日経グッデイ

疲れのマネジメント術

疲れ解消に効果のある7つの生活習慣と7つの成分

アンチ疲労効果が検証された7つの成分とは?

 塚越 小枝子=フリーライター

「だるい」「朝、起きられない」「休日にゴロゴロしても休んだ気がせず、疲れが残る」――気になる疲れの正体やその解消法を、疲労研究に25年以上携わる関西福祉科学大学教授・倉恒弘彦さんに聞くシリーズ。前回は疲労のメカニズムについて聞いたが、第2回のテーマは疲れを解消する方法。疲れをためにくくする生活習慣と成分について教えてもらった。

【食事】抗酸化力を上げ、バランス良く

米飯が良いのは、副食が豊かになるから。(©jedimaster 123-rf)

(1)麺類やパンより「米飯」がおすすめ!

 関西福祉科学大学教授・倉恒弘彦さんが大学生を対象に疲労の実態を調査した研究によると、朝食をとらない学生は疲労を強く訴え、重度疲労の学生は夜遅い食事の頻度が高い傾向が見られたという。疲れているときほど「忙しくて食事が不規則」「まともな食事をとっていない」といった悪循環は、思い当たる人も多いのではないだろうか。

 「米飯をしっかり食べている学生は、副食が豊かになるので、魚介類も摂取しており、n-6、n-3系の不飽和脂肪酸やマンガン、ビタミンなどの摂取量にも差が見られました」(倉恒さん)

 麺類やパンなどで済ませる食事では限られた栄養成分しか摂れないケースが多いが、米飯を規則正しくしっかり摂ると副食が豊かになるため、相対的に栄養バランスが良くなると考えられるという。

 米飯によって疲れそのものがとれるわけではないが、疲労回復を助けたり、疲れによって回復力が低下するのを抑えたりするという意味で、米飯は重要な鍵を握るという。

(2)ビタミンCなどの抗酸化成分をしっかり摂ろう

 私たちの体内では、食べたものをエネルギーに代謝する過程で「活性酸素」が生み出される。活動によって血中の活性酸素が増え、酸化ストレス(活性酸素により引き起こされる生体にとって有害な作用)が増えると、一時的に抗酸化力も上がるが、疲労につながるような作業や活動が長く続くと抗酸化力も下がっていく。疲れたときは体内の活性酸素が除去しきれず過剰になり、疲労を回復する力も下がるという悪循環に陥る。

 したがって、疲労予防や回復には、ビタミンC(アスコルビン酸)に代表される抗酸化物質を積極的にとって、抗酸化力の低下を補うことがすすめられる。

 ビタミンCの抗疲労効果を確かめる実験で、ラットに自重の8%の重りをつけてプールで泳がせたところ、通常のラット(疲労負荷をしていない)は約200秒で泳ぎ疲れて沈むのに対し、元々疲労を負荷したラットは約65秒で早く沈んだ。この疲労負荷するラットに事前にビタミンCを摂らせておくと、浮いていられる時間が160秒以上に延びたという(※1)。

 「ビタミンCは慢性疲労症候群の治療にも用いられます。急性の胃粘膜障害にならないよう少しずつ何回かに分けて、1日に合計3000mgの大量投与を行います」(倉恒さん)

抗疲労効果が検証できた成分にはどんなものがある?

 その他、これまでに科学的に抗疲労効果が検証できた物質には、次ページ表のようなものが挙げられる。忙しく疲れがたまるときほど、これらの抗疲労物質を含めて、栄養バランスのとれた食事をしっかりとることを心がけたい。

 多忙で食事に気を付けるのが難しい状況なら、サプリメントを活用するのも一策だ。

■疲労の予防・回復に効く成分
[画像のクリックで拡大表示]
理化学研究所 ライフサイエンス技術基盤研究センター 渡辺恭良センター長の研究を基に作成

【睡眠・休息】“まとめ休み”より“こまめな休息”

(3)寝る前1時間は脳を興奮させない

 疲労を回復させるには、睡眠・休息をとることが基本。毎日質の良い睡眠をとって、1日の疲れは1日ごとにリセットするのが健全な状態だ。問題は、疲れが翌日まで残ること。これには自律神経のはたらきが関係している。

 自律神経には交感神経と副交感神経があり、日中は脳を興奮させる「交感神経」が優位に、夜はリラックスさせる「副交感神経」が優位になる。しかし、強いストレスを感じていると自律神経のバランスが不安定になり、夜になっても交感神経のはたらきが下がらないままになってしまう。こうなると脳が興奮したまま、なかなか寝付けなかったり、浅く質の悪い睡眠となったりして、疲れが十分に回復できないという悪循環に陥る。

 「こうした自律神経の活動低下は、疲労感や睡眠、抑うつと関連していることが明らかになっています」(倉恒さん)

 自律神経のバランスを正常に保つため、寝る1時間前には交感神経を高めるような活動――たとえば、仕事のメールを打つ、テレビを見る、スマートフォンを見る、激しい運動をするなど――は避け、リラックスして過ごすようにしよう。

 ちなみに、平日はどうしても睡眠不足になるため、週末に長い睡眠・休息をまとめてとるという人も多いが、“まとめ休み”の効果はどうなのだろうか?

(4)1時間作業をしたら5分間の休息をとる

 まとめ休みについて倉恒さんは、「専門家の中にはまとめ休みに反対の立場をとる人もいますが、現実を考えると、休めないよりは、まとめ休みでもいいと思います」との意見。ただし、「毎日、適切な睡眠時間を確保する方が、より効率よく回復することは知っておいてください」と毎日の休息の重要性を強調する。

 日中の仕事などでも、「1時間同じ作業をしたら5分ほど休息をとるとよい」そうだ。仕事をスタートしてから55分後にアラームが鳴るようにタイマーをセットしておいて、アラームが鳴ったらトイレに立ったりお茶を入れたり、席を立って少しでも動くようにすると、末梢循環が良くなり、疲労の蓄積度が違ってくるという。

【対ストレス】ポジディブ思考で上手に対処

 そもそも、疲労のもとになるストレスをどの程度うまく処理できるかによって、その影響は大きく違ってくる。倉恒さんがすすめるのは次の2つだ。

(5)ポジティブシンキングを心掛ける

 何事も嫌々やるとストレスのもと。長くストレスを引きずると神経・免疫・内分泌系の悪循環につながるので、嫌なことをやらされたときは「成長するために与えられた試練」だと都合よく解釈する、嫌なことはすぐ忘れる、などポジティブにとらえたほうが断然良い。

(6)笑う・泣く

 笑う、泣くなど感情を表に出すことで、ナチュラルキラー(NK)細胞の免疫活性が高まり、免疫力が上がることがわかっている。

 ストレスの原因を分析しても、現実には解決できない、離れることもできないことも多く、ストレスと感じることから離れるほうが得策の場合も少なくない。自分の中で物事のとらえ方を変えると、その影響は変わってくるかもしれない。

 最後に、運動をするならどんなものがいいか、また、多くの人が疲れ解消のためにやっている「アレ」の効果についても聞いてみた。

【運動】疲れにくい体をつくる

(©Sergejs Rahunoks 123-rf)

(7)ウォーキングなどの有酸素運動を行う

 ストレスを解消し心身をリフレッシュする意味では、適度な運動をして心地よい疲労を感じるのも一法だ。ウォーキングなどに代表される有酸素運動で末梢循環が良くなり、細胞の修復を早め、疲労回復効果があることが明らかになっている。

 また、乗馬にもこうした運動の効果とともにアニマルセラピー的な癒しの相乗効果が期待できるという(※2)。「乗馬を取り上げた研究では、馬と触れ合うことで気分の落ち込み、イライラ、不安感に差が出ることなどがわかっています」(倉恒さん)。

 ただし、重い疲労のときに無理して運動をすると、かえって疲れてしまうので、日頃の軽い疲労のリセットや、そもそも疲れにくい体をつくるために運動習慣を持つと考えよう。

みんなもやっているアレの抗疲労効果は?

 一般の人がどのような疲労回復法を行っているのか、倉恒さんたちが大阪府民1219人(15~65歳)を対象に行ったアンケート調査(※3)によると、最も多くの人が日常生活の中で疲労回復効果を実感しているのは「入浴」だった。

 「入浴はマッサージ効果と温熱効果が得られるので、通常の疲労の場合、高い疲労回復効果が期待できます。ただし、入浴にもエネルギーが必要なので、重度の疲労の場合はかえって疲れてしまうこともあります。自分の疲労の状態を見極めましょう」(倉恒さん)

 また、同調査で疲労回復効果が高いと思われたものは「笑い」「アニマルセラピー」「アロマセラピー(香り)」など。

 香りについては、ネズミに負荷を加えて疲れさせるとネズミの活動性が落ちてくるが、その疲れたネズミに緑の香りをかがせると活動量が増加するという研究報告や、サルに緑の香りをかがせて単純作業をさせると作業能率が落ちにくいという研究報告もある。疲労に伴い活動が下がってくる脳の前帯状回(ぜんたいじょうかい)という部分が活性化して、活動が下がりにくくなるという。

 「疲労の回復には、動物との触れ合いでも、香りでも、自分が好きなものでなければ効果はありません。色々な疲労解消法を試して、自分に合ったものを取り入れることが大切です」(倉恒さん)

 これまでは疲労のメカニズムはあまりわかっていなかったため、疲労回復方法の効果は、経験に基づいて判断するしかなかった。しかし、研究が進み、客観的に疲労を測るバイオマーカー(生物学的指標)も徐々に開発されてきた(詳しくは次回紹介)。これからは、酸化ストレスや自律神経などの状態を計測して、本当に疲労が回復しているのか効果を見ながら、自分に合った疲労回復法を見つけられる時代がやってくるだろう。それほど遠いことではなさそうだ。

●参考文献
※1 "Fatigue Science for Human Health", Watanabe, Y., Evengard, B., Natelson, B.H., Jason, L.A., Kuratsune, H., Springer
※2 「馬介在療法の科学的効果」(「畜産の研究」第65巻第1号 2011年)
※3 生活者ニーズ対応研究:疲労および疲労感の分子・神経メカニズムとその制御に関する総合研究より

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倉恒弘彦(くらつね ひろひこ)さん
関西福祉科学大学健康福祉学部教授、東京大学特任教授
上西一弘(うえにし かずひろ)さん

1987年大阪大学大学院医学系研究科博士課程修了。2003年より現職。同年より大阪市立大学客員教授。2009年より東京大学特任教授。厚生労働省「慢性疲労症候群に対する治療評価と治療ガイドラインの作成」研究班代表研究者、日本疲労学会理事などを務める。著書に『危ない!「慢性疲労」』(共著、NHK生活人新書)など。