降圧薬は減らせる、やめられる
「高血圧性臓器障害」が出る前がチャンス! まずは毎日、血圧測定を
宇津貴史=医学リポーター
降圧薬は、一生飲み続ける薬─。多くの医師が患者にそう説明し、既に降圧薬を服用している人はもちろん、高血圧が気になる人にも広く信じられている考え方だ。しかし、高血圧患者に降圧薬の服用をいったんやめてもらい、血圧がどう変化するかを見た研究で、「降圧薬をやめても血圧が低いまま」の人が一定数いることが分かった。どういう人が降圧薬をやめやすいのか、取材を基に紹介する。
高血圧を指摘され、生活習慣の改善だけでは血圧が目標値まで下がっていないにもかかわらず、降圧薬の服用を拒む人がいる。理由としてよく耳にするのは「血圧の薬を飲み始めると、一生、飲み続けなくてはいけないから嫌だ」というものだ。しかし本当に降圧薬は、一度飲み始めたらやめられないのだろうか?
一定の条件下で降圧薬を「休める」人も

「そんなことはありません。降圧薬は中止できます」。こう断言するのは、朝日生命成人病研究所(東京都中央区)顧問で循環器内科医の芦田映直(てるなお)氏だ。同研究所は全国に先駆け、降圧薬の減量・中止へ向けた研究に取り組んだことで知られている。
芦田氏によれば、降圧薬を飲んで医師が「良し」とする血圧まで下げられた患者では2割弱が、降圧薬を中止した後、少なくとも1年間はその血圧を保てるという。5人に1人の割合だ。以下、少し詳しく見てみよう。
同研究所では20年ほど前、数カ月おきの高血圧診察を20年以上にわたって続けていた、106人のデータを解析してみた。すると17.9%(19人)の患者さんでは、「それ以上下げなくて良い」と医師が判断するレベルまで血圧が下がり(平均値124/79mmHg)、降圧薬をやめても、1年間、血圧は上昇しなかった。
では降圧薬を中止できるまで、どれほどの期間、服薬を続けていたのだろうか? この研究によると、短い人は1.3年だったが、長い人になると17.1年。平均は7.9年だった。長い間、降圧薬を飲んでいた人でも、中止が可能であることが分かる。
しかし残念ながら、永久に降圧薬をやめられる人は少ない。90%の患者さんでは、休薬から1年以上経過すると血圧が上がり始め、降圧薬を再開しなくてはならなかったのだ。その意味では降圧薬の「中止」ではなく「休薬」と呼ぶ方が正確かもしれない。しかし長い人では21.7年も休薬が可能だった。一方、最も短い人は1.6年である。個人差が大きい。
「降圧薬は1種類だけ」なら、休薬の可能性大
こういう事実を知ると当然、「自分も降圧薬をやめられるだろうか?」との期待が高まってくる。
上記の研究では、降圧薬をやめても血圧が正常に維持された人に、2つの特徴が認められた。「飲んでいる降圧薬の数」と「身体が高血圧から受けたダメージの程度」である。