1日に卵3個と肉200g これが「うつ消しごはん」の基本
『うつ消しごはん』の著者・藤川徳美さんに聞く(第3回)
柳本操=ライター
ベストセラー『うつ消しごはん』の著者である精神科医の藤川徳美さんは、近年増加するうつ病やうつ病予備群の人たちの不調の原因は、日々の食事・栄養摂取が偏った「質的栄養失調」の影響が多い、という。うつっぽい、とまでいかなくても、日々「だるい、重い、しんどい」と感じている人は、たんぱく質を補い、糖質過多を改善することで元気になれる、と藤川さんは話す。最終回の今回は、「心も体も元気になる!」ための食事法の始め方について聞く。ポイントとなる肉、卵、プロテインのとりかたなどを、具体的に紹介していく。

第1回、第2回とお話を伺い、たんぱく質をとる量を増やし、糖質の量を減らすこと、そして女性は鉄をとることによって心身を立て直すことができる、という先生の治療方針についてよく理解ができました。
そこで最終回では、実際に先生がクリニックでどのような食事指導をされているかを教えていただき、食事の参考にしたいと思います。まずは、「たんぱく質」からお願いします。
藤川さん 1日に食べ物からとるべきたんぱく質の量は、大人の場合、体重1キロ当たり1g以上、つまり50~70gほどが目安となります。とはいっても、いちいち食材とにらめっこして計算するのは大変なので、わかりやすくご説明するために、私は、
◎1日に卵3個以上+肉200gをとってください
とアドバイスしています。これを守っていただければ、必要なたんぱく質量を満たすことができます。
●卵は完全栄養食品
まず、卵は、必須アミノ酸を十分量含んでいるのでたんぱく質摂取にはとても効率が良い。それだけでなく、ビタミンやミネラルなどの栄養素も豊富に含むため、「完全栄養食品」と呼んでもいい食材です。肉よりも安価なので、日々の食卓にも登場させやすいです。
卵にはレシチンという脂質が豊富ですが、レシチンの構成要素であるコリンは、脳内の神経伝達物質であるアセチルコリンの材料となります。認知症やうつ病は、アセチルコリンの不足や減少が原因と指摘されており、心の健康のためにも卵は積極的に食べたい食品です。
なお、「卵はコレステロールを多く含むため、1日1個まで」と言われていた時代もあります。しかし、その常識は覆され、今はむしろ複数個食べたほうがいい、と言う人も増えています。肉が苦手という患者さんも、卵なら取り入れやすいようです。
●肉のほうが魚より効率的に必要な栄養を補える
肉と魚のどちらがよいか、と言われると、単位容積当たりのたんぱく密度が魚よりも高い肉のほうが、効率的にたんぱく質を摂取できます。鉄分というメンタルに重要な栄養素をしっかりとるという観点でも、赤身肉は鉄分が豊富なのでお勧めです。
牛肉にはたんぱく質と鉄分や亜鉛が、豚肉は、たんぱく質に加えてビタミンB群が豊富です。魚にも積極的にとりたい脂質(オメガ3)が含まれていますし、マグロやカツオなどの赤身であれば鉄分が豊富です。ランチには魚定食、夜は肉、というふうにとるのもいいでしょう。
食品名 | たんぱく質10gがとれる量 | 鉄分含有量 |
---|---|---|
鶏卵 | 約1.5個 | 約1.5個中1.5mg |
シジミ(水煮) | 64g | 64g中9.5mg |
鶏レバー | 53g(生) | 53g中4.8mg |
豚レバー | 50g(生) | 50g中6.5mg |
イワシ | 40g(まいわし・焼き) ※約小1尾(可食部) | 40g中1mg |
豚肉 | 49g(赤身・肩ロース) | 49g中0.6mg |
カジキ | 36g(めかじき・焼き) ※約1/2切れ | 36g中0.2mg |
アジ | 39g(まあじ・焼き) ※約1/2尾(可食部) | 39g中0.3mg |
牛レバー | 51g(生) | 51g中2mg |
イカ | 56g(するめいか・生) ※1杯の1/5(可食部) | 56g中0.1mg |
鶏肉 | 58g(もも・皮つき) | 58g中0.5mg |
牛肉 | 47g(和牛赤身・もも) | 47g中1.3mg |
牛乳 | 300g(約300mL) | 300g中0.1mg |
エビ | 51g(バナメイエビ・養殖・生) ※3~5尾 | 51g中0.7mg |
サケ | 51g(ぎんざけ・養殖・生) | 51g中0.2mg |
大豆 | 68g(黄大豆・ゆで) | 68g中1.5mg |
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