菜が必要といわれていますが、なかなかそれだけ食べることはできません。野菜不足を解消しやすくなるのも無水調理のいいところです」(中島氏)

驚きの「無水カレー」、ホテルの味が簡単に実現

 筆者は実際にヘルシオ ホットクックを使っていくつかの料理を作ってみた。レシピに合わせて食材や調味料をセットし、調理メニューを押してスタートボタンを押せば、後は待つだけで料理ができあがる。本当に放っておくだけでできあがるという印象を受けた。

 特に驚いたのが「無水カレー」だ。タマネギに加えて、筆者が普段カレーを作るときには入れることのないトマトをふんだんに使うのが大きな特徴。野菜と鶏肉、その上にカレールーを置いてふたをし、メニューを選んでスタートを押すだけで、「まったく何もせず」にカレーを作ってくれる。

レシピの通りにタマネギやトマトなどの野菜を敷き詰め、その上に鶏肉を載せていく
カレールーを載せてふたをし、調理メニューを選択して「スタート」ボタンを押す

 できあがりもみごとだった。他のメニューでは「水の代わりに結構お酒を使うなぁ…」と思うようなものもあったが、無水カレーの場合は野菜の水分だけで、調味料の水分すらまったく使わない。それでいて、できあがりは水分をたっぷりと含んでいてサラサラとしていた。トマトをたっぷり使っていることもあり、普段筆者が作っている、ジャガイモやにんじんなどがゴロリと入っている家庭的なカレーとは違う、ホテルのレストランなどで出てくるような味に思えた。そのあたりは好みが分かれるところかもしれないが、より多くの野菜を取れるのはうれしい点だろう。

できあがったところ。水を一切使っていないのに、できあがりはさらっとしていた。野菜をたっぷりと摂取できるのはうれしい

 5月2日に公開する後編では、引き続きヘルシオ ホットクックの魅力、開発の経緯や苦労について紹介していきたい。