運動不足の人は「転倒」と「遅れてくる筋肉痛」に注意!
第2回 いきなり体を動かしたときに起こりがちなトラブルとは
塚越小枝子=フリーライター
全速力で走る、ジャンプする…瞬発系の動きは特に危険
では、どんな運動が特に危険なのだろうか。

「短距離走やテニス、バドミントン、ジャンプを必要とする球技など、瞬発系の動きは、体の衰えた中高年がいきなり始める運動としてはあまり向きません」(櫻庭さん)。第1回でも述べたように、筋肉には速筋(瞬発的に大きな力を発揮する白い筋肉)と遅筋(長時間、力を維持する持久力にかかわる赤い筋肉)があり、瞬発系の動きにかかわる速筋の方が加齢とともに衰えやすいからだ。
さらに、中高年の場合、筋肉の衰えに加えて、内臓疾患が隠れている可能性もある。動脈硬化を起こしやすい生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症など)を持っている人は特に、自覚症状がなくても心臓に血液を送り出す血管(冠動脈)がもろく・狭くなっている可能性がある。その状態で心肺に急激な負荷をかけると、心臓が酸欠(虚血)状態となり、最悪の場合、突然死に至ることもある。
運動を始めるときは、できればメディカルチェックを受け、“ならし運転”が必要だということを、肝に銘じておきたい(予防については第3回で紹介予定)。
では、ぎっくり腰やアキレス腱断裂は?
さて、運動不足と、ぎっくり腰やアキレス腱断裂、肉離れなどのトラブルとの関連はどうだろうか。これらについても櫻庭さんに聞いてみた。
「ぎっくり腰(急性腰痛症)は、じっとしている状態から急に無理な動きをしたときに起こる急性の腰痛です。運動時に限らず、日常生活でも起こり得ますし、日頃よく運動している人でも起こります。運動不足との関連は特にないでしょう」(櫻庭さん)
では、アキレス腱断裂や肉離れはどうだろう。
「アキレス腱断裂や肉離れは、運動不足によって筋肉が硬くなったり、動きが鈍くなったりしていることが要因にはなり得ます。ただ、急に運動したからといって特別なりやすいわけではありません。定期的にスポーツをしている人の間でも高い頻度で見られます。実は運動習慣のある私も、1月下旬にテニスをしていて、決して無理していないのに、あっという間にアキレス腱を断裂しましたから(苦笑)」
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