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男のストレス事情

落ち込んだ気分を回復させる誰でもできる方法

ストレスからの回復力「レジリエンス」の磨き方

 取材・まとめ:小泉なつみ=フリーライター

――海原さんがSNSを盛んに活用しているのも、自己表現の一環なのでしょうか。

 米国ハーバード大学にいらしたニコラス・A・クリスタキス教授は著書『つながり 社会的ネットワークの驚くべき力』(講談社)の中で、「“つながり”の多さが健康に影響する」と述べています。

 また、米国のある地域で行った研究では、がんの死亡率が貧困層ほど高い傾向にありました。これは金銭的な事情で検診を受けられないということもありますが、教育が受けられず医療情報が不足している、インターネットアクセスがなくネットワークが少ないといったことが原因だという分析もあります。今やSNSによる人と人の「つながり」は、ヘルスコミュニケーションにとっても大きな情報源といえるでしょう。

 レジリエンス向上のリソースとしても、TwitterやFacebookはオススメです。

 ただしのめりこまない、それだけを自分の唯一のネットワークにしない、時間を決めて使う、適度な距離感を保つ、投稿する前に自分の思いを客観的に見つめる、などが上手な使い方です。

 SNSの優れた点は、違う世界の友達を作りやすいところです。同じ業界の人としか接していないと視野が狭くなりがちですが、全く違った視点から話をしてくれる人がいると、悩みを客観的に見ることができるものです。

――そんな予防をする前に、もし心身症になってしまった場合はどうすればいいでしょうか。

 まずは体をケアしましょう。休んでおいしいごはん食べる、マッサージをしてもらうといったことから始めてみてください。もちろん精神科や心療内科に行ってもいいですが、自分に合う医者かどうかなんて初めてじゃわからないですよね。そうしたらかかりつけの歯医者でも内科でもいいので、話しやすいお医者さんに相談してみてください。その人に専門医を紹介してもらったほうが、闇雲に飛び込むよりもよっぽどいいと思いますよ。

うつの人に「治してあげたい」はNG

――一方で、周りの大切な人がうつになってしまった、なんてこともよくあります。そういったときに周囲はどんなことをしてあげるべきでしょうか。

 「元気づけることを言ってあげなきゃ」とか「助けてあげよう」などと思うのは相手の負担や心の重荷になります。周囲がしてあげられる最善策は、その人のそばにいることだけ。それも、本当にそばにいてあげることだけが助けではなく、「いつでもそばにいるよ」という態度が相手の重荷にならない支援といえます。

 また、うつになると買い物や電話などができにくくなるので、そういった手助けなども助かります。

 支援の仕方には「直接支援」「情報支援」「共感支援」「援助への期待への支援」の4種類があって、「いつでもそばにいる」という態度は「援助への期待への支援」になる。「困ったときあの人がいれば、最悪の状態をなんとか乗りきれる」と思えるだけで、それが支援になるのです。

*   *   *   *   *   *   *

 「いつもと違うルートで帰る」「本屋に行く」といった、ほんの少しの行動の変化が気分を変え、ストレスからの回復につながると教えてくれた海原さん。自分の心をワクワクさせる術を身に付けることは心身の健康のみならず、人生そのものを豊かにしてくれるはず。ちょっとクサクサしたなと思ったらそのサインを見逃さず、ぜひ“楽しみ発見”に活かしてみてほしい。

[画像のクリックで拡大表示]

『男はなぜこんなに苦しいのか』

(朝日新聞出版・朝日選書、780円+税)

 「優秀にみられるのに、実はアルコールに頼る毎日」「やたらと攻撃してくる上司がいる」「妻の機嫌がいつも悪い」など、心の不調を訴える男性たちの様々なケースを紹介。ストレスに強い自分になるための実践的な方法についても丁寧に解説している。

海原 純子(うみはら・じゅんこ)さん
医学博士
海原 純子(うみはら・じゅんこ)さん 東京慈恵会医科大学卒業、1986~2006年女性の為のクリニック所長、2006~2013年白鴎大学教育学部教授、2012年昭和女子大学国際学部客員教授、2008~2010年ハーバード大学客員研究員、2013年日本医科大学特任教授、2007~2012年厚生労働省「健康大使」。復興庁心のケア事業(2013-2014)統括責任者、復興庁県外自主避難者支援事業心のケア担当(2014-2015)、日本医科大学健診医療センターストレス健診外来担当。著書に『こころの格差社会』(角川書店)、『男はなぜこんなに苦しいのか』(朝日新聞社)などがある。

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