
近視の人が多い日本では、若い女性を中心にコンタクトレンズが広く使用されている。使い捨てタイプも豊富に発売され、従来に比べずいぶん気軽に使えるようになった。
しかし、コンタクトレンズは薬事法で「高度管理医療機器 クラスIII」に分類される医療機器。人工血液透析の機器、血管内に留置するステントなどと同じく「不具合が生じた場合、人体への影響が大きい」医療機器であることを忘れてはならない。
実際に、コンタクトレンズに関連した目の障害は年々増加しており、重い眼障害も少なからず発生している。原因の大半は「不適切な使用」とされる。気軽に使えるコンタクトレンズだが、使用法を誤れば、深刻な事態を招きかねない。
ケアを怠ると角膜に緑膿菌やアカントアメーバが入り込む
最近の調査によると、わが国のコンタクトレンズ使用者は推定1500万~1800万人。実に国民の7~8人に1人が使っている計算になる。使用者の7割が女性で、10~20歳代が50%を占める(*1)。若い女性が、メガネをかけたくないという理由でコンタクトレンズを選ぶケースが多いようだ。コンタクトレンズを使うと“外見力”が5割アップするというアンケート調査の結果も報告されている(*2)(関連記事「コンタクトレンズで“外見力”は5割増し」)。
しかし、コンタクトレンズを使うということは、メガネにはない眼障害のリスクを背負うことでもある。特に注意したい眼障害は、角膜に起こる角膜上皮障害や角膜感染症だ。
日本眼科学会が作成した「コンタクトレンズ診療ガイドライン第2版」(*3)によると、角膜上皮障害は最も高頻度に見られるコンタクトレンズの合併症。角膜の一番外側を覆う角膜上皮が剥がれ、強い痛みを感じる。痛みは特に起床時の目を開ける時に強い。病変が角膜上皮よりも奥の角膜実質に進むと角膜潰瘍と呼ばれる状態となる。すぐに眼科医の治療を受ける必要がある。原因は、装用時間が長すぎて角膜に負担がかかることやレンズの汚れであることが多い。
最も重症とされるのは、角膜上皮障害を経て起こることが多い角膜感染症だ。角膜が白く濁り、ついには孔があき、最悪の場合失明に至ることもある。同ガイドラインによると、「一番起こしたくない合併症」ともいわれ、近年急激に増えているという。
この記事の概要
