ある日突然に「介護」。異文化のぶつかり合いが、なぜか心を打つ映画『つむぐもの』
病に倒れた和紙職人と韓国から来たヘルパー女子が心を通わせ、そして…
内山郁子=日経Gooday
「なごみ」の介護福祉士の涼香(吉岡里帆)から、福祉とは「ふだんの、くらしの、しあわせ」の頭文字だと教わるヨナ。ですが、彼女の目には、介護されている「利用者」が幸せそうには映りません。自己流の、型破りな接し方で、ヨナは利用者の心をつかみます。しかしその姿は、「なごみ」のスタッフの間に複雑な思いを広げます。
また、紙すき一筋だった剛生の「ふだんの、くらしの、しあわせ」のために、ヨナは観光客向けのイベントを企画。新米和紙職人の宇野(森永悠希)のサポートを受けながら紙すきの実演をやりとげた剛生は、和紙職人としての誇りを取り戻します。その晩、二人は初めて日本酒とマッコリ(韓国の伝統酒)で乾杯します。

「おい、韓国人!」「タケオ!」と呼び合う中で、いつしかお互いがかけがえのない存在となっていた剛生とヨナ。小旅行に出かけ、美しい福井の海と空を背景に晴れ晴れと笑うヨナには、ふてくされて悪態をついていたかつての姿の片鱗もありません。
しかし、再び剛生が病に倒れたことで、心を通わせた二人は過酷な運命をたどることとなるのです。
ある日突然の「介護」。しかし考えてみれば、多くの人にとって、介護をする、あるいは介護を受ける状況は突然にやって来ます。この映画は、介護という状況、役割の中でどう新しい関係性を築いていけるかを考える、またとない機会になるかもしれません。
2016年3月19日(土)より、
有楽町スバル座ほか全国順次ロードショー