疲れ解消に効果のある7つの生活習慣と7つの成分
アンチ疲労効果が検証された7つの成分とは?
塚越 小枝子=フリーライター
みんなもやっているアレの抗疲労効果は?
一般の人がどのような疲労回復法を行っているのか、倉恒さんたちが大阪府民1219人(15~65歳)を対象に行ったアンケート調査(※3)によると、最も多くの人が日常生活の中で疲労回復効果を実感しているのは「入浴」だった。
「入浴はマッサージ効果と温熱効果が得られるので、通常の疲労の場合、高い疲労回復効果が期待できます。ただし、入浴にもエネルギーが必要なので、重度の疲労の場合はかえって疲れてしまうこともあります。自分の疲労の状態を見極めましょう」(倉恒さん)
また、同調査で疲労回復効果が高いと思われたものは「笑い」「アニマルセラピー」「アロマセラピー(香り)」など。
香りについては、ネズミに負荷を加えて疲れさせるとネズミの活動性が落ちてくるが、その疲れたネズミに緑の香りをかがせると活動量が増加するという研究報告や、サルに緑の香りをかがせて単純作業をさせると作業能率が落ちにくいという研究報告もある。疲労に伴い活動が下がってくる脳の前帯状回(ぜんたいじょうかい)という部分が活性化して、活動が下がりにくくなるという。
「疲労の回復には、動物との触れ合いでも、香りでも、自分が好きなものでなければ効果はありません。色々な疲労解消法を試して、自分に合ったものを取り入れることが大切です」(倉恒さん)
これまでは疲労のメカニズムはあまりわかっていなかったため、疲労回復方法の効果は、経験に基づいて判断するしかなかった。しかし、研究が進み、客観的に疲労を測るバイオマーカー(生物学的指標)も徐々に開発されてきた(詳しくは次回紹介)。これからは、酸化ストレスや自律神経などの状態を計測して、本当に疲労が回復しているのか効果を見ながら、自分に合った疲労回復法を見つけられる時代がやってくるだろう。それほど遠いことではなさそうだ。
※1 "Fatigue Science for Human Health", Watanabe, Y., Evengard, B., Natelson, B.H., Jason, L.A., Kuratsune, H., Springer
※2 「馬介在療法の科学的効果」(「畜産の研究」第65巻第1号 2011年)
※3 生活者ニーズ対応研究:疲労および疲労感の分子・神経メカニズムとその制御に関する総合研究より
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関西福祉科学大学健康福祉学部教授、東京大学特任教授

1987年大阪大学大学院医学系研究科博士課程修了。2003年より現職。同年より大阪市立大学客員教授。2009年より東京大学特任教授。厚生労働省「慢性疲労症候群に対する治療評価と治療ガイドラインの作成」研究班代表研究者、日本疲労学会理事などを務める。著書に『危ない!「慢性疲労」』(共著、NHK生活人新書)など。