「明確な答えを出さねば」というプレッシャーが息苦しさを生む
フリーライター 武田砂鉄さんに聞く「あえてクリアにしないという選択肢」【3】
森脇早絵=フリーライター
その「答えがない」ことを許すみたいな。そういう心の余裕が自分に欠けていたかもしれないと、今回お話を伺って気付きました。
武田 ビジネス書では、章の終わりに「この章のポイント」として箇条書きで5つのメソッドなどが並んでいたりしますよね。あるいは、「仕事で勝つ46の方法」みたいなタイトルの本がいくつもありますね。ああいう箇条書き的な方法論って、とにかく貧相だと思っています。「46の方法」という本を読むよりも、そこに書かれていない別の方法を模索したほうがいい。「これだけが答えとは限らない」と考え続けることが大事ではないでしょうか。「こういうふうであるべき」というものを極力外したいんです。
武田さんの著書を読んだり、お話を聞いたりすると、たぶん武田さんは世の中を変えるとか、問題提起するために発言しているのではなくて、言いたいから言うとか、やりたいからやるというシンプルな構図ではないかと感じるんです。でも、多くの人は目的があるからやるというふうに、常に目的や結果を求めてしまう。もっと自分の気持ちに正直に動いていいんじゃないかなと思いました。
武田 出版社に勤めているとき、書籍の企画書を出す時に、記入フォーマットにいろいろな項目がありまして、その中に「なぜ、今か」という項目がありました。僕はいつも未記入でした。「そんなの分かんない」って思いながら。
怠惰といえば怠惰ですが、このように「『なぜ、今、これか』を説明しなきゃならない」という場面って様々なところにありますよね。テキスト化して明示しなければ前に進まないことがたくさんあると思いますが、「なぜこうなのか」という問いに答えられない状態なのにスタートを切ってみる、これでもいいんじゃないかと思います。みんな、クリアなスタート地点を求めすぎですよね。明確な答えを出さなければいけないというプレッシャーから脱することが、息苦しさから脱することにもつながるのではないでしょうか。
(聞き手:森脇早絵=フリーライター、写真=菅野勝男)
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