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疲れのマネジメント術

半年以上続くこの疲れ、もしかしたら「慢性疲労症候群」?

見えてきた「慢性疲労症候群」と脳の機能異常の深い関係

 塚越小枝子=フリーライター

CFSの歴史は米国の小さな町から始まった

 CFSという概念が生まれたきっかけは、1984年にさかのぼる。米ネバダ州の人口約2万人の町で、約200人に激しい疲労感とともに脱力、全身の痛み、思考力・集中力の低下などの症状が長く続き日常生活にも支障をきたすような深刻な体調不良の集団発生が起こったのだ。この事例を受けて、1988年に米国疾病予防管理センター(CDC)が組織した研究者グループによりCFSの概念が提唱され、対象者を調査するために診断基準がつくられた。

 日本では、1990年に日本内科学会で類似の症例が初めて報告され、91年より旧厚生省研究班が立ち上がり、病因・病態解明の研究がなされてきた。99年からは、内科医だけでなく脳科学、生物学、生化学、免疫学の専門家が研究班に参加して、疲労・疲労感の分子神経メカニズムの解明研究が進み、一般的な疲労のマネジメントにもテーマが広がってきた。

 このように研究は進んできたものの、これまで世界で用いられてきたCFSの診断基準は、CFSで共通して見られる症状の有無と他の病気の除外診断を組み合わせたものにすぎない。一般的な検査では異常が認められないため、慢性疲労を訴える人にとっては医療機関を受診しても診断書を書いてもらえないなど、十分な対応が得られる状況ではなかった。CFSの病態に見舞われている人は、周囲の人にも「誰もが日常生活で自覚する疲れを強く訴えているにすぎない」と思われるなど、誤解や偏見を招くことも少なくないのが現状だ。

見えてきた!CFSと脳の機能異常の関係

 ここで重要なのは、CFSの病態には明らかな脳の機能異常がかかわっており、決して疲れを強く訴えているだけではないということ。2000年以降、PET(ポジトロン・エミッション・トモグラフィー=陽電子放出断層撮影)-CTなど画像研究の進歩によって、従来のCTでは写らない脳内の炎症が見られるようになってきた。そしてCFSの患者のPET-CT画像を撮影した研究により、重症のCFS患者では、脳幹部を中心に、明らかに神経系の炎症が存在することがわかったのだ。

 さらに、脳幹部の中でも「視床」の炎症が強い人は全身の痛みを強く訴え(下の図の中央)、「扁桃体」の炎症が強いと認知機能の低下(図の左端)、「海馬」の炎症が強いと抑うつ症状を訴える(図の右側)など、脳の炎症が起こる部位と症状とが相関していることもわかってきているという。

◆PET-CT検査で明らかになった脳内神経炎症
◆PET-CT検査で明らかになった脳内神経炎症
[画像のクリックで拡大表示]
倉恒さんたちが渡辺恭良さん(理化学研究所)と共同で行ったPET-CT検査より(対象:慢性疲労症候群患者9名、健常者10名)。慢性疲労症候群患者で異常が見られる部位が赤、黄などで示されている。

 「現在は世界中でこれを追試していますが、脳の神経炎症に基づいてだるさや痛みなどの症状が出ているということが確かめられれば、特効薬の開発にもつながるでしょう」(倉恒さん)

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