栄養ドリンクは疲労に効かない!?疲れ回避のための食の新常識
疲労の予防・改善に本当に効く飲み物、食べ物、サプリメントは?
塚越小枝子=フリーライター
たまった疲労を回復する手段は「睡眠」しかない(第2回「寝てもとれない疲れの原因は『いびき』だった!」参照)。しかし、食事や環境など生活の工夫で、できるだけ疲れにくくしたり、疲れの回復を助けたりすることはできる。一方で、私たちが疲れたときに頼りたくなる「栄養ドリンク」などが、むしろ疲れのもとになることも! 本当に効果的な疲労の予防・解消法とは何か? 東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身さんによる疲れ改善に関するアドバイスを2回にわたってお届けする。まずは「食」編。
疲れにくい人になるためにとりたい成分
■抗酸化成分はこまめにとる
疲労の原因に活性酸素による酸化ストレス、いわば「体のサビ」が大きく関わっていることは、すでにお伝えした通り(第1回「明らかになった疲労の正体!肉体疲労と頭の疲労は同じだった」参照)。日中、仕事や運動をしているときには、どんどん活性酸素が発生して体がサビている状態だ。そのため、それに対抗する抗酸化成分をとると、疲れにくい体をつくる上で力を発揮する。
抗酸化成分には、ビタミンA・C・Eをはじめ、コエンザイムQ10、カテキンやアントシアニンといった各種ポリフェノールなど、さまざまな種類がある。
ただ、ポリフェノールは代謝が早く、効果が持続しにくい。そのため「ポリフェノールのサプリメントなどを利用する場合、1回にたくさんとるよりも、1日数回に分けてこまめにとる方が効果的」(東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身さん)だという。
■抗酸化作用が持続するイミダペプチド
梶本さんがリーダーを務めた産官学連携の「疲労定量化及び抗疲労食薬開発プロジェクト」で、さまざまな食品中に含まれる抗疲労成分の効果を評価したところ、最も抗疲労効果が認められたのは「イミダゾールジペプチド」(以下、イミダペプチド)という成分だった。
このイミダペプチドは、鶏の胸肉などに多く含まれる抗酸化成分で、骨格筋や脳で再合成されてその場で抗酸化作用を発揮する。そのため、他の抗酸化成分に比べて、酸化ストレスに対抗し続ける持続力が高く、1日1回の摂取でも効果が期待できる。渡り鳥が長時間、疲れずに飛び続けることができるのは、羽を動かす胸肉にイミダペプチドが多く含まれているからなのだ。
「抗疲労プロジェクト」の検証実験結果から、1日当たり200mgのイミダペプチドを最低2週間とり続けると抗疲労効果が現れ、4週間摂取すると75%の人が疲労感の軽減を実感することが確かめられた。
「体にサビをつけにくくする、疲れにくくするという意味で、イミダペプチドは朝・昼に摂取するとより効果的でしょう」(梶本さん)
1日200mgのイミダペプチドは、鶏胸肉100g(鶏もも肉なら300g、ささみなら200gほど)で摂取できる。これ以外に、まぐろやかつおなどの回遊魚、豚肉や牛肉にもわずかながら含まれているそうなので、これらから合わせて1日200mgとれればよい。毎日、定量のイミダペプチドをとるには、サプリメントを利用するのも一法だ。